このコンテンツは獣医療従事者向けの内容です。
ご存じの通り、2022年に愛玩動物看護師法が施行され、日本で初めての動物看護師の国家資格である「愛玩動物看護師」が誕生しました。国家資格化に合わせて全国の動物看護師の養成を行う大学や専門学校では、定められた3年間以上のカリキュラムの整備が行われ、それが難しい学校は閉校や学科の閉鎖をするなど、教育機関の淘汰・整理も進みました。これまでに2回の愛玩動物看護師の国家試験が実施され、合格者数は延べ20,845名となっており、今後も資格保有者は年々増えていくことになります。
動物病院としては、動物看護師の国家資格化をどのように受け止め、愛玩動物看護師をどのように活用していくべきでしょうか。今回はそのポイントについてご紹介します。
愛玩動物看護師の業務は。「診療の補助、愛玩動物の世話その他の愛玩動物の看護、愛玩動物を飼養する者その他の者に対する愛護及び適正な飼養に係る助言等」と定められており、このうち「診療の補助」は愛玩動物看護師の資格を有する者のみ(獣医師を除く。)が行うことができる独占業務となっています。
「診療の補助」とは、「診療の一環として行われる衛生上の危害を生じるおそれが少ないと認められる行為であって、獣医師の指示の下に行われるもの」と規定されており、例えば輸液剤の注射、採血、マイクロチップの装着、カテーテル留置、投薬等が含まれます。一方で、診断、X線撮影等における放射線の照射、ワクチン等、愛玩動物の身体への影響が大きい医薬品の投与等については、これを誤ると衛生上の危害が生じるおそれが少ないと認められる行為ではないことから、引き続き獣医師が実施する必要があります。
まずは、上記の愛玩動物看護師の業務範囲をよく把握しておきましょう。愛玩動物看護師でないとできない業務、愛玩動物看護師でなくてもできる業務、愛玩動物看護師であってもできない業務を、それぞれ理解しておく必要があります。
なお愛玩動物看護師の国家資格を保有していないスタッフの呼称は、愛玩動物看護師と混同しない呼称としなければならない点にも注意しましょう。
愛玩動物看護師という資格の最大の強みは、上記「1」の通り、獣医師の指示のもとで「輸液剤の注射、採血、マイクロチップの装着、カテーテル留置、投薬等」といった「診療の補助」ができるようになったことでしょう。これをどのように活用していくか、ということに対するスタンスは現在のところ動物病院によって様々であり、何が正解だと一概に言うことはできません。愛玩動物看護師が所属している動物病院でも、例えば獣医師の教育機会の確保のために愛玩動物看護師には従来と全く変わらない業務(保定など)のみとしているといったケースも少なくありません。
一方で、広がった愛玩動物看護師の業務範囲をうまく活用する動物病院も増えてきています。
よく見かけるケースとしては、採血や留置などの業務を愛玩動物看護師でもできるように教育し、それらの業務を担当してもらうというケースです。特に春の繁忙期など病院が混みあう時期において、愛玩動物看護師が採血等を実施できるということは病院にとって非常に大きな戦力になっています。
昨今は勤務獣医師の確保が容易ではない状況が続いており、愛玩動物看護師の有効活用を検討していくことの重要性はますます高まっていくと考えられます。一般的にはまだまだ愛玩動物看護師はメジャーな資格とは言い難いため、愛玩動物看護師が採血等を担当することに対して飼主様が不安を感じないように、愛玩動物看護師という資格について院内掲示等で紹介、啓蒙している動物病院も増えています。
【2024年9月/文責:動物病院経営パートナーEn-Jin 代表取締役 古屋敷 純】