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動物医療コラム

【基準範囲と臨床判断値】
基準値を超えていますが うちの子病気なんですか?

このコンテンツは獣医療従事者向けの内容です。

掲載記事は掲載日時点の情報であり、記事の内容などは最新の情報とは異なる場合があります。

健康診断などで症状のない動物の検査を行った時、ご家族さまからこういった質問を受けることはありませんか。
今回は改めて基準範囲とは何か、ヒト医療で用いられている臨床判断値という考え方と合わせてご紹介いたします。

【記事執筆:富士フイルムVETシステムズ 獣医師、獣医学博士 玉本隆司】

そもそも基準範囲ってなに?

基準範囲はランダムに抽出した臨床的に健康な個体から検体を採取し、測定した結果から算出されます。一般的には、測定結果のおよそ95%が当てはまる範囲を基準範囲として設定します。しかし、逆を言えば、5%はそもそもの定義からして基準範囲から外れた結果となります。5%を大きいと思うか小さいと思うかは人それぞれだと思いますが、20頭に1頭は外れると思うと、そこそこよくある現象のように思えるのではないでしょうか?これを正常範囲と呼んでいた時代もありますが、定義上外れてしまう5%も異常なわけではありません。そのため、正常値・正常範囲という単語は使用されなくなりました。

基準範囲の算出方法
基準範囲解説グラフ

基準範囲 ≠ 正常範囲

基準範囲と個体の正常・異常について、具体的な例を挙げるとこのようなケースがあります。

1. 基準範囲外でも正常な場合

富士フイルムVETシステムズでは犬のヘマトクリット値の基準範囲は、37~55%です。しかし、人気犬種の1つであるミニチュア・ダックスフンドは健康でもヘマトクリット値が高いことが知られています。時に60%近くの値を示すことがありますが、多くの場合は赤血球増加症ではありません。

2. 基準範囲内でも異常を疑う場合

健診ではヘマトクリット値が58%だった症例が、ある時調子を崩して来院し、ヘマトクリットが39%だったとします。39%は基準範囲内ですが、その症例に関しては健常時の2/3程度まで減少しているため、貧血の可能性を考える必要があります。

ここまで見てきたように基準範囲は大まかな基準を示すもので、個体にとってその値が異常かどうかは品種差や個体差を加味して考える必要があります。健診の目的は隠れた病気を見つけるためと考えられがちですが、もう一つそれぞれの個体の健常時の値を把握するというメリットが存在します。

日々の診療の指標となる「臨床判断値」という考え方

比較的最近使われるようになった単語に、「臨床判断値」があります。これは基準範囲とは全く別の概念で、ある特定の疾患を予測あるいは診断したり、治療介入のタイミングの指標となる検査値を指しています。
日常的に使われるものの中で、そのもっともわかりやすい例が、IRISの慢性腎臓病ステージです。猫では血清クレアチニン濃度が1.6mg/dL以上の場合に、Stage 2の慢性腎臓病と判断します。一方で猫血清クレアチニンの基準範囲は0.9~2.1mg/dLとなっています(富士フイルムVETシステムズの参考基準範囲)。
この数値の差から混乱している先生方も多いのですが、IRISの基準がまさに臨床判断値に相当します。実際にIRISの分類表の注釈を見ると、「1.6mg/dLという値は多くの検査センターで基準範囲内である。ただし、スクリーニング検査としてのクレアチニンは感度が低く、基準範囲の上限付近では腎排泄量がしばしば低下している」と記載されています。慢性腎臓病という特定の疾患については、基準範囲よりも厳しい基準で評価した方が臨床的に有用であると解釈していただければと思います。

●クレアチニンは正常〜軽度上昇 ●軽度の高窒素血症 ●範囲の低値側(1.6mg/dL〜)は多くの検査ラボで基準範囲内 ●スクリーニング検査としてのクレアチニンの感度は低く、上限付近の値を示す症例ではしばしば腎排泄能が低下している

基準範囲とIRIS Stage2のヒストグラムを表したイメージ図

IRIS Staging of CKD (modified 2019) より 出典元URL:http://www.iris-kidney.com/pdf/IRIS_Staging_of_CKD_modified_2019.pdf

特定の疾患であるかを切り分ける「カットオフ値」

同様に混同・誤解されやすいものとしてカットオフ値があります。これは、前述した臨床判断値の1種であり、特定の疾患を診断する指標となる数値を指します。このカットオフ値で症例を2群に「切り分けた」場合、「ある疾患である」群と「ある疾患でない」群に分けられます。ここで注意が必要なのは「ある疾患でない」と「異常がない・健康である」はイコールではないという点です。また、疾患ごとにカットオフ値は変わり得る点にも注意が必要です。

 

【富士フイルムVETシステムズ広報誌2022年春号掲載記事より】