新興国での健診センター拡充

「NURA」新拠点のCT
WHOが発表した「World health statistics 2023」によると、日本人の平均寿命は84.3歳で世界第一位です。日本人の平均寿命が長い要因は、健康的な食文化や充実した医療制度に加え、定期的に健康診断(健診)を受ける文化にあると考えられています。健診は、がんなどの病気の早期発見が期待できるだけでなく、身体の状態を把握することで病気の予防にもつながります。しかし、新興国では健診サービス施設が少ないこともあり、健診を受ける文化が定着していないという課題があります。
当社は2021年にインドのベンガルールに「NURA」を開設し、新興国での健診サービス事業を開始しました。以降拠点拡充を進め、2024年末時点でインド、モンゴル国、ベトナムにおいて8拠点を展開しています。「NURA」では、当社が持つCT・マンモグラフィなどの医療機器や、医師の診断を支援するAI技術を活用して、がん検診をはじめ生活習慣病検査サービスを提供。約120分という短時間ですべての検査が完了し、かつ終了後にその場で診断画像を見ながら、医師から分かりやすく健診結果に関する説明を受けられるという利便性から、「NURA」の利用者は2024年末で累計80,000人にのぼります。
今後は当社の医療機器やAI技術・ノウハウを活用した健診センターを、新興国を中心に2026年度までに30拠点、2030年度までに100拠点の開設を目指し、各国での疾病早期発見に貢献していきます。
検査効率化への貢献
医療機関の放射線科は、静止画を撮影する一般X線撮影装置、断層画像を撮影するCT・MRI、動画での透視撮影ができるX線透視撮影装置などさまざまな医療機器を用いて検査を行っています。なかでも一般X線撮影は、胸部・腹部をはじめ膝や股関節などさまざまな部位の検査に用いられていることから、検査数が多く、受検者の待ち時間も長時間におよぶケースも少なくありません。一方、X線透視撮影は、胃バリウム検査などに利用されますが、同撮影での検査数は、一般X線撮影ほど多くなく、むしろ2016年に胃がんの対策型検診の方法として内視鏡検査が追加されたことなどを受けて、減少傾向にあります。そのため、検査室数が限られる中小病院やクリニックでは、検査数の少ない透視室を検査数の多い一般X線撮影室に置き換えたいというニーズがあります。しかし、高齢化などにより食べ物を上手く飲み込めなくなる嚥下障害の状態を確認する嚥下造影検査など、X線透視撮影での検査が必要になるため、稼働率が低くても透視室を一般X線撮影室に置き換えるのは難しいという課題がありました。
当社は1台で動画と静止画の撮影が可能な透視機能付きX線画像診断システムを開発。ひとつの装置で行える検査の幅が広がるため、従来、「透視室」で実施してきた検査を「一般X線撮影室」でも実施できるようになります。
当社は医療現場のさまざまなニーズにこたえる幅広い製品・サービスの提供を通じて、検査の効率化と、それによる医療の質の向上に貢献します。

富士フイルムは、国際対がん連合(UICC)が主導するWorld Cancer Day(世界対がんデー)2025-2027に、Visionary Partner(ビジョナリーパートナー)*1として協賛しています。
World Cancer Dayへの協賛を通じて、富士フイルムはUICCと協働して、がんの予防・診断・治療に対する意識向上に寄与し、誰もが平等に医療サービスにアクセスできる社会づくりに貢献していきます。
- *1 UICCが掲げるWorld Cancer Dayのビジョンに賛同する長期的なパートナー。