院長の川瀬広大先生に、エコーの使用状況や動物用ワイヤレス超音波画像診断装置「iViz air V」の使用感、動物看護師がエコーを学ぶ際のポイントなどをうかがった。
日本獣医救急集中治療学会 理事長
2006年に、北海道内の開業獣医師、医療機械メーカーなどの協力の下で設立された北海道で初めての夜間専門の救急動物病院です。診療動物は、犬、猫、ウサギ、小鳥、ハムスター、一部のエキゾチック動物で、午後9時から翌午前5時まで年中無休で診療を行っています。
当院は夜間に診療を行っているので、他院に搬送して診療をお願いするということができません。そのため、どのような症例であっても“最後の砦”として積極的な救命救急治療を行い、少しでも動物の状態を良くして主治医の元へ返せるよう日々尽力しています。
救急集中治療領域の教育は、国内の大学ではほとんど行われておらず、全国の夜間動物病院からの情報発信が主体となっていました。そうした状況に課題を感じ、救急集中治療領域における学術情報の共有と専門性の追求を目的とする日本獣医救急集中治療学会を2018年に設立しました。現在は年次大会や症例検討などの活動を行うとともに、アメリカの救急集中治療学会との連携も進めています。
当院では、据え置き型とラップトップ型のエコーを使用しており、診察台の上での胸水や腹水の確認などのポイント・オブ・ケアでは機動性の高いラップトップ型、そこから先の詳細な計測や観察では高画質の据え置き型という使い方が多くなっています。
来院された段階で、ぐったりしている、動けないなど重症の可能性が高いケースでは、来院後2~3分以内に超音波検査を実施して体腔内の貯留液を確認します。その際、イヌは腹腔内出血が多いので膀胱や脾臓、肝臓の周囲を中心に、ネコは胸水が貯まっているケースが多いので胸部を中心に検査を行います。また、症例によっては心タンポナーデがないかも確認します。
病変の有無や状態をしっかりと確認できる“画質”が重要だと思います。また、エコーの有用性をさまざまな場面で活かすために、どこにでも持ち運べて、その場でパッと使える“機動性”も重視しています。加えて、穿刺をする際やラインを入れる際に、針やカテーテルが見えやすいことも選定条件の一つになると思います。
まず、小型でワイヤレスという点にとても魅力を感じました。そして、バッテリー内蔵プローブであるにも関わらず、実際に触ってみると非常に軽量なことに驚かされました。さらに、いつもポケットに入れておけるので、患者数が多い時でもエコーの待ち時間を気にする必要がなく、手軽に使えるところが良いと思いました。
コンベックスは、腹水・胸水の観察や中型犬以上のサイズで十分な画質が得られると感じました。リニアは、膀胱の観察、穿刺時の針やカテーテルの確認、小型犬や猫への使用に適していると思いました。
スマホベースなので、スマートフォンやタブレット端末に触り慣れていれば、すぐに操作できると思います。また、タ ップやスワイプなどの操作感も一般的なスマートフォンと変わらないので使いやすいと感じています。
通常のエコーはコードの長さが決まっているので、場面によってはコードの長さが足らなくて装置自体を動かしたり、動物の体勢を変えたりする必要がありますが、ワイヤレスであれば、より自由にプローブが当てられます。特に、多くの管や装置があるICUのケージの中に入り込んでエコーを当てる際は、ワイヤレスの強みが発揮されると同時に軽量性も活かされると感じました。
動画の保存時間が長い*ので、とりあえずすべての検査動画を保存しておいて、後から必要な部分だけを取り出すという使い方もできます。また、エコー画面とカメラ画面を同時に表示して1つの画像として保存できる“マルチビュー機能”を活用すれば、エコー画像とプローブを当てている手元の画像を同時に保存できるので、主治医との情報共有がしやすいと思いました。
iViz air Vは機動性が高いので、往診での持ち運びにも便利だと思います。また、“マルチビュー機能”を活用すれば、往診先から病院にいる先輩獣医師に相談する際もより多くの情報が共有でき、精度の高いアドバイスがもらいやすくなると思います。
現在、当院において動物看護師がエコーを使用することはありませんが、国家資格化に伴って動物看護師の医療行為の範囲がラインの確保や膀胱カテーテルの管理まで広がってくれば、エコーを使用する場面も出てくるのではないかと考えています。
その中で、動物のそばまで簡単に持って行ける“機動性”、すぐに使いこなせるスマホベースの“操作性”、獣医師への相談がしやすく教育面でもメリットがある“マルチビュー機能”などを備えたiViz air Vは、動物看護師の使用にも適したエコーだと思います。
エコーはただ見ているだけでは上達しないので、とにかく触って、とにかく当てることが重要です。おそらく動物看護師がエコーで見るのは、血管や膀胱などの特定の領域になると想定されるので、怖がらずにどんどん当てて、分からないことがあれば獣医師に相談する、それをしっかり繰り返していけば、「動物看護師がエコーを活用する未来」も遠くないと思います。
現在のスマートフォン以外に、より大きな画面のタブレットとも接続できるようになると良いと思います。また、エコーガイド下穿刺などをアシストする機能にも期待しています。
- 製品名
動物用超音波画像診断装置 iViz air V
- 販売名
FWU Vシリーズ
- 届出番号
3動薬第3032号
- 動物用超音波画像診断装置 「iViz air V」のカタログ
- 本記事のPDFデータ