サイバーセキュリティーとは?攻撃の種類や対策をわかりやすく解説

2025.03.11

サイバーセキュリティーとは?
攻撃の種類や対策をわかりやすく解説

サイバーセキュリティーの保証されたPC

インターネットが私たちの生活に欠かせないものとなった今、サイバー攻撃の脅威は年々深刻化しています。2023年には日本国内でランサムウェア被害が過去最多を記録し、個人や企業を問わず誰もが標的となり得る状況です。

本記事では、サイバーセキュリティーの基本から具体的な攻撃手法、効果的な対策まで、初心者にもわかりやすく解説していきます。

サイバーセキュリティーの定義と目的

サイバーセキュリティーとは、サイバー空間における脅威から、情報システムや重要なデータを守るための一連の取り組みです。

デジタル化が進む現代社会において、企業の重要な資産の多くはデジタルデータとして保管されています。顧客情報、製品設計図、財務データなど、これらのデジタルアセットは企業活動の根幹を支えています。

情報セキュリティーとの違い

情報セキュリティーとサイバーセキュリティーは、密接に関連しながらも異なる概念です。情報セキュリティーは、紙の文書や口頭でのコミュニケーションなど、あらゆる形態の情報を保護対象としています。一方、サイバーセキュリティーは、デジタル空間における脅威に特化しています。

現代では、フィジカルとデジタルの境界は急速に曖昧になっています。製造現場の制御システムや、ビルの入退室管理など、物理的な設備も、ネットワークに接続される時代となりました。このため、包括的なセキュリティー対策には、両者の視点が不可欠です。

企業におけるサイバーセキュリティーの必要性

総務省の『令和5年版 情報通信白書』によると、サイバー攻撃による企業の平均損害額は年々増加傾向にあります。サイバーセキュリティーに関する問題が引き起こす経済的損失は、日本国内でも1社当たり数億円の損失が生じるものと算出されています。 経済的損失には、システムの復旧費用だけでなく、事業停止による機会損失、賠償金、さらには信用失墜による長期的な収益への影響も含まれます。

法規制の観点からも、サイバーセキュリティー対策は必須となっています。個人情報保護法や不正アクセス禁止法など、関連法規の要求事項を満たすためには、適切なセキュリティー対策が不可欠です。

AIや5Gがもたらす新たなリスクとセキュリティーの課題

技術革新がもたらすセキュリティーリスクと課題について、AIと5Gの観点から詳しく説明します。

AIの普及に伴い、これを利用したサイバー攻撃も高度化しています。攻撃者はAIを活用することで、攻撃の規模、速度、効率を大幅に向上させています。特に深刻なのは、AIによって脆弱性の特定や悪用が迅速化され、新種のマルウェア開発が加速していることです。さらに、ランサムウェアがAIを活用して防御システムを回避する事例も増加しています。

一方、5Gネットワークの展開は、セキュリティー環境に大きな変化をもたらしています。最も顕著な影響は攻撃対象領域の劇的な拡大です。IoTデバイスの大規模な接続により、システム全体の脆弱性が増加しています。特にネットワークスライシングの導入は、新たな脆弱性を生み出す可能性があります。

ソフトウェアベースのネットワーク管理への移行は、従来とは異なる脅威をもたらしています。新技術による未知の脆弱性、IoTデバイスの接続性に関する問題、組み込みセキュリティーの不足など、多岐にわたる課題が存在します。特にデータ保護とDDoS攻撃のリスクは、5G環境下でより深刻化しています。
AIと5Gの組み合わせは、より複雑な脅威を生み出しています。5Gの高速・大容量通信能力とAIの高度な分析能力が結びつくことで、攻撃はより洗練され、自律的になっています。これらの攻撃は高いステルス性を持ち、従来の検知手法では発見が困難になっています。

3要素

サイバーセキュリティーの基本となる3要素は、以下の通りです。

  • 機密性(Confidentiality):許可された人だけが情報にアクセスできる状態を保つこと
  • 完全性(Integrity):情報が改ざんされていない正確な状態を維持すること
  • 可用性(Availability):必要な時に情報やシステムを利用できる状態を確保すること

これら3要素が破られた場合、深刻な被害が発生します。たとえば、顧客データベースへの不正アクセス(機密性の侵害)、決済システムの改ざん(完全性の侵害)、基幹システムの停止(可用性の侵害)などが考えられます。

