2022.12.19
請求書を電子化するメリット・デメリットは?
種類やポイントも説明
2022年に電子帳簿保存法が改正され、国税関係帳簿の電子保存に関する要件が大幅に緩和されました。これに伴い、多くの企業が書類の電子化を推進し始めています。従来、紙媒体で取引をしていたところは電子化の対象書類を絞って少しずつ電子化を進めていく流れになるかとは思いますが、どの書類から取り組んでいくべきか悩んでいる方も多いのではないでしょうか?
そこで当記事では、国税関係帳簿の中でも請求書の電子化に関する内容を解説していきます。請求書を電子化することで得られるメリットなどを把握して、電子化を進める対象にすべきか検討してみてはいかがでしょうか。
請求書の電子化とは
請求書の電子化とは、請求書を発行する際にツールやシステムを用いて電子化することを指します。基本的に、システムにあらかじめ登録されているフォーマットに打ち込んで発行したり、ツールを用いてPDFとして発行したりして請求書を電子化するのが一般的です。
請求書を電子化するサービスは多く登場しており、比較的手軽に発行できるものが多いです。電子化する方法は様々で、メールに添付して送付するタイプのものや、専用ページからダウンロードするものなど色々とあります。ただし、多くのサービスがあるとはいえ、以下で示す請求書を電子データとして保存する2つの要件を満たしていなければ電子保存として認められないので注意してください。
【真実性の確保】
- 記録事項の訂正・削除を行った場合の事実内容を確認できること
- 通常の業務処理時間を経過した後の入力履歴を確認できること
- 電子化した帳簿の記録事項とその帳簿に関連するほかの帳簿の記録事項とのあいだにおいて、相互にその関連性を確認できること
- システム関係書類等を備え付けること
【可視性の確保】
- 保存場所に、電子計算機、プログラム、ディスプレイ、プリンタおよびこれらの操作マニュアルを備え付け、記録事項を画面・書面に整然とした形式及び明瞭な状態で速やかに出力できること
- 取引年月日、勘定科目、取引金額その他のその帳簿の種類に応じた主要な記録項目により検索できること
- 日付または金額の範囲指定により検索できること
- 2つ以上の任意の記録項目を組み合わせた条件により検索できること
【2022年1月改正】電子帳簿保存法の変更点
2021年1月に電子帳簿保存法の改正が行われ、2022年より施行されています。電子化を進めるのに苦戦する企業が多くある中で、この改正は電子化を導入するハードルを下げる効果をもたらしました。改正による主な変更点は以下の通りです。
【2022年1月改正の変更点】
- 事前手続きの廃止
└電子帳簿保存やスキャナ保存を行う際に、税務署長から承認を得る必要があったが、改正によって事前承認が廃止されました。 - タイムスタンプの要件が緩和
└スキャナ保存時に行う電子データへのタイムスタンプは、最長約2か月に統一されました。 - 検索項目の要件緩和
└検索項目が削減され、取引年月日、取引金額、取引先の3項目になりました。 - 電子取引における電子データ保存の義務化
└電子データでやり取りをした国税関係書類は、電子データで保存することが義務付けられました。紙での保存は認められていません。 - 罰則の強化
└電子取引データやスキャナ保存の際に、隠ぺいなどの事実が発覚した場合は、重加算税が10%加重されます。
スキャナ保存をする前に税務署への承認が必要であったり、タイムスタンプは3営業日以内に行なわないといけなかったりと、かなり運用ハードルが高かった電子保存ですが、今回の改正によってそれらが大幅に緩和・廃止されて運用のハードルがかなり低くなりました。
電子帳簿保存法についてさらに詳しく知りたい方は、以下のサイトでより深く解説しているので参考にしてみてください。
【2023年10月開始】インボイス制度とは
インボイス制度とは、2023年10月からスタートする「適格請求書保存方式」という制度のことを指します。この制度の目的は、インボイスという「適格請求書」を発行して、軽減税率等で影響を受ける消費税額を正確に把握することです。インボイス制度が施行されることで、免税事業者が消費税を納付しない場合や、中小事業者が概算払いをする場合、本来納付すべき消費税額との差額が合法的に生じる事態を防ぎます。
