このコンテンツは獣医療従事者向けの内容です。
前回のコラムでは「愛玩動物看護師の業務範囲と活用のポイント」についてご紹介しました。
今回は愛玩動物看護師の採用と待遇等のポイントについてご紹介します。
愛玩動物看護師も動物病院のスタッフの一員であることに変わりはなく、採用後に定着してもらうためのポイントは他の職種と大きく異なるわけではありません(「スタッフの定着率を向上するためのポイント」のコラムもご参照ください。)。
しかしながら、愛玩動物看護師という新しい資格はスタッフ側(求職者側)にとっても注目のトピックであるため、動物病院側としても採用方針や待遇等についてしっかりと検討、整備しておくことが大切です。主なポイントは以下の通りです。
1.愛玩動物看護師資格を必須とするか否か
そもそも採用の方針として、愛玩動物看護師資格保有者のみを採用するのか、資格を持っていない看護スタッフ(保定など愛玩動物看護師資格がなくてもできる業務をする人)も採用するのか、ということは病院として明確に決めておいた方がよいでしょう。
資格を必須とするなら求人票などにもその旨を記載する必要がありますし、逆に資格が必須でない場合はその旨を明記した方が、無資格の求職者は応募しやすくなります。少なくとも求職者に「愛玩動物看護師の資格は必須ですか」と聞かれた際に答えに詰まることのないよう、病院としての採用方針を整理しておきましょう。
2.愛玩動物看護師に「診療の補助」にあたる業務をさせるか否か
愛玩動物看護師にどこまでの業務をさせるか、という方針は、それぞれの病院の事情等によって様々かと思います。大切なのはその方針を整理し、現スタッフやこれから雇う求職者等に明確に伝えることです。
例えば「愛玩動物看護師の資格を活かして採血などにもチャレンジしたい」という方が、そういったことは愛玩動物看護師には一切させないという方針の動物病院に就職した場合、モチベーションが低下し早期に退職してしまう可能性が高いでしょう。そのようなミスマッチを防ぐためにも、愛玩動物看護師にどこまでの業務を任せるか、ということについて自院の方針をしっかりと整理し明示することが大切です。
3.愛玩動物看護師資格に対して手当等を支給するか否か
愛玩動物看護師に対して何らかの手当等を支給すべきでしょうか、という質問は法施行前の数年前から非常によくいただくようになりました。これについて法律等で明確なルールがあるわけではありませんが、従来の看護スタッフ等よりも任せている業務の範囲が明確に広い(採血、留置など、愛玩動物看護師でないとできない業務をさせている)のであれば、公平性を保つためにも業務に見合った報酬を与えるべき、というのが一般的な見解かと思います。当然ながら、当事者である愛玩動物看護師はその資格に対する報酬がある方がモチベーションは上がりますし、求人に対する反応にも影響します。
一方で愛玩動物看護師と他の看護スタッフの業務内容に全く差が無い場合は、「同一労働・同一賃金」の観点から、待遇にも差をつけないという選択肢もありえます。もちろん資格を持っていること自体に対して手当を支給することもおかしなことではありませんし、一時金や資格取得費用の補助等、毎月の給与・手当以外の形で報いることも可能です。待遇に関する考え方は職場の数だけありますが、大切なのはその考え方やスタンスをスタッフや求職者に明確に示すことです。
【2024年10月/文責:動物病院経営パートナーEn-Jin 代表取締役 古屋敷 純】