このコンテンツは獣医療従事者向けの内容です。
動物の飼育頭数がじりじりと減少する一方で、動物病院の数は増え続けており、自ずと病院間の競争は激化の一途をたどっています。そのような状況において新規の飼主様(新患)の獲得をするためには、動物病院を探している潜在的な顧客に対して自院の存在や特徴の情報を届けることが大切です。本コラムでは、新患獲得のための情報発信ツールの選択について紹介します。
1.情報発信の“最重要拠点”はウェブサイト/ホームぺージ
最近では、初診の飼主様に「どのようにして当院のことを知りましたか?」とお伺いすると、多くの方が「ウェブサイト/ホームぺージ(以下HP)を見て」と回答されます。一方で、一度もHPを見ることなく、「通りすがりで」「電話帳で調べて」といった理由で新患が来院されるケースは非常に少なくなりました。ほとんどの方が初めての来院前に一度はHPを見ていると言っても過言ではなく、現在の動物病院経営において、HPは情報発信の必須ツールとなっていると言えます。
HPは動物病院の場所や診察時間などの基礎情報はもとより、その病院の特徴や院長先生の考え方を飼主様や求職者に365日24時間発信してくれるものです。現在はHPこそが自院の情報発信の“最重要拠点”であることを理解し、潜在的な顧客にその拠点にたどり着いてもらうためにできることをし、たどり着いてくれた方に対してしっかりと情報を届けられるよう、HPの内容や動線も整えておくことが非常に大切です。インターネット広告など有料の広告を出す場合も、常にHPという拠点に誘導することを念頭に置くようにしましょう。
2.SNSはどのように使うべき?
経営サポートの現場でも「SNSを活用した方がいいですか?」というご質問をいただく機会が増えました。動物病院向け求人サイト等では、HPだけではなく、X(旧Twitter)、Instagram、Facebook、LINE、YouTube、TikTokといった各種SNSやメディアへのリンクを貼ることができる仕様になっている事が多く、近年では自社のSNSやYouTubeチャンネルへのリンクを貼る動物病院様も非常に多くなっています。
もちろん情報発信のチャネルを増やすという意味ではSNSやYouTubeを運用することはプラスになりますが、「新患獲得」という観点に限って言えば、全てが有効に機能するとは限りません。またSNS等の運用には当然院長先生やスタッフの労力もかかりますので、思い付きで手を付けるのではなく、各ツールの適性をよく理解して、優先順位をつけて意図をもって運用することが大切です。
まずX、Instagram、Facebook、YouTube、TikTokは、うまく運用すれば文章・画像・動画などを広く発信することで多くの人の目に留まることができます。それにより自院の知名度を高めたり、自院のHPに訪れる人を増やすことが可能です。実際に数万人単位のフォロワーをもっている、動物病院や獣医師のアカウントも存在します。
しかしながら、多くの動物病院にとって、潜在顧客(来院してくれる可能性のある顧客)とは病院の近隣に住んでいる方に限定されるため、SNSを通じて知名度を高めることが新患の増加に直結するとは限りません。一方で全国に向けて物販を行っていたり、遠方から来院する方が多くいるような動物病院では、SNSで知名度が高まることが新患の獲得につながる可能性が高いでしょう。
唯一LINEだけは、SNSというよりも「メッセージツール」として浸透しています。登録した「友だち」に対して病院からメッセージを発信できますので、例えば健康診断などの告知や、臨時休診のお知らせなどを送ることができ非常に便利です。新患の獲得というよりは、既存の飼主様へのアプローチにおいてより効果を発揮するでしょう。
3.アナログな情報発信の見直し
最後に、看板や電話帳、新聞折り込みチラシなどの、従来からあるアナログな情報発信についてです。「1」で述べたように、現在では動物病院を探す際にまずはインターネットで検索し、HPや口コミなどを見るというのが飼主様の基本動作となっているため、アナログな情報発信ツールの重要度は相対的には下がりつつあると言えます。
また、利用されたことがある方はご存じかと思いますが、看板、電話帳、新聞折り込みチラシなどは、インターネット広告などと比較して制作、印刷、配布などにコストがかかるため、料金が高くなる傾向があります。もちろんアナログなツールも情報発信のチャネルを増やすという意味ではプラスになりますが、費用対効果を考慮し優先順位をつけて活用することが大切です。特に動物病院を長く経営されており、昔から慣例的に毎年契約更新している場合などは、あらためて何にいくらかかかっているか、そのツールが新患の獲得にとって有効か、などを見直してみてはいかがでしょうか。アナログな広告にかけている予算をHPのリニューアルやインターネット広告などに振り分けた方が、費用対効果が上がる場合もあります。
【2024年10月/文責:動物病院経営パートナーEn-Jin 代表取締役 古屋敷 純】