このコンテンツは獣医療従事者向けの内容です。
春は狂犬病予防、フィラリア予防などの対応があり、動物病院にとって1年の中で最も忙しい時期であり、さらには4月に入社した新人への指導が必要なことも重なり、カオス状態のようになってしまう病院も多い時期です。
この時期は忙しさから目の前の症例の対応に追われてしまいがちですが、多くの飼主様が来院され、健康への意識や関心も高まる時期だからこそ、情報を飼主様に効果的に届けるチャンスでもあります。特にフィラリア検査の採血のタイミングに合わせて健康診断(血液検査)を勧めることは、飼主様にとっても受け入れやすく、病院の労力の負担も比較的少ないためお勧めです。
1.健康診断のメニューの決め方
繁忙期であることを考えると、健康診断メニューも病院側の負担を軽減することを考慮することが大切です。必然的に、フィラリア検査の採血と合わせて実施でき、外注検査も活用しやすい血液検査を中心にメニューを組み立てることとなります。
レントゲンや超音波検査などを健康診断メニューに組み込むこともできますが、対応の負担が大幅に増えますので、自院の人員体制などをよく鑑みてメニューを決めましょう。
2つのコースを用意し、尿検査や画像検査をオプションとして提示したケースです。
事前にチェックを入れて持参いただければ、当日コースを検討したり問診をする時間を短縮することができます。
3つのコースを用意し、最もグレードの高いコースにはエコー検査を組み込んだケースです。エコー検査は17:30までの来院を条件とするなど、対応に無理が出ないよう工夫しています。また各コースの内容が飼主様にとってわかりやすいように、表を付けています。
2.飼主様への発信
健康診断のメニューが決まったら、飼主様に対して情報発信をします。既存の飼主様に対しては紙媒体でのDMやLINE等のメッセージツールで情報発信をします。上記の例で示したのは病院オリジナルのA4サイズのDMで、予防薬のパンフレットやフードサンプルなどを同封して発送することが多いです。オリジナルの資料を作成する余裕がなければ、検査会社やメーカーなどが提供してくれるDMやハガキを活用するのもよいでしょう。その他、ホームページや院内の掲示やデジタルサイネージなど、使える媒体は積極的に使って情報発信をしましょう。情報発信の手法についてはコラム「健康診断の情報発信の手法あれこれ」もぜひご参照ください。
メッセージ内容としては「病気の早期発見につながる」「異常がなかった場合でも、正常時の数値を把握できることが有意義」「フィラリア検査の採血のついでに受診できるので動物の負担も少ない」「外注検査を使って比較的リーズナブルに受診できる」など、メリットや訴求ポイントをわかりやすく伝えることが大切です。検査内容についても、「GPT」「ALP」「T4」など専門用語を使うのではなく、わかりやすい表現に努めましょう。
3.スタッフへの周知
フィラリア時期の健康診断は、動物病院のスタッフ全員の意識を合わせて業務にあたることが大切です。スタッフによって言うことが違うといったことが無いよう、健康診断の内容や勧め方は院内によく周知し、統一するようにしましょう。
そのためには
- 健康診断のメニューや割引などのサービス内容はスタッフにとってわかりやすいシンプルなものにする。
- どんな犬にどのコースを勧めるなど、健康診断の勧め方の基準をある程度統一する。
- ミーティングなどで健康診断の内容や病院としての方針をよく共有し、「こう聞かれたらどう答える?」「お勧めの薬を聞かれたらどうする?」といった実践的なロールプレイングを行う。
といったことが大切です。
【2024年3月/文責:動物病院経営パートナーEn-Jin 代表取締役 古屋敷 純】