普段の透視検査を思い浮かべてみてください。絞りの活用による線量低減、積極的に行なっているでしょうか?最近は検出器や画像処理の性能が向上しているおかげで、「絞る量が少なくても、よく見える」という感覚を持っている方もいらっしゃるかもしれません。ただ、いくら“画質が良い”とはいえ、絞りを適切に使用して直接X線を物理的に制限する方が「画質がよりよくなる」のは間違いありません。なぜなら適切な絞り操作は、「適切なX線条件」につながり、「散乱線の除去」に貢献するからです。そしてなにより、被ばく低減の観点からも、絞りの適切な活用は非常に重要なことだと思います。
冒頭で絞りによる被ばく低減の重要性を再確認しましたね。これを受けて、検査に適した画像をしっかり描出しようとすると、検査中に絞り操作を頻繁に繰り返す必要が出てきてしまうでしょう。
当然、多くの場合は透視を出しながら、絞り操作をリアルタイムで行なっている方が多いと思います。一方で、検査中にずっと透視を出しっぱなしということは少なく、透視が出ていない時間の方が長い検査もきっと多いのではないでしょうか。
ではもし透視が出ていない時に、絞り操作や視野サイズの切り替えを行なったとしたらどうなるでしょう?1回1回は微々たるものかもしれませんが、きっと検査全体の被ばく低減に大きく寄与してくると考えられます。
透視が出ていないときの絞り操作や視野サイズの切り替え。これらで危惧されるのは、その操作が操作者の「経験」と「勘」に依存してしまうことです。というのも、絞り操作を行い、いざ次の透視を出そうという時に、「思っていたサイズではなかった」とか、「見たいところが隠れてしまっていた」という事象が起きないと言い切れないからです。
最近の透視システムでは、透視をOFFにしても最後のフレームを表示する「ラストイメージホールド(LIH)」を目にするケースも多いと思います。絞り操作や視野サイズの切り替えを行なったときに、このLIH画像上に目安となる枠のようなものが出てくれば、透視を新たに出さずに、かつ経験や勘に頼ることもなく、絞りを操作できるようになるといえます。これが「バーチャルコリメーション」と呼ばれる機能です。
LIH画像上での絞り操作といえば、よくアンギオシステムで活用されている印象がありますね。でも実は透視システムでもこれが可能な場合があるんです。普段の業務の中で「バーチャルコリメーションがあれば、わざわざ透視出さずに済むのにな・・・」とか、「位置決めのための透視が不要になるのに」、または「普段あまり意識していなかったけど、そういう場面に遭遇してこれって意外と便利だな」と感じたことがある人も多いのではないでしょうか。
ドラスティックに被ばくを低減しようとすると、多くの場合に「画質を犠牲」にせざるを得なくなると思います。LIH画像上での絞り操作による被ばく低減は、微々たる効果かもしれませんが、画質に与える悪影響は「ゼロ」です。
検査をスムーズに行うための便利機能という印象が強いですが、バーチャルコリメーションで小さな被ばく低減を積み重ねることが出来るという意識をもって、有効活用してみる価値はあるのではないでしょうか。
こまめな積み重ねが差をつける被ばく低減!