抗体医薬品は副作用が少なく高い効能が期待できることから、大きな市場成長が見込まれています。抗体医薬品は、抗体を産むように遺伝子改変された細胞を、細胞の栄養分である培地中で培養し、得られた培養液から有用な抗体医薬品だけを抜き取る(精製)ことで得られます。
これまで、培養槽で一定期間培養した後、複数の精製処理を逐次に行うバッチ生産方式が主流でしたが、近年、培養と精製を並行稼働し、抗体を連続回収する連続生産方式が注目されています(図1)。
連続生産方式は、培養槽に蓄積する細胞の老廃物を連続的に排出するため、細胞の培養環境を改善でき、細胞をより高密度かつ長期に培養しながら、高品質の抗体医薬品を得られることが特長です。さらに、培養と精製の両方を連続化することで生産性が向上し、コスト削減にも高い効果が得られます。連続生産は高い生産性と品質、低コストを兼ね備えた新しい生産システムです。
- 細胞を高密度かつ長期に培養可能→高い生産性
- 高品質の抗体が得られる
- 培養・精製の一貫連続化による生産性向上とそれによる低コスト化
図1 抗体医薬品の連続生産とバッチ生産(従来)の比較
当社は連続生産MaruXTMプロセスを有しており、(1)高い生産性を持つ当社独自の細胞株ApolloXTM、(2)高性能な連続培養専用培地(培地事業を行うグループ会社のFUJIFILM Irvine Scientific社にて製造)、(3)高密度な細胞に高効率で酸素を供給する培養プロセス、(4)細胞と抗体を長期に安定的に分離する膜分離プロセス、(5)当社独自で開発した自動連続精製装置SymphonXTMの5つの技術を基に(図2)、500Lプラントでの実証試験に成功しています(図3)。量産化にむけたスケールアップ技術開発を行うとともに、当社グループ会社でバイオCDMO事業を行うFUJIFILM Diosynth Biotechnologiesにて、cGMP生産機の導入を進めています。
図2 当社連続生産プロセスと保有技術
図3 500L実証プラント