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ジョブの後半でスジ・ムラが発生?今すぐインク供給ユニットの確認を!

本記事の「3つのポイント」
  • 見過ごされがちだが、インク供給ユニットがスジ・ムラの原因になりうる!
  • インク供給を適切に行う際のポイントは、「異物」「気泡」「インク温度」「メニスカスの状態」
  • インク供給ユニットを用いてプリントヘッドを安定的に使いこなすことが重要

本シリーズでは、これまで、「スジ・ムラの体系的な分析方法」をはじめ、スジ・ムラの原因として「プリントヘッドのクリーニング」、「搬送・振動」、「画像検査装置」を挙げ、それぞれの対策方法をご紹介してきました。
今回は、プリントヘッドにインクを供給する「インク供給ユニット」により起こるスジ・ムラとその対策方法をご紹介します。

「適切なインク供給」、できていますか?

1回の印刷(1ジョブ)で数百枚~数千枚印刷している最中に発生し始めるスジ・ムラや、装置を設置して数か月~数年経過してから発生し始めるスジ・ムラで悩まれた経験はありませんか?その場合、プリントヘッドが劣化してしまったからだと諦めていませんか?
そのスジ・ムラの原因は、プリントヘッドではなく、インク供給ユニットにあるかもしれません。実際に、Jet Pressの開発において、インク供給ユニットの改良でスジ・ムラを改善した経験があります。

インク供給ユニットに要求される主要な機能は、プリントヘッド内に安定してインクを供給し、プリントヘッド内のインクを適切な状態に保つことです。
特に、高解像度・高画質の画像を目指すほど、下記に挙げた4つのポイントが重要になります。

インク供給ユニットに要求される4つの機能

  1. 異物の除去と異物発生の抑制
  2. 気泡対策
  3. インク温度の制御
  4. ノズルにおけるメニスカスの制御

Jet Pressにおいても、上記4点に注意した設計を行ってきました。
では、次のページから、Jet Pressで発生したトラブルや、インク供給ユニットで注意すべき具体例について見てみましょう。

インク供給ユニット

図1 プリントバー(プリントヘッド)にインクを供給する「インク供給ユニット」

では、適切なインク供給ユニットはどのようにすれば実現できるのか、具体例を紹介します。

インク供給ユニットの4機能でスジ・ムラを防ぐ

1.異物の除去と異物発生の抑制

1200dpiの高解像度プリントヘッドを用いた高画質な印刷においては、数μm程度の異物がインク中に混入しただけでも、画質に大きな影響を与えます。
しかも、異物は外部から混入したものだけでなく、インク中の固形分の沈降やインクの変質など、インク内部でも発生することがあり、これらがノズルや流路内に詰まることによりスジ・ムラの原因となります。

このような課題に対する一つの解答は、適切な粗さのフィルタの設置です。

インク供給ユニットでは、大きな異物を適切に除去しつつ、インク内で必要な固形分は通過させる必要があるので、インクやシステムに適したフィルタの選択が重要です。
フィルタの選択を間違えると、フィルタ自体がインク変質あるいはインク凝集物などの異物発生を引き起こしたり、フィルタの交換頻度を増加させる恐れもあります。

図2 フィルタによる異物除去と不適切なフィルタ使用時の問題

適切なフィルタ径を選択するには、用いているインクの顔料粒径、プリントヘッドの流路・ノズル径を考慮するだけではなく、そのフィルタを用いたときのインク供給ユニットの送液能力への考慮や、実際に長時間フィルタにインクを通し続けてもインクが変性しないかの評価が必要になります。

気泡をインク中に混入させない

インク中に気泡が混入する主な場所として、プリントヘッドのノズル面が挙げられます。
プリントヘッドのノズル面から気泡が混入するタイミングには、大きく、プリントヘッドのクリーニング時と印刷時の2つが考えられます。
プリントヘッドのクリーニング時の気泡対策については、「プリントヘッドのクリーニング直後のスジトラブルの原因に迫る!」で紹介しました。
印刷時の気泡混入対策の方法については、後述の「4」でご紹介します。

インク供給ユニットを用いてプリントヘッドを安定的に使いこなす

ここまで紹介した「異物」「気泡」「インク温度」「メニスカスの状態」は、印刷速度や印刷画像の絵柄・濃度などに依存します。例えば、高速での印刷時や、印刷する絵柄・濃度が複雑な場合、特にメニスカスの制御が困難になります。これは、吐出されるインク量と供給されるインク量の変動が大きくなりやすいためです。

富士フイルムは、シングルパス・インクジェットプリンター「Jet Press」の開発を通じ、プリントヘッドを安定して使用するためのインク供給ユニットの最適化に取り組んできました。そして、その技術ノウハウを基に開発したインクジェットコンポーネント「Samba JPC」では、適切なインク供給を実現する「液循環ユニット」、高精度の吐出性を誇るプリントヘッドをアセンブリした「プリントバーユニット」を提供しています。これらをご使用いただくことで、上記の「異物対策」「気泡対策」「温度制御」「メニスカス制御」を実現いただけます。

さらに富士フイルムは、Samba JPCをお使いいただくお客さまに、インク供給ユニットに関わるスジ・ムラの原因特定から対策まで、幅広い知見やデータ解析の技術の蓄積を生かしたコンサルティングも行っています。ぜひご活用ください。

今後もこのシリーズでは、具体的なトラブルを取り上げ、その原因と対策例についてご紹介していきます。また、開発でのお困りのことや疑問などがあれば、下記お問い合わせフォームよりぜひお問い合わせください。