課税事業者側は制度が開始されると、取引先からインボイス制度に対応した請求書(インボイス)が発行されないと仕入税額控除が受けられません。そのためインボイス制度が開始すると、仕入額控除を利用したい課税事業者は取引先に対してインボイスの発行を要求する必要性が出てきます。
ちなみに、インボイス制度に対応する請求書は以下の6項目が記載されているものだけとなるので注意してください。
- 適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
- 取引年月日
- 取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
- 税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜き又は税込み)及び適用税率
- 税率ごとに区分した消費税額等
- 書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称
インボイス制度についてさらに詳しく知りたい方は、以下のサイトでより深く解説しているので参考にしてみてください。
請求書を電子化するメリット
請求書は紙で発行することももちろん可能ですが、電子化することで得られるメリットが大きいため、可能な限り電子化の方向へ進めていくことをおすすめします。以下で示す請求書を電子化するメリットを確認して、電子化の導入を進めるべきか検討してみましょう。
【請求書を電子化するメリット】
- 業務を効率化できる
- テレワークをおこないやすい
- コストを削減できる
- 発行当日に受領できる
- 人為的ミスを防止できる
業務を効率化できる
請求書を電子化することで、従来の請求書関連の業務を効率化できます。具体的には、紙の請求書を発行する際に行われていた定型作業を自動化することが可能となり、請求書の再発行や修正が必要になった場合でも、システム上で対応できるようになります。
基本的にシステムを活用すれば、そのシステム内で請求書に関する発行業務はすべて完結してしまうので、発行から保管まですべてが電子化によって効率化するのが特徴です。また、システムを活用していれば過去の請求書も素早く検索・確認できるため、請求書のまとめをするときの作業も大幅に効率化します。
テレワークをおこないやすい
請求書を電子化できるようになれば、会社のパソコンでわざわざ請求書を発行して送付する必要が無くなるため、テレワークのような会社外での勤務体制をとりやすくなるメリットがあります。働き方改革や新型コロナウイルスの流行によって注目されてきているテレワークは、自宅で働くことで業務の停滞を発生させる懸念もありましたが、請求書等の書類を電子化できるようになり、そういった心配もなく取り組めるようになってきています。
テレワークは不要な出勤を避けるという意味では業務の効率化にも繋がるため、書類の電子化を進めることによって企業の発展に貢献する可能性もあることは覚えておきましょう。
コストを削減できる
請求書を紙で発行すると、印刷費用や紙代、返送コストがかかりますが、電子化することによってこれらのコストを削減できます。紙媒体だと、印刷をした後に捺印をして郵送をする工程を必要としていましたが、電子化すればそれら全てがなくなり、システム内の発行と送付ですべて完結します。
請求書の発行数は製品数や顧客の数によって変化するため、取引先の数が多くなればなるほど電子化によるコストの削減割合は大きくなるでしょう。
発行当日に受領できる
紙媒体だと送る時間帯や曜日によってタイムラグが大きく発生する場合があり、双方の企業間でスピーディーなやり取りができず、問題を発生させるきっかけになる可能性がありました。しかし、電子請求書であれば、発行したその日に受領することができるためスピーディーなやり取りが実現します。
また、スピーディーなやり取りができることによって万が一請求書に修正が必要となった場合でも、すぐさま対応ができるため取引先の信頼低下を防止することにも繋がるでしょう。
人為的ミスを防止できる
