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日本

膨大なノズルを制御し画像欠陥を撲滅する鍵は画像処理技術にあり!

本記事の「3つのポイント」
  • 数十万のノズル制御が必要なシングルパス方式では画像欠陥の撲滅が桁違いに困難
  • 画像検査で得たノズルデータは、プリンター開発や顧客サービスの質の向上に活用可能
  • 画像補正で画像欠陥の発生を防ぎ、高い印刷品質の長期維持を実現

ノズル数が膨大になると画像欠陥撲滅の苦労は桁違いに

インクジェットプリンターでは、吐出の悪いノズルにより、スジなどの画像欠陥が発生してしまうケースがあります。ノズルの数が数百から数千のシャトルスキャン方式のインクジェットプリンターでは、インクやヘッド、ヘッドクリーニング等を改良し、さらにシャトルスキャンの方法を工夫することにより画像欠陥の発生を防いできました。

これに対し、高解像度シングルパス・インクジェットプリンターでは、シャトルスキャン方法の工夫ができない上、ノズルの数自体が数万から数十万もあるため、画像欠陥の撲滅が桁違いに困難となります。

その例として、ヘッドクリーニングにおいて、ノズル数が増えた時の影響を考えてみましょう。

あるクリーニングを1つのノズルに適用した場合に、わずかですが10万回に1回という頻度でクリーニングに失敗するとします(失敗率P=1/10万)。もし1,000個のノズルに対してこのクリーニングを適用すると、全てのノズルのクリーニングが成功し画像欠陥を撲滅できる確率は、

(1−P)1000≈99.0%

です。ところが高解像度シングルパスプリンターのように、例えば10万個のノズルを有する場合には、

(1−P)100000≈36.8%

となり、クリーニングを行うと、3回のうち2回も画像欠陥が発生することになります。逆に1,000個のノズルと同様な性能を得るためのクリーニングの失敗率を計算するとP≈1/1千万程度となり、失敗率をさらに1/100程度まで低減する必要があります。

「失敗率P=1/10万」のクリーニング実行時の成功率

この例から、ノズル数が多い高解像度シングルパス・インクジェットプリンターでは、桁違いに高い技術が必要となることが分かります。

それでは、どのようにして画像欠陥の発生を撲滅すればよいのでしょうか?鍵は画像処理技術の活用にあります。

画像検査の結果を、プリンター開発や顧客サービスの質の向上に活用

プリンターに印刷物の画像検査カメラを組み込むことで、数十万あるノズルの状態をリアルタイムで取得・分析することが可能になり、効率的な開発が可能になります。例えば、ヘッドクリーニング時の圧力、速度等の設定を変化させて画像データを解析することによって、より画像欠陥を発生させにくい条件を探索することができます。このようにプリンター開発においては、画像検査の機能をインク、ヘッド、ヘッドクリーニングなどの材料・装置設計に有効活用することができます。

さらに、画像データをリアルタイムで取得する仕組みは、お客さまへのサービスにおける品質向上や効率化にも大いに活用できます。すなわち、ヘッドの状態変化を的確に把握し、劣化進度を予想できるようになることから、計画的なヘッドメンテナンスプランが立案でき、コストやリスクを抑えた効率的なプリンター運用が可能になります。

画像補正で不良ノズルによる画像欠陥を不可視化

次に、2つ目の画像補正技術の活用について説明します。
世の中にはさまざまな画像補正技術がありますが、多くは画像欠陥の原因となる不良ノズルを特定し、その情報を使って元の画像データを変更するという処理を行うことで、画像欠陥を補正します。

意図的に発生させたスジを画像補正した例

(左)意図的に多数のノズルの吐出をOFFにし、スジを再現
(右)画像補正を行うことで、スジ欠陥が見えなくなる

こうした画像補正技術は、ノズルの状態自体を改善することはありませんが、ユーザーの目に見える画像品質を改善することが可能で、桁違いに多くのノズルを持つ高解像度シングルパス・インクジェットプリンターでは大きな威力を発揮します。

画像検査の結果から有用な情報を導き出しプリンターの改善につなげたり、画像欠陥を確実に撲滅できる水準の画像補正を行ったりするためには、高度な画像検知・補正技術、データ解析技術と、それらの運用経験が必要となります。

富士フイルムでは、Jet Pressの開発経験で得た知見・技術を整理し、高解像度シングルパス・インクジェットプリンター開発に取り組む方にご利用いただける、インクジェットコンポーネント製品「Samba JPC」を開発しました。「Samba JPC」を通じて私たちの知見・技術を活用いただき、御社の開発を効率化することで、プリンティングのデジタル化を一緒にリードし、インクジェット市場の拡大と発展に寄与したいと考えています。