3Dキャリブレーション技術

プリンターで出力される印刷物は、設置環境の変化や部材の経時劣化により、色再現が変動することがあります。富士フイルムビジネスイノベーションでは、このような課題に対して従来から色変動を補正する単色キャリブレーション機能を提供していますが、より高精度なキャリブレーションを可能にする、独自の3Dキャリブレーション技術を開発しました。この技術は、単色(1次色)から多次色(2、3色を重ねた時の色)までのトナー量をそれぞれ独立で補正でき、色再現可能なほぼ全域の色を補正できるため、単色キャリブレーションでは補正が難しかった、グレーバランスや肌色などの多次色補正を可能にします。

プリンターでは、CMYKそれぞれの色のトナーを重ねることで表現したい色を再現し、また重ねるトナーの量によって再現される色が変化します。しかし図1に示すように、転写前のトナー量と転写後のトナー量が変わってしまうことで、色再現が正しく行われない場合があります。これは、トナーを用紙に転写する時の特性などが変化し、転写されるトナー量が変動することで発生します。

図1:トナー量の変化による再現色の変動

従来の単色キャリブレーションでは、単色(1次色)のターゲット(目標となる色)となる色の濃度(濃さ)に対して、現状の色の再現状態をモニターし、ターゲット色に合わせるためにトナーの量を調整して合わせます。例えば、ターゲットと同じトナー量をのせても、用紙に転写した際、転写されるトナー量が変動し、ターゲットと濃度が異なることがあります。その場合は、トナー量を調整しターゲットの濃度と一致させます。
しかし、2次色は補正する必要がない場合も、構成要素の単色のトナー量を調節するため、結果的に2次色が変動してしまうことになります(図2の単色キャリブレーション)。新たに開発した3Dキャリブレーションでは、現状の多次色の再現状態とターゲットの色の違いを3次元テーブル上で対応づけ、多次色に対してターゲットの色に合わせた補正パラメーターを生成します。多次色をそれぞれ単独で補正できるため、1次色、2次色においてもターゲットの色に合わせることができます(図2の3Dキャリブレーション)。

図2:キャリブレーション方法によるトナー補正対象の違い

3Dキャリブレーションでは、少ないデータでも高精度な色補正を実現するため、品質工学をベースにパッチチャートと補正精度との関係を解析し、パッチチャートの最適化を図りました。これにより、補正精度を担保しつつパッチ数を大幅に削減することができ、パッチチャートでの測色作業の軽減につながりました。
さらに、補正処理を繰り返しおこなうフィードバック機能により、色予測モデルの精度を向上させながら、補正精度をあげていくことで、安定した色再現性の実現を可能にしました(図3)。

図3:キャリブレーションのフィードバック機能