帯電ロール表層設計技術
高速デジタル印刷機で求められる高画質を実現
高速デジタル印刷機(プロダクションプリンター)では、印刷機同等の高画質が求められます。そのため、高速デジタル印刷機の帯電装置注1には、中・低速デジタル複合機やプリンターで一般的に使われている帯電ロール(BCR:Bias Charge Roll以下BCR注2)ではなく、高画質を実現するスコロトロン注3が使われていました。しかし、スコロトロン方式は、高画質を実現する一方で、非接触帯電方式のために装置が大きく、BCRに比べてコストや消費電力、部品の設置スペースに課題がありました。富士フイルムビジネスイノベーションでは、BCRの表面層を独自に設計することで、高速デジタル印刷機で求められる高画質を達成しつつ、低消費電力、省スペースの課題を解決するBCRを開発しました。
従来のBCR方式では、出力画像に50~100μm程度の明度バラツキが発生し、画質特性のひとつである粒状性(画像のざらつき感)が悪いことが課題でした。そこで、画像解析により抵抗ムラを可視化したところ、明度のバラツキがBCR表面の抵抗ムラと同サイズであること、BCR表面の抵抗ムラと粒状性に相関があることが判明しました(図1)。
BCR表面の抵抗ムラは、多孔質樹脂粒子の凝集とBCR表面の塗膜乾燥時に発生する対流により生じる亀甲模様(べナードセル現象)に起因しており、この抵抗ムラによって、BCRの表面に強放電と弱放電が混在し、感光体表面の帯電電位が偏ることで、粒状性が悪化することを突き止めました。
そこで、多孔質樹脂粒子量を最適化することで多孔質樹脂粒子の凝集を抑制し、さらにBCR表面層にシリコーンオイルを添加して、表面の樹脂材料の偏りを抑制することで、BCR表面の電気抵抗の均一化を達成しました(図2)。これにより、高速デジタル印刷機で求められる高画質の実現と共に、スコロトロンをBCRに置き換えることでドラムカートリッジの「低コスト化(70%減注4)」、「低消費電力化(60%減注5)」、「省スペース(50%減注6)」を達成しました。
- 注1 感光体を帯電させるための装置
- 注2 感光体を接触帯電させるための部材
- 注3 金属ワイヤーに電圧を印加してコロナ放電を発生させ、感光体を非接触帯電させるための部材
- 注4 スコロトロンを採用した場合のコストを100%として
- 注5 スコロトロンを採用した場合の消費電力を100%として
- 注6 スコロトロンを採用した場合のスペースを100%として