このウェブサイトはクッキーを使用しています。このサイトを使用することにより、プライバシーポリシーに同意したことになります。

日本
動物医療コラム

【診断推論について①】
診断推論をマスターする~診断推論とは?~

このコンテンツは獣医療従事者向けの内容です。

印刷用ファイルのイメージ

< 本記事を印刷用に整理したPDFファイルをご提供 >

診断推論について①~③をまとめて、印刷してお手元資料として読みやすくレイアウト整理したPDFファイルをご提供しています。

ここ数年、「診断推論」という単語を耳にする機会が増えました。雑誌の原稿やセミナー等でもよく取り上げられているように思います。
では、そもそも診断推論とは何でしょうか?診断学をテーマに、「デキる」獣医師の診断の道筋について解説します

診断推論とは?

「症状から疾患を類推し、診断するまでの思考プロセス」、これを診断推論と呼んでいます。「診断学」と呼んでもいいかもしれません。何やらそれらしく書かれていますが、これって要は日常の診療行為そのものですよね。「何らかの症状を訴える患者さんが来院し、それに対して適切な検査を実施し、診断をつける」、これは獣医師であれば日頃当たり前に行っていることです。この当たり前を、現状の大学教育ではほとんど教えません。多くの獣医師は、卒業して右も左もわからない状態で就職し、先輩獣医師や院長に怒られながら少しずつ経験を積み、診断学を身に着けていったことでしょう。そうして身に着けた経験はかけがえのないものですが、いくつかの危険をはらんでいるのも事実です。だからこそ、系統立った診断推論を理解することが求められています。

生じやすいさまざななバイアス

最初に想起された疾患への固執
●根拠のない自信
●考えを否定されたくない
先輩獣医師への盲信
●先輩の言うことは絶対!
●言う通りにする方が楽…
自分に都合の良い解釈
●否定的な結果を軽視・無視
●「これは非典型的なタイプだ」
中途半端な経験
●最近勉強した疾患を優先
●インパクトの強い症例に引きずられる
楽な方向への逃げ
●もしこの病気なら手術…入院…
●面倒だから見なかったことにしよう

診断推論自体が定義されて日が浅く、明確な学問領域として定着していないために、王道に当たる教科書等が存在しません。コンセプトは概ね似通っているものの、著者ごとに単語や言い回しが異なります。
したがって、この原稿の内容も、「筆者が自身の診療および教育の経験を経て身に着けた診断推論」に過ぎないことをご承知おきください。

【富士フイルムVETシステムズ広報誌2022年秋号掲載記事より】