基本的な用語

サイバーセキュリティーを理解する上で重要な用語について、代表的な攻撃手法とその特徴を詳しく解説します。

  • マルウェア
    マルウェアは「悪意のあるソフトウェア(Malicious Software)」の総称です。代表的なものとして、コンピューターウイルス、スパイウェア、ランサムウェア、トロイの木馬などが挙げられます。
    感染経路は多岐にわたり、不正なウェブサイトへのアクセス、不審な添付ファイルの開封、USBメモリを介した感染などがあります。マルウェアに感染すると、個人情報や機密情報の窃取、システムの破壊、他のコンピューターへの感染拡大など、深刻な被害が発生する可能性があります。
    特に近年は、複数の機能を組み合わせた高度なマルウェアが増加しており、従来の対策では検知が困難なケースも報告されています。
  • フィッシング
    フィッシングは、実在する組織を巧妙に装って個人情報を詐取する手法です。攻撃者は、金融機関やECサイト、SNSなど、実在する組織の正規メールやウェブサイトを精巧に模倣します。
    メールやSMS、メッセージアプリを通じて、アカウント停止や不正アクセスの警告などを装い、偽のログイン画面に誘導します。そこでID・パスワードを入力させ、それらの情報を窃取するのが典型的な手口です。
    近年は、特定の組織や個人を標的とした「スピアフィッシング」も増加しています。攻撃者は事前に標的の情報を収集し、より信頼性の高い偽装を行うため、被害の防止が困難になっています。
  • DDoS攻撃
    DDoS攻撃(Distributed Denial of Service attack)は、複数の攻撃元から大量のアクセスを集中させ、標的のサーバーやネットワークに過剰な負荷をかけることで、サービスを利用できない状態にする攻撃手法です。
    企業のウェブサイトやオンラインサービス、重要インフラのシステムなどが標的となることが多く、事業継続に重大な影響を及ぼします。
    攻撃の種類も多様化しており、単純な大量アクセスだけでなく、特定の脆弱性を突いた高度な攻撃や、複数の手法を組み合わせた攻撃なども確認されています。
    また、マルウェアに感染した多数のコンピューターを同時に利用する「ボットネット」による攻撃も脅威となっています。
サイバーセキュリティーを攻撃から守る

ランサムウェア攻撃

ランサムウェアは、システムやデータを暗号化して身代金を要求する悪質なマルウェアです。近年は、データを暗号化するだけでなく、機密情報の流出をちらつかせて二重の脅迫を行う手法が増加しています。

攻撃者は、セキュリティーの脆弱な部分を探り、リモートデスクトップの脆弱性や、フィッシングメールなどさまざまな侵入経路を使用します。一度感染すると、システムの復旧に多大な時間と費用がかかり、事業継続に深刻な影響を及ぼします。

OT環境におけるセキュリティー問題

OT(Operational Technology)環境は、工場の制御システムや設備機器の運用を担う重要なインフラです。従来、OT環境は外部ネットワークから独立していましたが、IoT化やDXの進展により、IT環境との接続が進んでいます。

この変化により、OT環境特有のセキュリティー課題が浮上しています。制御システムの多くは24時間365日の稼働が求められるため、セキュリティーパッチの適用が困難です。また、製造装置には旧式のOSや通信プロトコルが使用されている場合も多く、現代のセキュリティー対策との両立が課題となっています。

クラウドセキュリティーの重要性

クラウドサービスの利用拡大に伴い、クラウド特有のセキュリティーリスクへの対応が不可欠となっています。

クラウド事業者は、インフラストラクチャーのセキュリティーを担保しますが、データの管理やアクセス制御は利用企業の責任となります。特に以下の点に注意が必要です。

  • アクセス権限の適切な設定
  • データの暗号化
  • セキュリティー設定の定期的な見直し
  • クラウドサービス間連携時のセキュリティー確保

クラウドセキュリティーは、クラウドサービスプロバイダー(CSP)と利用企業の間で責任を共有する「共有責任モデル」に基づいて実施されます。このモデルでは、CSPがクラウドの安全性を担保し、利用企業がクラウド内の安全性に責任を持つという明確な役割分担が定められています。

CSPは物理的インフラストラクチャーの保護から仮想化レイヤーの保守、さらにサービスの可用性と信頼性の確保まで、基盤となる部分の責任を担います。一方、利用企業はデータの保護と管理、アクセス権限の設定、アプリケーションのセキュリティー、そしてコンプライアンスへの対応という、より上位レイヤーの安全性確保を担当します。

