医療は日々進歩を続けていますが、そうした中でもがんや希少疾患に加え、新たな感染症など、いまだに有効な治療法が確立されていない疾病も数多く存在しています。富士フイルムは、そのようなアンメットメディカルニーズに対して、写真フィルムなど、さまざまな製品の開発・製造で培った高度な生産技術、解析技術、エンジニアリング技術などの強みを生かして、バイオ医薬品の生産プロセス開発および製造を受託するバイオCDMO事業や、iPS細胞や培地といった創薬支援材料などを提供するライフサイエンス事業などを展開しています。
有効な治療薬として期待されるバイオ医薬品の普及に貢献

バイオ医薬品の開発・製造受託会社FUJIFILM Diosynth Biotechnologiesのデンマーク拠点の様子
バイオ医薬品は、難病・希少疾患をはじめとするアンメットメディカルニーズへの高い治療効果が期待されており、2023年から2030年にかけて年平均9%の市場成長*1が予想されています。一方、その製造には高度な生産技術と設備が必要とされ、製薬企業がCDMO*2にプロセス開発や製造を委託するケースが増えています。
当社グループは業界トップレベルの培養・生産技術を有しており、生産プロセス開発や、原薬から製剤・包装までをワンストップで行うバイオ医薬品の製造受託を行っています。
2011年に市場に本格参入して以来、抗体医薬品のみならず遺伝子治療薬や細胞治療薬など医療分野の最先端とされる領域におけるプロセス開発受託・製造受託用の設備増強に向けて積極的に投資を行い、バイオ医薬品の需要拡大にこたえてきました。近年では、欧米や日本において工場の能力増強や新設を進めているほか、2022年度、2024年度には持ち株会社である富士フイルムホールディングスがバイオCDMO事業の成長に向けた投資に充当する資金調達手段として、ソーシャルボンド(社会貢献債)の発行を行いました。
当社は、顧客から信頼される真のパートナーとなり、最先端の医薬品を、安心できる品質で、より早く、より多くの患者に届けられるように顧客をサポートし、アンメットメディカルニーズへの対応などの社会課題の解決、さらにはヘルスケア産業のさらなる発展に貢献していきます。
- *1 ワクチンなどを除く当社注力市場。EvaluatePharma(2025/1/9ダウンロード)を参考に当社推定。
- *2 Contract Development & Manufacturing Organizationの略。薬剤開発初期の細胞株開発から生産プロセス開発、安定性試験、治験薬の開発・製造、市販薬の製造までの幅広いサービスを製薬企業などに提供する。
細胞培養に必要な培地事業の拡大

細胞培養に必要不可欠な培地
当社のライフサイエンス事業においては、バイオ医薬品の研究開発や製造に取り組む製薬企業などを支援すべく、iPS細胞を中心とした「細胞」、細胞の生育・増殖のための栄養分を含んだ「培地」、性能や品質を検証する「試薬」などを提供しています。また、グループ会社であるFUJIFILM Cellular Dynamics, Inc.ではiPS細胞を活用した細胞治療薬の開発・製造受託も展開しています。
中でも、バイオ医薬品などの研究開発・製造における細胞培養に必要不可欠な「培地」は、抗体医薬品やワクチンなどのバイオ医薬品の需要増や、細胞治療・遺伝子治療といった先端医療の発展にともないグローバル市場が年率8%以上*3で伸長しています。当社はグループ会社のFUJIFILM Irvine Scientific, Inc.や富士フイルム和光純薬を通じて、培地事業をグローバルに展開しており、高い研究開発力や優れた品質管理力、cGMP*4準拠生産拠点を基盤に、高品質・高機能な培地を開発し、グローバルに提供を行っています。
2021年には欧州拠点FUJIFILM Manufacturing Europe B.V.(オランダ)内に培地の新工場を設立し、日・米・欧3拠点のグローバル生産体制を確立しており、高まる培地の需要に対応するための生産能力増強を積極的に進めています。また日・米・中においては、顧客ニーズに応じて培地をカスタマイズするサービスも実施しています。
当社は今後も、医薬品の研究開発・製造支援ビジネスなどを通じてライフサイエンス事業の拡大を図るとともに、医薬品産業のさらなる発展に貢献していきます。
- *3 当社が注力する医薬品製造用培地において。当社調べ。
- *4 current Good Manufacturing Practiceの略。米国FDA(食品医薬品局)が定めた医薬品および医薬部外品の最新の製造管理および品質管理規則のこと。