富士フイルムが1200×1200dpiのシングルパス・インクジェットプリンター「Jet Press」の商品化を通じて培った、高解像度インクジェットプリンター開発の「虎の巻」を特別に公開します。
- 画像補正の第一歩は「適切な画像検査」の実現
- プリンターの状態を正確に解析するには読取性能の高さが重要
- 照明のバラつきを抑えることが正しい読み取りにつながる
お客さまにプリンターを満足して使っていただくためには、導入直後の画質をできるだけ長い期間にわたって保ち、稼働率を上げることが重要な課題です。
数万から数十万のノズルがある高解像度シングルパスインクジェットプリンターでは、着弾位置が悪いノズルがひとつでも出てくると印刷上のスジになり、画質不良となってしまうケースもあります。
Jet Press開発では、これに対処し高い画質を安定して実現すべく、開発当初から「画像補正技術」の構築に多くの労力と時間を掛けてきました。そこから得た経験を踏まえ、今回は精度の高い補正を行うために重要な“3つのポイント”と、重要課題である「照明特性の均一化」についてご紹介します。
そもそも、安定して高品質な画像補正を実施するためには、以下の3つを実現することが必要です。
- 印刷物やプリンターの状態を正しく、定量的に把握する
- 画像検査結果から補正量を算出する
- 補正量を正しくプリンターに適用する
これらの項目のどれか一つでも欠けると、期待する画像補正の性能が得られなくなってしまいます。
画像補正に関してはアルゴリズムが議論の対象になりがちです。これは上記「3つのポイント」の「2.」に相当します。しかしそれ以前に、「1.」の“印刷物やプリンターの状態を正しく、定量的に把握すること”、すなわち「適切な画像検査」の実現が不可欠です。ここでいう「画像検査」とは、印刷物をスキャナーで読み取り、その読取画像からプリンターの状態を解析・検査することです。
適切な画像検査のために、以下を実現する必要があると認識している方は多いと思います。
- 高品質な読取画像を安定して取得する
- 読取画像から状態を正しく読み取る
- 基材やインクなどの印刷条件を正しく処理に組み込む
しかし、その際に「照明特性の均一化」も重要な課題であることはご存知でしょうか?
下の画像をご覧ください。照明特性にバラつきがあると、誤った状態把握をしてしまい、結果的に補正が効かない、あるいは画質が悪化してしまうケースも生じます。
特に読取装置の照明については、高い均一性が求められる上に、読み取るサンプル幅以上の照明幅が求められます。そのため、いくつかの照明素子をつなぎ合わせたり、複数の照明ユニットを千鳥配置にすることで、広い幅を確保するなどの対策が考えられますが、照明素子や照明ユニットの継ぎ目において、照明特性のバラつきが発生してしまいます。
照明特性のバラつきを防ぐには、以下のような対策が必要です。
- 可能な限り継ぎ目のない、一様な照明を用意する
- 継ぎ目がある場合は、照明素子間の距離を一定に保つ
- 照明素子の位置などの影響を最小化するために光を拡散させる、もしくは照射角の広い照明を用いる
しかし、ただ継ぎ目のない長尺照明を用いただけでは、基材や検知したいスジムラなどの欠陥によって光の反射特性が異なるために、読取性能が不十分になってしまうこともあります。こういった場合、照明の照射角度を装置に合わせて最適化するなどの調整が不可欠ですが、その際、搬送バラつき影響の受けやすさなども考慮しながら最適な角度を見つけ出す必要があり、かなりの試行錯誤が必要となります。
Jet Pressの開発では、実験を重ね、搬送バラつきだけでなく、基材しわなどの基材表面状態の影響を受けにくく、かつスジムラは見えやすい角度に最適化してきました。
富士フイルムでは、この経験で得た知見・技術を整理し、高解像度シングルパスインクジェットプリンター開発に取り組む方にご利用いただける、インクジェットコンポーネント製品「Samba JPC」を開発しました。「Samba JPC」を通じて私たちの知見・技術を活用いただき、御社の開発を効率化することで、プリンティングのデジタル化を一緒にリードし、インクジェット市場の拡大と発展に寄与したいと考えています。