クラウドセキュリティーの実装において、まず重要となるのがアクセス権限の適切な設定です。最小権限の原則に基づく権限付与を行い、多要素認証を導入することで、不正アクセスのリスクを最小限に抑えることができます。

また、定期的な権限の見直しも欠かせません。データ保護については、保存データと通信データの両方において暗号化を実施し、暗号化キーを適切に管理する必要があります。さらに、データのバックアップと復旧計画を策定し、不測の事態に備えることも重要です。

これらの対策を総合的に実装することで、クラウド環境における効果的なセキュリティー体制を構築することができます。ただし、クラウドセキュリティーは静的なものではなく、新たな脅威の出現や技術の進化に応じて、常に見直しと改善を行っていく必要があります。

サイバーセキュリティー動向について、主要な被害事例と脅威を説明します。

大手企業Aでは、大規模な情報漏えいが発生しています。金銭的損害も出ています。大手企業Bでは、ランサムウェア被害により、収益が減少しました。

ランサムウェアは、データの暗号化だけでなく、情報窃取と公開を人質にする「ノーウェアランサム攻撃」も増加しています。

クラウドのセキュリティーを管理するイメージ

サイバーセキュリティー対策の9か条

内閣サイバーセキュリティーセンター(NISC)が定める「サイバーセキュリティー対策9か条」に沿って、基本的な対策を実施することが重要です。主な対策は以下の通りです。

  • OSやソフトウェアの最新化
  • アンチウイルスソフトの導入
  • 強固なパスワード設定
  • 多要素認証の導入
  • 重要データのバックアップ
  • 通信の暗号化
  • アクセス権限の適切な管理
  • セキュリティー教育の実施
  • インシデント対応計画の策定

中小企業においては、以下の点に留意して対策を進めることが重要です。

  • 自社の事業特性とリスクを考慮した優先順位付け
  • 段階的な導入による予算と人的リソースの最適配分
  • 外部専門家の活用による効率的な実装
  • クラウドサービスの活用による運用負荷の軽減

これらの対策は、一度導入して終わりではなく、定期的な見直しと更新が必要です。特に中小企業では、できることから着実に実施し、徐々にセキュリティーレベルを向上させていく アプローチ が効果的です。

技術的対策

効果的なセキュリティー対策には、多層防御の考え方が重要です。以下の対策を組み合わせて実施します。

  • ファイアウォールによる不正通信の遮断
  • IDS(不正侵入検知システム)/IPS(不正侵入防止システム)による不正アクセスの検知と防御
  • EDR(Endpoint Detection and Response)によるエンドポイントの保護
  • セキュリティーログの収集と分析
  • 暗号化によるデータ保護

新しい技術の導入時には、セキュリティー評価を実施し、既存システムとの整合性を確認することが重要です。

人的対策

技術的対策だけでは十分なセキュリティーは確保できません。従業員一人ひとりのセキュリティー意識向上が不可欠です。効果的なセキュリティー教育には、以下の要素が重要です。

  • 定期的な研修の実施
  • 実践的な訓練(標的型メール訓練など)
  • インシデント対応手順の周知
  • セキュリティーポリシーの理解促進

セキュリティー文化を組織に根付かせるためには、単なる規則の遵守を超えた取り組みが必要です。

経営層が率先してセキュリティーの重要性を発信し、定期的なメッセージを発することで、組織全体の意識向上につながります。セキュリティー投資への理解も深まり、必要な予算確保も容易になります。

セキュリティー対策を「面倒な規制」ではなく、「事業継続の基盤」として位置づけることで、従業員の自発的な参加を促すことができます。優れた取り組みを表彰する制度を設けている企業では、セキュリティー意識が大きく向上しています。

成功事例を紹介します。製造業A社は、月次のセキュリティーニュースレターを発行し、実際のインシデント事例や対策のベストプラクティスを共有することで、従業員の関心を継続的に維持することに成功しました。

サービス業B社は、部門ごとにセキュリティーチャンピオンを選出し、日常的なセキュリティー活動の推進役として活動させることで、現場レベルでのセキュリティー文化の定着に成功しました。チャンピオンには特別な研修を提供し、部門内での相談窓口としても機能させています。

ゼロトラストセキュリティーとは?

