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シングルパス・インクジェットプリンターの高速化でケアすべきポイントは?

本記事の「3つのポイント」
  • シングルパス方式はスキャン方式に比べ、印刷速度が高速になるほど、より画質の維持が難しくなる
  • シングルパス印刷では、高速化で起きる多様な印刷特性の変化を理解することが重要
  • 高速化でケアすべきポイントは、印刷特性値が増えるもの・減るものに分けると抽出しやすい!

インクジェット印刷には、旧来のアナログ印刷と比較して、印刷版が不要、熟練工でなくても印刷可能などさまざまなメリットがあります。その中でもシングルパス・インクジェットプリンターはこの10年ほどで急速に普及し始めており、高速印刷の用途では必須になりつつあります。
「印刷速度の高速化」は顧客の満足度を高める大切な要件となるため、印刷速度を上げた際にケアすべきポイントを踏まえると、スムーズに開発を進めることができます。そのポイントを見ていきましょう。

印刷速度で変わる性能。家庭用インクジェットプリンターとの違いとは?

家庭用のインクジェットプリンターを使ったことがある方は、シングルパス方式のインクジェットプリンターにおける印刷速度の高速化が画質に与える影響について、家庭用と同様のイメージでとらえられているかもしれません。

しかし、家庭用インクジェットプリンターはスキャン方式であり、シングルパス方式のインクジェットプリンターとは印刷方式に大きな違いがあり、画質に対する印刷速度の影響が異なります。ここを理解していないと、シングルパス方式で印刷速度の高速化を検討したときに、思わぬ不具合にぶつかり、開発の手戻りが発生するかもしれません。

その理由と、シングルパス方式で印刷速度を高速化する際のポイントについて見てみましょう。

しかし、シングルパス方式では、高速印刷を行う際には印刷基材の搬送速度を上げる必要があり、例えば、印刷基材の搬送速度を2倍にすると、図1に示すように、1倍速のときに比べて2倍速ではドットが間引かれて解像度は低くなります。この時、印刷基材とプリントヘッドの相対速度は上昇します。
本例では、1倍速、2倍速ともに、スキャン方式とシングルパス方式とで「ドット配置」は同じですが、印刷基材とプリントヘッドの相対速度の上昇は画質の劣化を引き起こすことが多いため、結果、2倍速での画質を比較すると、シングパス方式はスキャン方式よりも劣ってしまう恐れがあります。
このようにシングルパス方式では、スキャン方式と比べると印刷速度の高速化に向けた開発の難易度が上がります。
では、シングルパスで印刷速度を高速化する際に考慮すべきポイントにはどのようなものがあるのでしょうか。

そのほか印刷速度の増加に応じて増加する特性値は、プリントヘッド近傍を流れる風の強さや、基材搬送系の運動エネルギーなどがあります。速度の2乗で増える運動エネルギーによる影響は、過去の記事「搬送方向に発生するムラ対策」で登場した「振動ムラ」として現れることもあります。またロール紙搬送では、印刷速度に到達するまでに掛かる時間が延びることで、ヤレ紙が増えてしまうことも懸念されます。

一方で、印刷速度の増加に応じて減少する特性値には何があるでしょうか? 
まず、「隣り合うドットが着弾するまでの時間差」です。ドットが基材へ定着する前に隣のドットが着弾することで、色味の変化などの品質劣化が起こることもあります。

さらに印刷品質への影響が大きいものとして、例えば印刷の後工程にあたる「乾燥工程の時間」が挙げられます。基材搬送速度が上がることで、印刷物の乾燥時間は不足します。乾燥不足は、基材の変形やインクの裏写りなどを引き起こし、特にシート紙を扱う枚葉機では、印刷後の基材が直ちに積載されるため、乾燥不足は深刻な問題になります。

このように、印刷速度の増加に伴って増加する特性値と、減少する特性値を理解しておくことで、印刷機の高速化に向けた開発時にケアすべきポイントが抽出しやすくなります(表1)。

表1 シングルパス方式の印刷速度に伴い変化する特性値の例
増加する特性値 減少する特性値
基材搬送方向のドット位置ずれ量 隣り合うドットが着弾するまでの時間
プリントヘッド近傍の風の強さ 乾燥時間
基材搬送系の運動エネルギー量 検品時間
印刷速度に到達するまでの時間(ロール紙搬送) 一定量積層されるまでの時間(枚葉)

これらの改良時に得た知見・技術は、インクジェットコンポーネント 「Samba JPC」(図4)に生かされており、皆さまのインクジェットプリンターの開発で「Samba JPC」をお使いいただくことにより、開発工数を削減することが可能です。
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