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日本
動物医療コラム

【診断推論について②】
診断推論をマスターする~分析型診断の基本~

このコンテンツは獣医療従事者向けの内容です。

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診断推論について①~③をまとめて、印刷してお手元資料として読みやすくレイアウト整理したPDFファイルをご提供しています。

前回では、診断推論の概論として「直観型」と「分析型」の2つのアプローチ方法を紹介し、両者のハイブリッドが理想的であることを解説しました。今回は、分析に基づく診断として『プロブレムリストから鑑別診断リストの作成』について解説します。見落としのない診療を行うためにも大切なプロセスなので、この考え方をしっかり身につけましょう。

分析型の診断とは?

分析型の診断は、詰将棋のように理詰めで診断名にたどり着く方法です。症状や稟告から問題点を整理し、そこから鑑別診断リストを作成、鑑別診断を進めるために必要な検査を選び、その結果に基づいて診断名を絞り込んでいきます。自分の思考回路がバチっとはまると、直観型とはまた違う快感があります。

ストーリーに矛盾はないか?

疾患をいくつか絞り込んで検査を進める場合には、ある程度思い込みや先入観が入ってくるのはやむを得ないと思います。大事なことは、検査結果が出た時点でそれを捨てる(除外する)ことです。検査結果は客観的な事実ですので、測定エラーなどがない限り、予想と異なる検査結果が得られた場合に最もシンプルな原因は「予想が間違っていた」です。ここで最初に想定した疾患に固執すると、それはバイアスとなってのしかかってきます。

余裕があれば空き時間や診察終了後に鑑別診断リストと検査結果を見直し、自身の診断に矛盾や誤りはないか、他の可能性は考えられないかを何度も自問自答してみてください。診察中は絶対に間違いないと思っても、後から見直すと見落としがあったり、何かおかしい点があったりすることはよくあります。何度も考えることを繰り返していくと精度は上がっていき、スピードもアップします。論理的思考は診断学の真髄です。特に経験の浅いうちは、頭がオーバーヒートするまでどんどん考えましょう!

分析に基づく診断のポイント

●主だった症状について鑑別診断リストを作る!
●どの検査で疾患を肯定あるいは除外できるのか
・特に「除外する」意識が重要
・一つ肯定できても立ち止まらない
●仮診断から必ず振り返り
・矛盾なく説明できるストーリーを組み立てる

【富士フイルムVETシステムズ広報誌2023年春号掲載記事より】