2025.03.24
セクショナリズムとは?
組織内の分断が起こる原因とその解決方法を解説

「他部署に協力しても自身の成績には関係ないし……」
「各部署の上司同士が仲良くないから仕事を頼みにくい……」
「私の部署はいつも忙しいのに、あの部署は何をしているのか分からず、暇そうに見える……」
このような思いを抱える人は少なくないはずです。
組織内で部署(セクション)間に対立や分断が生じることを「セクショナリズム」といいます。
この問題が発生する原因を探り、業務効率化やイノベーションを阻害しないための解決策について詳しく解説します。
セクショナリズムとは?
セクショナリズムの概要を解説します。
分断された組織
セクショナリズムは部署同士のコミュニケーションがなくなり、企業の統制が取れず、業務の進捗が妨げられていることをいいます。
事業が大きくなり他部署の状況が見えにくくなると、営業部と企画部がコミュニケーションを取りにくい状況や、経理部と総務部がお互いに無関心になってしまうような状況が発生します。その結果、企業全体の戦略が機能せず、効率や生産性が低下します。
セクショナリズムが強まることで、組織全体のパフォーマンスに悪影響を及ぼし、業務効率がさらに悪化してしまいます。
「縦割り組織」との関係性
似たような言葉に「縦割り組織」があります。縦割り組織が悪化すると横のつながりがなくなり、セクショナリズムが生まれます。
縦割り組織とは、会社の部門が業務別にそれぞれ独立して機能している組織のことを指します。トップダウンの指示が明確で、業務の専門性も高まるため、一見効率的に思えます。
しかし、最近ではこの縦割り組織がもたらす分断が問題視されるようになりました。具体的には、部署間のコミュニケーションが不足し、横の連携が取れなくなることがあります。このような状態が続くと、会社全体の士気が下がり、生産性にも悪影響を及ぼす場合があります。

行政でも縦割り組織打破を掲げ、デジタル庁を設置するなど取り組みを続けています。今後、企業でも横の連携を強化していくことが課題であり、最重要課題であることが伺えます。
セクショナリズムの代表的な4つのタイプ(無関心型・非協力型・排他型・対立型)
セクショナリズムには4つの代表的なタイプがあります。これらのタイプが混ざり合うと、会社はますます混乱してしまい、業務効率が低下します。
それぞれ見ていきましょう。
1. 無関心型
他の部署に対して関心がない状態です。「あの部門が何をしているかなんて知らないし、興味もない」という態度がこれに該当します。部署間の情報共有がなされない原因のひとつです。
2. 非協力型
他の部署と協力しない態度を示すタイプです。「あの部署とは一緒に仕事したくない」という姿勢です。部署間の壁が高くなると、会社全体のパフォーマンスも下がります。
3. 排他型
自分たちの部署以外を排他するタイプです。「うちの部署のやり方が楽だから、他は入ってこないでほしい」という姿勢です。これでは、企業の一体感が生まれません。
4. 対立型
部署同士が対立をしてしまう状態です。「あの部署は嫌いだ」という関係性です。協力関係を築くことが難しくなり、業務に悪影響を及ぼします。
セクショナリズムが起こる理由とは?
次に、なぜセクショナリズムが起こるのか、その理由を考察してみましょう。
組織の成長や変化
事業が大きくなると、各部署が専門化し、それぞれの目標や業務が重視されるようになります。これは大企業に限らず、中小企業でも同様です。組織が成長・変化する過程でセクショナリズムが発生する可能性があるため、注意が必要です。
他部署への理解不足
自分の部署の目標や課題に集中するあまり、他の部門が何をしているのか知る機会が減ってしまいます。その結果、協力する体制が生まれにくくなり次第に無関心や対立が生じることがあります。これにより、全社的なコミュニケーションや連携が不足し、組織全体の効率や生産性に悪影響を及ぼすことがあります。
企業全体の方向性の不統一
企業全体の目標や価値観が十分に浸透していない場合にも発生します。そうした状況が発生すると、各組織・各部署は独自の目標に従うようになるので、社内の連携や協力が難しくなります。これにより、企業全体の戦略が機能せず、セクショナリズムが加速されます。
個別成果を重視した人事評価制度
評価制度が個人や部署ごとの成果を重視しすぎると、他の部署との協力や情報共有がおろそかになります。特に、部門ごとに評価される制度では、協力意識が薄れやすい傾向にあります。この結果、各部署は自分たちの目標達成に集中し、全社的な連携が困難になります。
セクショナリズムが企業に及ぼす影響とは?
では、セクショナリズムが発生すると企業にどのような影響があるのでしょうか?

