「プロダクトアウトは大好きですね」と笑う設計技師。“モノ”づくりのプロが、このプロジェクトでは
“コト”を考えながら開発に立ち向かった。基盤技術担当の坂井友治が「感じて、動いたこと」。
私の担当は主にシステムを制御するファームウェアです。検出器・センサーの制御によるX線照射のタイミングや強度など、システムの基本機能の開発に携わっております。
多くの仲間とともにCUREVISTA Openの開発を始めるにあたり私が意識したのは、経営者の方々にどれだけ寄り添えるかという点です。
具体的には、使われている頻度、検査時間の長さ、治療チームの手技達成の所要時間など、情報を集約できるファームウェアの視点から経営者のためになる設計を進めていきました。
きっかけは、さまざまな病院との共同研究や立ち会いのなかで目の当たりにした、医療従事者の方々の量的負担が尋常ではないという事実です。システムのログ情報を拝見しただけで、「トイレに行く時間もない」と想像できる凄まじい現場もありました。これでは、ドクターや放射線技師の方がいくらがんばっても、最高のパフォーマンスで患者さんと常に向き合うのは困難です。それを私は「もったいない」「何とかしなきゃいけない」と感じ、ドクターや放射線技師の方が、病院の経営者、財務、経理の方々に提案される際に示せる定量的なデータを提供したいと考えたのです。なぜならそれは患者さんにとっても有益になるはずだからです。
システムの使われ方を情報として集め、大学病院や近隣病院の使われ方とご自身の病院のそれにどういう違いがあるかを経営に携わる方々に把握していただき、病院の強みや弱み、さらにはスタッフの人数や配置なども見極めていただけるようなこともめざしました。人材や診療時間も含め、働き方が多様化していくなかで、スタッフの方々の働き方も守る経営者の立場も考えると、このような情報も武器のひとつになると考えて、次なる開発も進めています。
現状、システムはより過酷に、より長く使われています。使用頻度に応じて保守をしていきますが、必要以上の経費がかからないように、稼働状況に応じてシステム情報を収集しています。大量にデータを収集して解析する形です。
CUREVISTA Openでは、そうしたデータがつねにフィードバックされ、月次レポートのような形で出せる仕組みを開発しています。検査頻度のレポート化、使用状況に応じてオプション品などをご提案できる仕組みなどが性能に盛り込まれているのです。病院のコンサルタントのような存在になることをめざしています。
ただ、ドクターや放射線技師の方が使いやすいだけで、患者さんの苦痛が増えてしまっては本末転倒です。そのバランスをうまくとり、満足していただくことに、私はやりがいを感じます。「誰かがこのシステムで救われるかもしれない」と思えるだけで、ものすごく幸せなことだなと思っています。