2022.02.17
電子帳簿保存法の改正内容
概要や対応方法をわかりやすく解説
2022年1月1日付で、改正電子帳簿保存法が施行されました。今回の法改正は帳簿の電子化を推進するような内容であり、本格的な電子運用を目指す内容に変わっています。
この記事では、改正電子帳簿保存法で何が変わるのか、法改正で注意すべきポイントや対応しなければならないことをわかりやすく解説します。法人・個人事業主にかかわらず要注意です。
電子帳簿保存法とは
電子帳簿保存法とは、帳簿や決算書などの国税関係帳簿書類を電子保存する際の要件を定めた法律のことです。1998年の施行以降、時代に合わせてより電子化しやすいよう何度か法改正が行われてきており、2022年1月の改正はより企業の電子化を後押しする内容となっています。一方、規制強化された側面もあり、対象となる企業は改正電帳法に対応する必要があります。
帳簿などの国税関係書類、およびそれに付随する取引記録には、決まった期間保管する義務があります。以前は紙保存が主流でしたが、コストの削減や管理の負担軽減を目的に、電子でも保管できるようにしたのが同法律です。なお、保管義務のある年数は紙保存のものと変更はありません。
2015年以降、電子帳簿のスキャナ保存における要件緩和がなされたことで、電子帳簿保存法に対応する企業が増加しました。国税庁が発表した『税務統計 電子帳簿保存法に基づく電磁的記録による保存等の承認状況』では、2020年のスキャナ保存の承認件数は、過去最多の6,514件に上ることが判明しています。同年に、電子取引に関する内容での改正が行われたこともあり、DXがさらに加速した形です。
2022年1月の改正ポイント
今回の改正では、帳簿保存とスキャナ保存に関しては緩和が進む一方、電子取引については厳格化、違反者に対する罰則が強化されたという特徴があります。どのように変更されたのか、以下の表を参考にしつつ整理していきましょう。
対象 | 該当する書類(例) | 主な変更点 | |
---|---|---|---|
帳簿保存 |
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規制緩和 |
スキャナ保存 |
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電子取引 |
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規制強化 |
承認制度の廃止
これまで、帳簿保存スキャナ保存時に求められていた税務署長などへの承認制度が廃止されます。現行法では、電子保存の運用開始3ヶ月前までに税務署へ申請するか、税務署長の承認を得なければなりませんでした。今回の改正でそれらが撤廃され、電子保存への対応を柔軟かつ迅速に進めることができます。
タイムスタンプ要件の緩和
一定の要件を満たすとタイムスタンプが不要になる緩和措置も、法改正で新たに実施されます。タイムスタンプ要件の改正前と改正後では、以下のように変更されました。
改正前 | 改正後 |
---|---|
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検索要件の緩和
これまで求められてきた検索要件から、「日付」「取引金額」「取引先」の3項目に限定されることも決まりました。現行法では、「取引年月日」のほかに、「勘定科目」「取引金額」、その他の国税関係帳簿の種類に応じた主要な記録項目を、検索条件として設定しなければなりませんでした。
今回の改正で煩わしい検索条件の設定がなくなり、電子化が進めやすくなっています。
適正事務処理要件の廃止
電子帳簿管理に係る適正事務処理要件の廃止も法改正で適用されます。現行法では、関連する社内規程を整備する必要がありました。
今回の改正電子帳簿保存法では廃止になったことで、社内規程を整備せずとも電子帳簿による管理ができるようになります。規程の準備にかかわることだけではなく、適正事務処理で消耗していた時間を取り返すことができ、業務効率化につながります。
電子取引の電子データ保存の義務化
規制緩和され、電子帳簿の普及促進を強調する反面、規制強化された側面もあります。電子取引の電子データ保存の義務化がそれに該当します。
現行法では、電子取引記録を印刷して、紙で保存することが可能でした。しかし、今回の改正で電子取引において電子データで受領した取引情報は、必ず電子保存しなければならなくなりました。
罰則の強化
今回の電子帳簿保存法で注目されている規制強化が、罰則規定です。規制が大幅に緩和されることに伴い、隠ぺいや偽装など悪用があった場合の処置を明記しています。悪質だと判定された場合、申告漏れに生じる重加算税が10%加重されることが明文化されています。
電子保存全般に対して罰則が設けられるため、ほぼすべての企業や個人事業主がこの罰則の対象になるでしょう。今回の改正で、不正行為やデータ入力ミスを防ぐ取り組みが求められます。
電子帳簿保存法、改正後の注意点
電子帳簿保存法の改正で上記の規制緩和・強化が適用されるのは、法人・個人事業主すべてです。つまり、個人事業主であっても、電子で授受している取引データがあれば、それらを電子データとして保存しなければなりません。
取引データを正しく保存できていない場合、重加算税のほかにも個人事業主の場合青色申告の承認取り消しもあり得えます。経費として計上できる書類に関しても、電子化がなされていなければ税法上の書類として認められません。確定申告の際に控除が一切不可になってしまうので注意しましょう。
電子帳簿保存法の改正で対応すべきこと
電子帳簿保存法の改正ですべきことは以下の2点です。
- 要件の再確認と改正電帳法対応が必要となる文書および業務フローの特定
- 改正電帳法に対応したシステムの導入を検討する
要件の再確認と保存の実施
今回の法改正で変更となった要件の達成、かつ保存の実施は必須です。特にスキャナ保存、電子取引については大きな変更点があるため、それぞれの要件を再確認しましょう。
適切な方法で書類を保存していくことも進めてください。もし、これまで異なる方法をとっていた場合は、保存方法を変更する必要があります。
スキャナ保存の要件
スキャナ保存の要件は以下のとおりです。
【確認しておくべき要件】
- 検索条件の設定:「日付」「金額」「取引先」で検索できるか
- 変更の履歴が確認できるか
- 書類の大きさに関する情報がA4以上か(A4以下なら不要)
- タイムスタンプが付与できるか(訂正削除記録が残るクラウドシステムへ保存する場合は不要)
電子取引の要件
電子取引の要件は以下のとおりです。
【確認しておくべき要件】
- すべてを電子データで保存する
- 検索条件の設定:「日付」「金額」「取引先」で検索できるか
- 閲覧できるディスプレイや印刷できるプリンタがあるか
- 形式が整っており速やかに出力できるか
- 改ざんや不正への予防・防止措置が取られているか
電子帳簿保存法に対応したシステムの導入を検討する
今回の電子帳簿保存法改正は、大幅な規制緩和による電子保存の導入・活用を促す側面があります。しかし、同時に規制強化される項目もあり、電子帳簿保存法に対応したシステムの導入を検討することも大切です。今後も電子保存は進んでいくことを考えると、導入して間もない段階でシステムを構築しておくのがベストです。
まとめ
電子帳簿保存法の改正は、大幅な規制緩和がなされた一方で、厳格化した規定も存在します。電子保存へのシフトでコスト削減やDXを推し進められる反面、徹底した管理体制を構築しなければ罰せられるようになりました。今後の電子保存化が本格化する前に、要件の確認やシステムの導入を急ぎましょう。
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