情報が適切に共有されない
セクショナリズムが存在する組織では、部署間での情報伝達ができていないケースが多く見られます。これにより重要なデータや知見が必要な場所に届かないことがあり、業務の遂行に支障をきたします。
例えば、新しいプロジェクトや戦略の情報が特定の部署にしか伝わらなかったり、問題が発生した際に他の部署に伝わらないために適切な対策が取れなかったりします。こうした横の連携がなくなると、企業全体の組織としてのパフォーマンスに悪影響を与えます。
生産性の低下
各部署が独自の目標や方針を重視し過ぎると、組織全体のリソースが最大限活用できません。
例えば、同じ情報やデータを複数の部署が別々に収集・管理することで時間とコストの無駄が生じたり、別々の部署が似たような業務を重複して行ったりすることがあります。また、連携不足によりプロジェクトがスムーズに進行せず、期限に遅れたり、品質に問題が生じたりすることもあります。
これにより、組織全体の生産性や対応力が低下し、顧客満足度や収益にも悪影響を及ぼします。
モチベーションの低下
セクショナリズムが強い組織では、社員が孤立しやすくなり他部署との関わりが少なくなります。社員が自己の部署だけに閉じこもることで、さまざまな視野を持つ機会が減り、成長のチャンスが制限されます。
また、情報が正しく共有されないことで誤解や不信感が生まれやすく、チーム全体の士気が低下します。コミュニケーションが円滑でない環境では社員は不安やストレスを感じやすくなり、最終的には仕事に対する意欲や情熱が失われます。モチベーションの低下は、離職率の増加や人材の定着の難しさにもつながります。
不祥事や社会問題への発展
セクショナリズムが悪化すると、組織全体としてのガバナンスが弱体化し、不適切な行動や判断が見過ごされるリスクが高まります。情報が閉鎖的に管理されることで、不正行為やミスの発見が遅れ、対応が後手に回るケースが増えます。これによって生じる不祥事は、企業の信用やブランド価値を失うリスクがあります。
また、問題が公になることで、消費者や社会からの信頼を失い、大きな社会問題へと発展する可能性もあります。不祥事の対処には多大な時間と費用がかかり、最悪の場合、企業の存続が危ぶまれる結果にもなりかねません。
セクショナリズムの解消方法とは?
セクショナリズムの解決策を解説していきます。
異動やジョブローテーションの活用
適切な異動やジョブローテーションを導入することが挙げられます。
異動とジョブローテーションは少し意味が違います。異動は、企業全体の生産性向上を目指し、適材適所で人材を配置することを意味します。一方、ジョブローテーションは社員がさまざまな部署で経験を積むことで、個々のスキルや視野を広げる取り組みです。
これにより、社員は他部署の業務や苦労に対する理解を深めることができます。異なる部署での経験を通じて、各部署の視点や知識を身につけることができ、その結果として部署間の連携が強化されます。さらに、いろいろな部署の経験を持つ社員が増えることで組織全体が柔軟になり、生産性の向上にもつながります。
ITツールで情報共有を促進
人事異動やジョブローテーションを盛んに行うと、個々の業務のノウハウが次世代に伝わりにくくなるリスクもあります。これを避けるために、ITツールを活用して情報共有を行うことが重要です。
富士フイルムビジネスイノベーションの「FUJIFUILM IWpro」を活用することで、組織内の情報や知見を一元管理し、全員で共有できます。属人化されたノウハウや知見をデータ化することで、異動やジョブローテーションのハードルが低くなります。
評価制度の改善
部署間の協力や連携を評価基準に入れることで、社員が積極的に交流イベントやプロジェクトに参加できるようになります。
部署ごとに評価しなければならない場合、評価基準を全社で確認できるようにし、誰がどのような仕事をしているかを可視化することも重要です。社員が安心して部署横断的な活動に参加できる環境を構築します。
また、社員同士が気軽に交流できるカジュアルなコミュニティーを築くことも目指します。このような取り組みにより、全社員が積極的に協力し合い、自主的に企業の拡大に向けて活動することができます。
まとめ
セクショナリズムとは、部署同士のコミュニケーションがなくなり、企業の統制が取れず、業務の進捗が妨げられることをいいます。
本来、目標に向かって各部署が連携をしていくべきですが、自部署のやり方や目標にばかり気を取られ、対立が起きてしまいます。
解決策として、適切な異動や人事評価の見直し、FUJIFUILM IWproを活用した業務の見える化などが有効です。
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