領収書は電子化できる? メリットやデメリット・注意点をわかりやすく説明

2022.12.19

領収書は電子化できる?
メリットやデメリット・注意点をわかりやすく説明

領収書は電子化できる?メリットやデメリット・注意点をわかりやすく説明

1998年に制定した電子帳簿保存法は幾度かの改正を経て、領収書も電子データのみでの保存が可能となりました。これにより、領収書の検索の簡易化や半永久的な保管ができるようになり、企業側の負担が軽減する期待が見込まれています。

そこで当記事では、領収書を電子化するメリットや電子化をする際の注意点について解説します。現在2022年11月の時点で領収書の電子化を進めていない方も、当記事の内容を通して領収書を電子媒体で保存する価値を知り、今後の導入を検討してみてはどうでしょうか。

領収書の電子化は電子帳簿保存法という法律によって許可されています。電子帳簿保存法とは、税金などに関わる帳簿や書類を、一定の条件を満たした場合でのみ電子化して保存することを認めている法律です。紙媒体で受け取った領収書は「スキャナ保存」の要件を満たしていれば電子化が認められ、電子取引の領収書はそのまま保存することが義務付けられています。

電子帳簿保存法では領収書以外にも以下のような書類の電子化が認められています。

  • 国税関係帳簿(総勘定元帳、売上台帳など)
  • 決算関係書類(貸借対照表、損益計算書など)
  • 取引関係書類(見積書、領収書など)
  • 電子書類(電子取引で得た見積書、領収書など)

現時点で、上記のような書類の電子保存が認められています。今後のIT化に伴って取引先とのやり取りが電子化していくのも時間の問題ですので、紙媒体で取引している企業も少しずつ電子化を進めてみてはどうでしょうか。

領収書を電子化することによって、企業は様々なメリットを享受することができます。以下で示す領収書を電子化するメリットを確認して、自社に領収書の電子化を導入する価値を見定めてみましょう。

【領収書を電子化するメリット】

  • コストを削減できる
  • 簡単に検索できる
  • 保管スペースを取らない
  • 紛失を防止できる
  • 半永久的に保管できる

電子化により紙媒体でかかっていたコストが削減できるほか、管理面での大幅な効率化が見込めるなどのメリットがあります。

コストを削減できる

領収書の電子化を進めることで、従来までかかっていたコストを削減することが可能です。例えば、領収書を発行する側なら発行にかかるインク代や紙代などのコストが削減でき、受け取る側であれば領収書の保管場所や管理にかかるコストが削減できます。

パソコン1台で簡単に管理ができる点を踏まえれば、紙媒体の管理よりも数倍コストの削減に期待できるでしょう。電子化を進める初期段階でコストがかかる問題点はありますが、長期的に見れば初期コストを含めても電子化は価値あるものであると言えます。

簡単に検索できる

領収書を電子化することで、過去に取り扱った領収書の検索が容易となります。従来のように紙媒体での管理だと、ファイルを一つ一つ探したり、バラバラに入れた段ボールから探したりとかなりの手間を要しましたが、電子化していればその手間がかかりません。

電子化したデータをルールに則って紐づけしておけば社内のだれが検索しても見つかるような仕組みも作れてしまいます。税務調査や確定申告で必要となった際、探すのに何分もかかっていたのが、電子データでの管理がされているだけで、数秒で検索出来てしまうでしょう。

保管スペースを取らない

紙の領収書で保管をする場合は、ファイルに入れたり段ボールにまとめて入れたりするので保管場所を要します。会社の規模が大きくなればなるほど必要となる保管スペースは大きくなるので、電子化による効果も比例して大きくなるでしょう。

実際に電子化が実現すれば、保管場所はパソコン1台で事足りてしまいます。毎年領収書が増えていったとしても、保管場所が増えることは無いので、事務所の規模も最小限で済ませられるでしょう。これにより、会社の場所代も軽減できるといった副次的な効果も得られます。

紛失を防止できる

従来のような紙媒体による保管方法だと、ふとした瞬間に無くしてしまう可能性があります。しかし、電子媒体による保管をしておけばデータがすべて消滅してしまわない限りは、半永久的に保管できるでしょう。ウイルスなどによる消滅もゼロではありませんが、クラウドストレージを使うなどしてしっかりとバックアップを取っておけば完璧な消滅は防げます。

また、領収書を確認する際も、保管してあるデータを見るだけなので何回閲覧したところで紛失のリスクはゼロです。紙媒体の場合はファイルを取り出して確認するので、その際にファイルから落ちてしまう可能性があり、紛失リスクはゼロではありません。

半永久的に保管できる

紙で保管した場合は領収書の劣化によって内容が確認できなくなったり、湿気でインクが滲んでしまったりする可能性があります。しかし、電子データでの保管なら削除をしない限りは半永久的に保存しておくことができるでしょう。