紙の請求書を発行する場合、紛失、封入ミスといったヒューマンエラーが発生する可能性があります。今までにそういったミスがなかったとしても、人がやることなのでミスをしない可能性がゼロになることはないです。その点、電子請求書のシステムなら取引先ごとに請求書データを自動で仕分ける機能があったりするため、封入ミスのような事態が発生する可能性を限りなくゼロに近づけられるでしょう。
請求書の封入ミスや紛失は取引先からの信頼を失うきっかけになりかねません。お互いの信頼があってこその取引なので、そういった部分で信頼を損ねないように電子請求書にするなどして最大限努めることが大切です。
請求書を電子化するデメリット
請求書を電子化することで業務効率化やコスト削減といったメリットを享受できる一方で、電子化によるデメリットもあります。デメリットを把握しておくことで、請求書の電子化を進めるべきか適切な判断ができるようになるため、電子化の導入を検討している方は必ず確認しておくようにしましょう。
【請求書を電子化するデメリット】
- 導入・運用コストが発生する
- 取引先によっては嫌がられる場合がある
導入・運用コストが発生する
電子請求書を発行するためには、システムやツールの導入をする必要があるため、導入費用や運用コストが発生します。数年前だと電子請求書を発行するためにはオンプレミス型を導入して、自社の形態に合わせてカスタマイズするものが多かったため割高なものが多かったですが、最近ではクラウド型も出てきているので比較的導入コストは抑えられる傾向にあります。
導入・運用コストが発生するデメリットはもちろんありますが、長期的に見れば導入後にペーパーレス化や、事務員の手間代などを削減できるので、トータル的には導入がメリットに作用することの方が多いです。
取引先によっては嫌がられる場合がある
電子請求書は便利なものですが、取引先によっては紙の請求書で取引を続けたいと考えるところもあります。自社の取引先の多くが紙の請求書を望んでいる場合は、紙の発行と電子発行の2通りを使い分けることになってしまい、業務が複雑化する可能性があるので注意が必要です。
電子請求書をスムーズに導入するためにも、取引先の意向調査などは必ず行なった方が良いでしょう。 取引先によっては嫌がられる場合がある旨を説明
電子請求書の種類
電子請求書は発行する方法によって種類が異なります。用途自体は同じですが、今後導入を進めていくのであれば一通りの種類は把握しておいた方が良いので、以下で確認をしておきましょう。
【電子請求書の種類】
- メールで添付するタイプ
- Webサイトからダウンロードするタイプ
- システムで送信するタイプ
メールで添付するタイプ
メールで添付するタイプの電子請求書は、Excelなどのフォーマットを使って作成した請求書をPDFで出力してメールに張り付ける方法です。特別なツールを導入する必要が無いのが特徴で、比較的手軽に導入できる方法となっています。
注意点として、Excelなどのフォーマットを利用する場合は、電子帳簿保存法の電子取引要件に対応していない可能性が高いので、対応したシステム作りをしなくてはいけません。例えば、訂正削除の防止に関する事務処理規程を策定して真実性を確保したり、速やかに請求書データを検索・参照できるような仕組みを整えて可視性を確保したりする必要があります。
Webサイトからダウンロードするタイプ
Webサイトからダウンロードするタイプの電子請求書は、作成した電子請求書をWebサイト・クラウド上にアップロードすることで、受け取り相手がそこからダウンロードして請求書を取得できるタイプです。基本的に、クラウドサービスを利用する必要があるため、登録をするといった手間がかかってしまいます。
また、このタイプは取引先がアップデートしたかどうかが分かったり、一定期間の保存ができたりといったサービスもあるため、管理面が比較的優れているのが特徴です。電子帳簿保存法にも対応しているものが多いため、発行側は紙媒体で保存する必要がありません。
システムで送信するタイプ
システムで送信するタイプの電子請求書は、請求書の作成から送信までを一つのシステムで一貫して行えます。一つのシステムで全て完結できるということもあり、3種類の方法の中で最も利用しやすい請求書のタイプであると言えるでしょう。
