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日本
光波をイメージした複数の色の波。

特定波長カット剤

特定の不要な波長(紫外線・可視光線・赤外線)を低着色でカット。幅広い用途に活用できる特定波長カット剤。

富士フイルムの技術、「特定波長カット剤」とは

私たちの身の回りには、さまざまな波長を持つ光が存在しています。 その中には、波長の短い「紫外線(UV光)」や、目に見える「可視光線(Vis光)」、波長の長い「赤外線(IR光)」があります。

「特定波長カット剤」は、これらの光の中で不要な成分のみをカットできます。

これらの特殊な素材は、富士フイルムが長年の写真の研究の中で培った技術を用いて開発されました。

特定波長カット剤は、紫外線領域をカットする「紫外線カット剤」と、可視光線領域をカットする「可視光線カット剤」、赤外線領域をカットする「赤外線カット剤」にわかれます。

製品の例

こちらに記載のない分野・用途でも対応可能なものがあります。お問い合わせください。

特定波長カットの効果と用途例

特定波長カットの効果と用途例を示した図。肌に対し、紫外線をカットして日焼けやしわを防止するためにはOUV-018、OUV-011が適用できます。赤外線をカットして、しわ・たるみを防止するのにはOIR-001、OIR-002が適用できます。 眼に対し、長波長紫外線領域をカットして白内障を予防するのには、OUV-015、OUV-018が適用でき、ブルーライト領域をカットして光障害を防止するのには、OVS-001、OVS-002、OVS-008が適用できます。また、500nmから600nmをカットしてまぶしさを抑制するためには、OVS-005が適用できます。素材の保護に対しては、紫外線をカットすることで樹脂や偏光板の劣化を抑制するためにOUV-015やOUV-018を適用できます。

透過スペクトル(溶液)

紫外線カット剤「OUV-011」の透過スペクトル。肌のしわの原因となる370nmから400nm付近の紫外線領域の透過率がほぼ0%で、400nmから460nm程度にかけて、透過率100%付近まで上昇している。

透過スペクトル(溶液)

紫外線カット剤「OUV-015」「OUV-018」の透過スペクトル。「OUV-015」「OVS-018」は、網膜黄斑部への影響が特に大きい、400nmから420nm付近の光を透過率0%付近までカットしています。

透過スペクトル(溶液)

可視光線カット剤「OVS-002」「OVS-005」「OVS-008」の透過スペクトル。「OVS-002」「OVS-008」は網膜黄斑部に影響数400nmから500nm付近の光を全体的に吸収しています。「OVS-005」は比視感度が高い555nm付近の光を吸収しています。

可視光線カット剤「OVS-002」「OVS-005」「OVS-008」の透過スペクトル。「OVS-002」「OVS-008」は網膜黄斑部に影響数400nmから500nm付近の光を全体的に吸収しています。「OVS-005」は比視感度が高い555nm付近の光を吸収しています。

B. 555nm付近の光は比視感度が高く、まぶしさを感じさせます。

樹脂の劣化抑制

樹脂が劣化する(黄変、ボロボロになる)原因のひとつに、太陽光などに含まれる紫外線があります。
紫外線の強いエネルギーを吸収した分子が励起状態を経てラジカルが発生し、「自動酸化」反応などの化学反応によって、樹脂の劣化が促進されていきます。
紫外線(UV)領域に光の吸収が少ない透明樹脂でも、樹脂中に存在する少量の触媒や添加剤、成形時に生じた酸化物など、微量の不純物による光の吸収が要因となり、自動酸化反応が開始することがあります。

紫外線吸収剤は、このメカニズムのうち、紫外線が樹脂に侵入することを防ぎ、劣化を抑制します。

自動酸化のメカニズム

自動酸化のメカニズムを説明した図。紫外線のエネルギーによってポリマーにラジカルが発生して酸素と反応し、連鎖反応によって劣化を促進していきます。「紫外線吸収剤」はこのポリマーの劣化原因である紫外線の樹脂への侵入を防ぎます。

加工への応用(樹脂のレーザー溶着)

レーザー溶着は、高エネルギー密度のレーザービームを使用して、溶着する部品の接合面を溶かし、溶融した材料同士を接合する溶着方法です。

接着剤を使うことなく樹脂同士を溶着することができ、また、超音波溶着のように粉塵が発生しないため、クリーンな溶着を行いたい場合に向いています。

一般的なレーザー溶着の場合、赤外線レーザーを透過する「透明樹脂」と、そのエネルギーを吸収して発熱する「黒色樹脂」を組み合わせ、その界面を溶融させることによって樹脂同士を強固に接着させます。
片方の樹脂は赤外線を吸収する必要があるため、溶着できる樹脂には制約があります。

一方、黒色樹脂の代わりに、「透明樹脂」同士の界面に赤外線吸収剤を塗布すると、同様な原理で無色透明な樹脂同士を溶着することができます。富士フイルム製の赤外線吸収剤は、レーザーを照射すると無色に変化し、外観に影響を与えません。

赤外線吸収剤を用いたレーザー溶着(断面図)

赤外線吸収剤を用いたレーザー溶着の原理を説明した図。富士フイルム製赤外線吸収剤を塗布した透明樹脂の上に、もう1枚の透明樹脂を重ね、上方からレーザーを照射します。透明樹脂同士の界面で発熱し、樹脂を溶融することで、2枚の透明樹脂が溶着します。

溶着した透明樹脂 (提供:日本エマソン株式会社 ブランソン事業本部)

赤外線レーザー溶着機メーカーの日本エマソンとともに透明樹脂溶着の検討を実施しています。

溶着前

溶着前の透明樹脂部材の写真。自動車のヘッドライトを模した、無色透明のカップ状の成形体と皿状の成形体が並んでいる。
溶着前の透明樹脂部材の写真。自動車のヘッドライトを模した、無色透明のカップ状の成形体と皿状の成形体が重ねられている。
溶着前の透明樹脂部材を拡大した写真。自動車のヘッドライトを模した、無色透明のカップ状の成形体と皿状の成形体が重ねられており、2つの成形体が重なる部分には、ヘイズが生じている。

赤線で囲まれた部分に富士フイルム製赤外線吸収剤を塗布し、日本エマソン製レーザー装置で赤外線レーザーを照射。

溶着後

溶着後の透明樹脂部材の写真。自動車のヘッドライトを模した、無色透明のカップ状の成形体と皿状の成形体が重ねられ、一体化している。
溶着後の透明樹脂部材の写真。自動車のヘッドライトを模した、無色透明のカップ状の成形体と皿状の成形体が重ねられ、一体化している。
溶着後の透明樹脂部材を拡大した写真。自動車のヘッドライトを模した、無色透明のカップ状の成形体と皿状の成形体が重ねられており、2つの成形体を溶着した箇所は無色透明になっている。

レーザー照射後、該当部分の樹脂が溶着して一体化。溶着部は無色透明化し、ヘイズも少ない。

レーザー溶着の特長・メリット

  • 溶着時に粉塵が発生しない
  • 振動が発生しないため内部部品へのダメージがない
  • 自動化が容易
  • 複雑な3D形状への対応が可能*2
  • 多数個取りや大型部品への対応が可能*2
  • *2 ブランソンの一括照射レーザー溶着機特長

推奨分野

透明樹脂同士を溶着できる点と、上記の特長・メリットから、以下のような分野での活用が期待できます。