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動物医療コラム

【診断推論について③】
診断推論をマスターする~必要な検査、どう選ぶ?~

このコンテンツは獣医療従事者向けの内容です。

掲載記事は掲載日時点の情報であり、記事の内容などは最新の情報とは異なる場合があります。

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診断推論について①~③をまとめて、印刷してお手元資料として読みやすくレイアウト整理したPDFファイルをご提供しています。

病気を診断するための検査は、なるべく効率的に行いたいものです。過不足ない検査でバシッと診断できると気持ちがいいですし、飼い主や動物の負担も少なく、病院の評判も上がります。とはいえ、なかなかに奥が深いのが検査選び。どう選んでいくのが正解でしょうか?

例えば

例えば、子犬が下痢を主訴に来院したとして、糞便検査で寄生虫が見つかれば検査費用は数百円で済みます。下痢の鑑別に必要な検査をすべて詰め込むと身体に負担がかかるうえ、費用は数千円~数万円になるでしょう。もちろん、状況に応じて必要なら追加検査を実施しますが、どちらが良いかは言うまでもないですね。ただし、これは「子犬の下痢=寄生虫感染が多い」という直観型診断が働いていればこそです。

検査は疑わしい疾患を想起したうえで選ぶべし

「検査は疑わしい疾患を想起したうえで選ぶべし」、今回お伝えしたいことはこれに尽きます。実際の診療においては、動物の状態や飼い主の金銭的・時間的都合などさまざまな要因が関連してくるため、なかなか理想通りにはいきません。それでも、この基本だけは外さないように考えてほしいと思っています。疾患の想起は直観的に一つの疾患を思い浮かべても、分析的に複数の鑑別診断をリストアップしても、どちらでも構いません。重要なことは、具体的な疾患名が1つ以上頭に浮かんでいるということです。そして、その診断の確率を上げる、あるいは下げるためには何を検査すればよいかという観点で検査を選んでください。さらに理想を言えば、疾患を想起したうえで、検査結果を予想して検査に臨んでください。これによって、検査結果をより主体的に見ることができるようになります。

必要な検査の選択イメージ

具体的な疾患を想起することは

具体的な疾患を想起することは、飼い主を説得する上でも役立ちます。根拠もなく「とりあえず検査します?」と聞かれるのと、「〇〇が疑われるので△△の検査が必要です」と言われるのでは、納得感が違いますよね。最終的に決断してお金を払うのは飼い主ですので、気持ちよくお金を払ってもらうために飼い主を納得させるのは、我々獣医師にとって必須の技能と言えるでしょう。

NG例:とりあえず血液検査します?
Good例:異物摂取が疑われるのでレントゲンの検査が必要です!

症状が曖昧な場合など

症状が曖昧な場合など、具体的な疾患を想起することが難しいケースは存在します。そういう場合にスクリーニング検査を行うことは一般的です。ただし、その場合でも「よくわからないからとりあえず検査」という意識では、ミスや見逃しにつながります。重要なことはスクリーニング検査に含まれる項目の意味を理解していることです(表1)。これを踏まえて、「炎症」とか「肝疾患」とか大きなくくりで構わないので、可能性のある病態を想起しましょう。そうして検査結果を見るのと、ただぼんやりと見るのとでは、得られる情報は全然違います。

TP, Alb栄養状態、脱水、炎症など
BUN, Cre, Na, K, Cl, Ca, P主に腎疾患
肝酵素, T-Bil, Alb, Glu, BUN, T-Cho主に肝・胆道系疾患
Lipa主に膵臓
T-Cho, TG内分泌疾患など

<表1>

では、健康診断はどう考えればいいでしょうか?

では、健康診断はどう考えればいいでしょうか? 健康診断は健康であることが前提ですので、疾患を想起することは困難です。この場合は、若齢~中齢くらいまでは「健康であることを確認するために」検査をすると考えてください。疾患の代わりに健康であることを想起するわけです。健康であることを想起するので、検査結果は概ね基準範囲内であることが予想されます。基準範囲から外れるものがあれば、それが病的かどうかを考えていきましょう。ただし、基準範囲内でも前回から大きく変化したものには注意が必要です。高齢の動物ではスクリーニング検査の時と同じように「肝疾患」とか「腎疾患」といった大きなくくりで病態を想起するのが良いと思います。

健康診断のススメ

飼い主のメリットと獣医師のメリット

検査結果に右往左往するのではなく、検査を巧みに使いこなしてこそ一流の獣医師です。検査は獣医師が診断を進めるために重要な道具ですが、道具は使うものであって、道具に使われてはいけません。そこの主従関係は、逆転させてはいけないのです。
 

記事の執筆担当

執筆者イメージ

玉本 隆司 獣医師、獣医学博士 

2002年 東京大学入学 
2005年より獣医内科学研究室に所属し、辻本先生、大野先生、松木先生らの薫陶を受ける。 
2008年に大学卒業後、埼玉の動物病院で2年間一次診療に従事。 
2010年に東京大学大学院農学生命科学研究科に進学。獣医内科学研究室で研究に励む傍ら、附属動物医療センターでの診療にも従事する。 
2014年に酪農学園大学伴侶動物内科学IIユニットに助教として赴任。附属動物医療センターでの内科診療を担う。2016年より同講師、2019年より同准教授。2017年より内科診療科長、2020年副センター長。 
2021年に大学を退職し、富士フイルムVETシステムズ株式会社に入社。 
2024年逝去。生前、多くの功績を残し、業界内外から高く評価される。

大学時代の主要な研究テーマは「炎症マーカーの臨床活用」で、特に猫の炎症マーカーであるSAAの臨床応用や基礎研究を精力的に行った。 
診療については「専門性がないのが専門」と言いながら、内科全般をオールラウンドにこなし、その中でも免疫介在性疾患や感染症に強い関心を持っていた。

【富士フイルムVETシステムズ広報誌2023年秋号掲載記事より】

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