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プリントヘッドの寿命、どうやって推定していますか?

本記事の「3つのポイント」
  • プリントヘッドの寿命は、ユーザーの運用コスト削減につながる重要なファクター!
  • プリントヘッドの寿命推定を可能にする定量評価に必要な3つのステップ
  • 寿命はプリントヘッド単独では決まらない! 寿命延長にはクリーニングユニットの活用方法なども重要

産業用の大型インクジェットプリンターの場合、百個以上のプリントヘッドが搭載されることもあります。そのためプリントヘッドの寿命 (平均的な交換までの期間) を延ばし、交換頻度を抑えることは、ユーザーのランニングコストを大幅に削減し、ユーザーからの評価や満足度アップにつながる重要なファクターとなります。
さらに、プリンター開発の担当者やプロジェクト・マネジャーにとっても、プリントヘッドの寿命は、開発費やプリンターの利益算出に影響する重要なファクターとなります。

また、プリントヘッドの寿命は、プリントヘッド単独の性能で決まることはほとんどありません。使用するインクやプリントヘッドクリーニングの方法といったさまざまな要因が関連してきます。

プリントヘッドの吐出状態・寿命を推定する仕組みづくりが大事

プリントヘッドの経年劣化は避けることができず、ノズルの吐出状態に影響を与えます。たとえ初期に不良ノズル数が0であっても、長年使用していると、プリンターの稼働とともに不良ノズルが増え、印刷物にスジやムラが出てくることがあります。

(左)正常な場合のノズルチェックパターン印刷
(右)不良ノズルがある場合のチェックパターン印刷

富士フイルムでは、Jet Pressの開発・販売を通じて、数にして数千個以上のプリントヘッドの吐出状態を定量的に測定する方法を確立し、それを基にプリントヘッドの寿命を推定することにより、現地サービスマンがプリントヘッドの交換判断に活用しています。

今回は、富士フイルムがJet Press開発の中で用いている、プリントヘッドの寿命推定の具体的な方法を特別にご紹介します。

プリントヘッドの寿命推定のために必要な3ステップとは

プリントヘッドの寿命を推定するためには、次の3ステップが必要です。

  1. 着弾位置ずれ量の測定
  2. 指標の作成
  3. 継続的な指標の監視

上記3ステップについて、順番に見ていきましょう。

  1. 着弾位置ずれ量の測定

    まずプリントヘッドの各ノズルから印刷基材(紙など)へ吐出された液滴の着弾位置のずれ量(以下、着弾位置ずれ量)を正確に測定することが必要となります。
    着弾位置ずれ量とは、本来液滴が着弾すべき位置と実際に着弾した位置との差のことです。その測定には、本来着弾すべき位置、実際の位置をそれぞれ正確に測定できるよう、測定環境を構築する必要があります。

  2. 指標の作成

    次に、着弾位置ずれ量から、プリントヘッドの寿命と相関が高い指標(以下、代表指標)を導き出します。
    プリントヘッドの着弾性能を表す指標として、通常、1つのプリントヘッド内の各ノズルの着弾位置ずれ量の標準偏差(σ)が用いられます。例えば、σがプリントヘッドの寿命と相関が高い、つまり「スジムラが目立ち交換が必要な性能となったプリントヘッドは、σがある閾値より高くなる」という関係を見いだせるなら、σを代表指標としてもよいでしょう。
    σとプリントヘッド寿命とがあまり相関しない場合は、別の指標を選ぶ必要があります。

  3. 継続的な指標の監視

    上記の準備が整った上で、ある程度の数のプリントヘッドを同じ条件で一定期間使用して、代表指標がどの程度変化(悪化)するか、データを取得します。具体的には、開発中の試作機などを用いて、着弾位置ずれ量を継続的に測定し、日々代表指標の値を取得していきます。
    ここでは、なるべく同一の条件で継続して代表指標を測定することが重要です。例えば測定のタイミングは、朝、印刷機を稼働した直後等に統一しておくことが好ましいです。また、印刷基材によって着弾位置の計測値に変動が発生し、ノイズとなるので、毎日同一種類の印刷基材を用いて測定します。
    その他、使用するインク、ノズルから基材までの距離、ヘッドクリーニングの方法、印刷後の乾燥条件、といった周辺条件を一定にすることも必要です。

このようにしてある期間の着弾位置ずれ量を測定したデータを基に、寿命曲線(日数と代表指標との関係のグラフ)を描き、プリントヘッドの平均寿命(代表指標が悪化して閾値に到達する期間)を外挿します。

平均寿命算出のイメージ
誤ったクリーニング方法などと組み合わせるとヘッド寿命が減ることも

ここまで、吐出状態の定量的な測定でプリントヘッドの寿命を推定する方法をご紹介してきました。
しかし、プリントヘッドの寿命は、プリントヘッド単独の性能だけでは決まりません。
Jet Pressでは、

  1. プリントヘッドの吐出状態をできるだけ良好なまま維持すること
  2. プリントヘッドの吐出状態が劣化したときに、回復処置ができること
  3. プリントヘッドの吐出状態が劣化した状態でも、画像補正により対処すること

により、プリントヘッドの寿命を大幅に延ばすことが可能になりました。

特に、ヘッドクリーニングは、上記1.と2.に大きく影響し、クリーニング方法の影響も考慮しないと、寿命を正しく推定できません。それどころか誤ったクリーニング方法により、本来使用できるはずのプリントヘッドの寿命を早めることすらあります。

Jet Pressの技術ノウハウを基に開発したインクジェットコンポーネント「Samba JPC」でも、上記1.~3.の機能を実現するために、ヘッドクリーナー、キャッピングユニット、インラインスキャナー・画像解析ソフトを提供しております。

例えば、ヘッドクリーナーの適用により、一見、インクがノズル面に付着してプリントヘッドが乾燥劣化した状態に見えていても、適切なクリーニングで吐出状態を回復させることが可能です。またキャッピングユニットを用いることで、プリントヘッドの乾燥の防止や、プリントヘッドの結露による吐出性の悪化を防ぐことが可能です。インラインスキャナーと画像解析ソフトにより、上記で紹介した着弾位置ずれを簡易に測定することができます。

さらに富士フイルムでは、Jet Pressで用いてきたプリントヘッドの吐出状態を定量化するための代表指標をご提案することも可能です。

私たちは、高解像度シングルパス・インクジェットプリンター開発に取り組む皆さまに、「Samba JPC」を通じて私たちの知見・技術を活用いただき、貴社の開発を効率化することで、プリンティングのデジタル化を一緒にリードし、インクジェット市場の拡大と発展に寄与したいと考えています。開発でお困りのことや疑問などがあれば、どのようなことでも構いませんので、下記フォームよりお気軽にお問い合わせください。