また、システムには多くの機能が搭載されていることが多く、管理面も充実しているため、システムを利用する以外に特別なツールを利用するといった必要性もなくなります。電子帳簿保存法に対応した請求書を発行したいが、どのように始めていくべきか分からない方にはおすすめの種類の電子請求書であると言えるでしょう。
請求書を電子化する進め方のポイント
請求書の電子化を推進する際は、運用をスムーズに行うためのポイントや、注意点など押さえておくべきポイントがいくつかあります。ポイントを押さえておくことで、請求書の電子化をスムーズに導入しやすくなるだけでなく、様々な取引先に対応できるような体制を整えておけるでしょう。
【請求書を電子化する進め方のポイント】
- 郵送での発行にも備えておく
- 電子帳簿保存法に対応させる
- 既存のワークフローに対応したツール・システムを導入する
郵送での発行にも備えておく
取引先によっては電子請求書ではなく、紙の請求書を希望する場合もあります。取引先によって電子請求書と紙の請求書を使い分ける必要は出てしまいますが、既存の取引先との取引を続けるためにも柔軟に立ち回る必要があるでしょう。
電子帳簿保存法に対応させる
電子請求書を発行するのであれば、電子帳簿保存法に対応しているツール・システムを利用することをおすすめします。もし、システムを導入するのが難しい場合には、電子化に先駆けて運用に関する規程や体制を準備しましょう。
既存のワークフローに対応したツール・システムを導入する
自社内で請求書を取引先に発行する際のワークフローが決まっている場合には、そのフローに対応したツール・システムを導入するようにしましょう。そうしないと、既存のフローを維持したまま電子請求書の発行が行えなくなる可能性があります。
請求書の電子化ツールの選び方
請求書の電子化ツールを導入する際は、必ず以下で紹介する選び方を参考にして導入するかどうかの判断をするようにしましょう。そうしないと、業務の効率が下がってしまったり、既存のシステムと全く連携ができなかったりしてしまいます。
【請求書の電子化ツールの選び方】
- 既存のシステムと連携ができるか
└社内で採用している既存のシステムがある場合は、それと電子化ツールが連携できるか確認しましょう。単体でも効率化が図れるのであれば問題ありませんが、連携ができないことによって効率の効果が減少してしまうのであれば導入の価値薄れてしまうでしょう。 - 請求書発行に伴う関連業務をカバーできる機能があるか
└請求書の電子化に関連する業務には、作成・発行以外にも郵送や入金管理といった業務があります。これらの業務に対応しているツールは実際に提供されているので、業務効率化の効果をできる限り高めるためにもなるべく多くの業務をカバーできるツールを導入しましょう。 - 実績のあるツールか
└電子化ツールには様々な種類があります。機能やサービス内容を確認しても、それが良いものかどうかを判断するのは初心者には難しいため、なるべく実績があるツールを導入するようにしましょう。実績が豊富なところほどサービスやアフターフォローが充実しているケースが多いです。
まとめ
インボイス制度の開始に伴って、請求書の取り扱い方が少し変わります。課税事業者に請求書を納める際、インボイス制度に対応した適格請求書という請求書を発行しないと、課税事業者側が仕入税額控除を受けることができません。そのため、請求書を発行する際は対応した書類を発行する必要があります。
また、請求書のやり取りを電子データで行なう場合には、電子帳簿保存法に則って保存・管理が求められるでしょう。電子化によるメリットは大きいものの、法に順守したシステムを導入する必要があったり、コストがかかったりして導入ハードルが高くなるため、その点を加味しつつ電子帳簿保存法とインボイス制度に対応したシステムの導入を検討しなくてはいけません。
そこで、当記事ではインボイス制度に対応したソリューションの活用をおすすめしています。インボイス制度の対応が求められている現在を機に、業務効率化に向けた電子請求への対応も検討してみてはいかがでしょうか。
もし、どのソリューションを導入すべきか分からない場合には、富士フイルムビジネスイノベーションへ一度ご相談ください。各企業に最適なソリューションを提案させていただきます。
【関連コンテンツ】