ゼロトラストセキュリティーは「信頼しない、常に検証する」を基本原則とする新しいセキュリティーモデルです。従来の「境界防御」モデルとは異なり、社内ネットワークであっても信頼せず、すべてのアクセスを検証します。

セキュリティーモデルの導入により、多くのメリットが得られます。昨今増加するリモートワーク環境において、場所を問わない安全なアクセスが実現できます。ユーザーやデバイスごとにきめ細かなアクセス制御を行うことで、セキュリティーレベルが向上します。内部からの不正アクセスに対するリスクも大幅に低減できます。

一方、導入に際してはいくつかの課題があります。既存システムとの互換性を確保する必要があり、場合によっては大規模な改修が必要となることもあります。すべてのアクセスを検証するため、システムの運用負荷が増加します。新たな認証基盤の構築やセキュリティーツールの導入など、相応の投資が必要となります。

上記課題を考慮し、多くの組織では段階的な導入アプローチを採用しています。特に重要性の高いシステムや、新規に構築するシステムから適用を開始し、範囲を徐々に拡大していく方法が効果的です。計画的に導入を進めることで、組織全体のセキュリティーレベルを着実に向上させることができます。

セキュリティーログとレポートの活用

セキュリティーログの適切な収集と分析は、脅威の早期発見と対応に不可欠です。効果的なログ管理を行うには、組織にとって重要なログを特定し、法令や規制に基づいた適切な保存期間を設定する必要があります。システムの異常や不正アクセスを即座に検知するため、リアルタイムでのモニタリングを実施します。

システムの正常な状態を把握した上で、不審な動作や想定外のアクセスを検知するためのルールを設定します。これらのルールは、過去のインシデント事例や最新の脅威情報を反映して定期的に見直します。収集したログは定期的に分析し、セキュリティー状況を可視化したレポートを作成することで、対策の効果測定や改善点の特定に活用できます。

一方、経営層への報告においては、組織全体のセキュリティー状況を把握できる指標を活用することが重要です。具体的には、セキュリティーインシデントの発生件数とその対応状況、実施したセキュリティー投資の効果測定結果を報告します。

また、現在のシステムが抱えるリスクの評価結果や、各種法令・規制へのコンプライアンス遵守状況についても定期的に報告することで、経営層が適切な判断を行うための材料となります。これらの情報は、次期のセキュリティー投資の計画立案や、事業継続計画の見直しにも活用できます。

定期的な報告に加えて、重大なインシデントが発生した場合や、新たな脅威が確認された場合には、速やかに経営層へ報告し、対応方針を決定することが求められます。このような体制を整備することで、組織全体でセキュリティーリスクに対する適切な管理が可能となります。

デジタルトランスフォーメーション(DX)の加速により、サイバーセキュリティーは企業の事業継続に直結する重要課題となっています。AIや5G、クラウドサービスの普及は、ビジネスに革新的な可能性をもたらす一方で、新たなセキュリティーリスクを生み出しています。

効果的なセキュリティー対策には、技術、プロセス、人材の三位一体のアプローチが不可欠です。特に、経営層が主導する全社的な取り組みとして推進し、セキュリティー投資を事業継続のための重要な投資として位置づけることが求められます。

今後、サイバー攻撃はさらに高度化・巧妙化することが予想されます。組織は最新の脅威動向を把握し、対策を継続的に更新していく必要があります。適切な投資と継続的な改善により、強固なセキュリティー体制を構築することが、持続可能な事業発展への鍵となるでしょう。

セキュリティー対策の導入・運用には専門的な知識と多大な工数が必要です。そこで、セキュリティーサービスの活用が有効な選択肢となります。

富士フイルムビジネスイノベーションでは、企業のセキュリティー課題に対して包括的なソリューションを提供しています。特に中堅・中小企業向けにセキュリティー性を確保したネットワーク管理を実現するための様々なサービスを展開しています。

IT Expert Servicesでは、IT資産の運用管理を通じて、常に最新のセキュリティーパッチが適用された状態を維持します。これにより、脆弱性を最小限に抑え、サイバー攻撃のリスクを低減できます。

また、beatは、ネットワークのゲートウェイセキュリティー対策を提供します。運用負荷を軽減しながら、効果的なセキュリティー対策を実現できます。

それぞれの組織や業務の状況に応じて、適切なセキュリティーサービスを選択・導入していくことが、セキュリティーレベルを高めるにあたり重要となっています。