領収書は何十年、何百年と保管しておく必要はありませんが、法人税法で5~10年は保管しておくことが義務付けられているため、必ずその期間は内容が確認できるように管理しておくことが求められます。その点を踏まえると、電子データで保管をしておいた方が気持ち的にも安心して管理ができるかもしれません。

領収書を電子化することでコスト削減や管理方法の効率化が図れる一方で、導入に伴うデメリットなどもあります。電子化のシステム導入は会社全体で取り組む必要があるため、デメリットもよく理解したうえで進めるようにしましょう。

【領収書を電子化するデメリット】

  • 導入に費用や手間がかかる
  • 電子化できないものがある

導入に費用や手間がかかる

領収書の電子化をするには、スキャナや保管するシステムの導入が必要となります。そのため、システムの導入費として初期段階でそれなりの費用が掛かってしまうでしょう。また、システムを導入した後も、それを使えるようになるための教育が必要になるので、担当する人数分だけ教育コスト要するでしょう。

とはいえ、初期段階でかかるコストは設備投資として考えるのが無難と言えます。なぜなら、電子化の仕組化が進むことで社内の書類全てが電子化すれば、その後のコスト削減量は計り知れないものとなるはずだからです。

電子化できないものがある

基本的に電子化できるのは要件を満たした場合のみなので、要件を満たしていない書類に関しては電子化できません。

【真実性の確保】

  • 記録事項の訂正・削除を行った場合の事実内容を確認できること
  • 通常の業務処理時間を経過した後の入力履歴を確認できること
  • 電子化した帳簿の記録事項とその帳簿に関連するほかの帳簿の記録事項とのあいだにおいて、相互にその関連性を確認できること
  • システム関係書類等を備え付けること

【可視性の確保】

  • 保存場所に、電子計算機、プログラム、ディスプレイ、プリンタおよびこれらの操作マニュアルを備え付け、記録事項を画面・書面に整然とした形式及び明瞭な状態で速やかに出力できること
  • 取引年月日、勘定科目、取引金額その他のその帳簿の種類に応じた主要な記録項目により検索できること
  • 日付または金額の範囲指定により検索できること
  • 2つ以上の任意の記録項目を組み合わせた条件により検索できること

要するに、真実性の確保においては「修正等の事実確認ができること」「タイムスタンプの付与」「基準以上のスキャナーのスペック」といった条件を満たす必要があり、可視性の確保においては「システムの開発関係書類などの備え付け」「取引年月日・勘定科目・取引金額など主要な記録項目で検索できる」といった条件を満たすことが求められます。

領収書を電子化する際の注意点として、概ね3営業日以内に電子化しなくてはいけないというのがあります。「概ね3営業日以内」という表現があるように、厳密に3営業日以内に電子化する必要は無いです。以前までは3日以内に電子化をしなくてはいけないルールがあったのですが、現在ではそのルールが緩和されて「概ね3営業日」と表記されるようになりました。

ちなみに、3営業日以内のルールは領収書を受け取った本人が電子化する場合に適応されます。そのため、受領した本人以外がデータ化する場合には、3営業日のルールが適応されません。その代わりに、本人以外がデータ化する場合は「2ヵ月と概ね7営業日(67日前後)」以内にデータ化するよう規定されています。

2022年の電子帳簿保存法の改正における、領収書に関する変更ポイントを確認しておきましょう。

【2022年に改正された電子帳簿保存法の変更ポイント】

  • 電子で受け取った領収書は電子での保存が義務付けられる
  • データ化する期限が緩和された
  • 事前に税務署に申請する必要がなくなった
  • 電子取引の場合は領収書などの電子保存が義務化された
  • タイムスタンプに関する要件が緩和された

改正によって書類の電子保存のハードルは少しずつ下がっています。今後、企業が取り扱う国税関係の書類の電子化はますますスピードアップしていくことが予想されるので、今後の流れに遅れないように電子化システムの導入は検討していくことが求められるでしょう。

電子帳簿保存法についてさらに詳しく知りたい方は、以下のサイトでより深く解説しているので参考にしてみてください。

電子帳簿保存法によって義務付けられている、一定の条件を満たした税金などに関わる帳簿や書類の電子化は領収書にも適応されます。電子取引にて発生した領収書の保存は義務とされており、紙媒体で受け取った領収書の電子化は任意となっています。紙媒体の領収書を電子化するには「真実性の確保・可視性の確保」に関する要件を満たしている必要があり、それを満たしていない場合は電子化することができません。

領収書を電子化することで、今までの管理でかかっていたコストが削減できたり、場所をとっていた保管棚も不要になったりします。そういったメリットがある一方で、電子化のシステムを導入するのにコストがかかるといったデメリットもあるので注意が必要です。

自社の運営形態が電子化を進めることに適しているのかを、当記事の内容を参考に正しく判断できるようにしておくことで、効果的な書面管理をしていきましょう。

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