SECIモデルで暗黙知を活かす!実践のための4つのプロセスとは

2025.03.11

SECIモデルで暗黙知を活かす!
実践のための4つのプロセスとは

SECIモデルにより暗黙知が生かされている職場

多くの企業に「この人にしかできない」という業務があるのではないでしょうか。熟練の従業員がいるということは良いことですが、その人が休職もしくは退職してしまった時に、通常業務の遂行が難しくなるかもしれません。

そのような事態を避けるためには、「SECI(セキ)モデル」を知り、活用することがおすすめです。この記事では人材不足に悩む企業向けに、SECIモデルについて概要や具体的手法について解説します。SECIモデルを実現するために便利なツールFUJIFILM IWproも紹介するので、ぜひ参考にしてください。

SECIモデルの知識構造

SECIモデルを知るためには、まず暗黙知、形式知、ナレッジマネジメントの3つの言葉を知っておくと良いでしょう。ここでは、その3つの用語の説明をします。

暗黙知

暗黙知とは、言語化するのが難しい知識のことです。

人は自身の経験からさまざまなことを学びますが、中には、言葉にして人に伝えるのが難しい感覚的なものも多くあります。実際に、自分だけが分かる空気感や手触りを頼りに何かを行った経験がある人もいるのではないでしょうか。

暗黙知はそういった主観的で人に伝えにくい知識のことで、工夫して言語化しないと人に伝えにくい性質を持っています。

形式知

形式知とは言語化や図式化ができている知識のことです。その知識を得ている人だけが感覚的に分かっている知識ではなく、第三者が客観的に理解できるものです。具体的には、業務マニュアル、説明書、Q&Aといったものが形式知といえます。どれも言語化されていて、文章で知識の共有が可能です。

形式知と暗黙知はまったく逆の概念のように見えますが、暗黙知の中にあるものが言語化され形式知にすることができます。形式知と暗黙知は別ではなく、暗黙知の中から形式知を生み出し共有することが可能です。

ナレッジマネジメント

ナレッジマネジメント(Knowledge Management)は、直訳すると「知識のマネジメント」という意味になります。ここでいう知識とは、技能、知見、スキルなど、業務上で必要な知識全般を指すことが一般的です。

社内にある個人の知識を共有することにより企業全体の知識にしていき、結果として新しい創造的な仕事を生み出すために、ナレッジマネジメントは使われます。

それでは、SECIモデルとは何か詳しく解説します。

野中郁次郎教授が提唱した理論

SECIモデルは、世界的に活躍する経営学者である一橋大学名誉教授の野中郁次郎により提唱されました。野中教授が執筆した『知識創造企業』(1995)の中で、暗黙知から組織の形式知へと変換し、企業がまったく新しい創造力を生み出すプロセスとしてSECIモデルが紹介されています。

『知識創造企業』は世界10カ国語以上に翻訳され、世界規模でナレッジマネジメントブームを巻き起こしました。

4つのプロセスで構成される

SECIモデルは以下のような、共同化、表出化、連結化、内面化という4つのプロセスで構成されています。このプロセスを繰り返すことにより、組織的に新しい知識をつくり出せる仕組みです。

SECIモデルの4つのプロセス

この4つのプロセスはどのようなものなのか、それぞれ詳しく解説します。

共同化(Socialization)

共同化とは、個人の暗黙知をそれぞれ共有するプロセスです。ここではまだ暗黙知を言語化や図式化せず、感覚的に伝えます。具体的には、複数人で同じ業務をやってみる、熟練技術者の技を見てみる、といったことです。

お互いにどのような技能や知識を持って業務にあたっているのか、相互理解することからSECIモデルのプロセスは始まります。

表出化(Externalization)

相互理解、知識の共有ができたら、ここで言語化や図式化をこころみます。感覚や長年の経験に頼っていた部分を言葉で説明できるようにするプロセスです。マニュアルや報告書の作成がこの表出化に該当します。

暗黙知は主観的要素が強いため、一人で形式知への変換を試みても正しい言語化ができないかもしれません。そのため、複数人でどのように形式知にすべきか検討し、可視化していくことが大切です。

連結化(Combination)

暗黙知を形式知とすることができたら、その形式知を分析します。これは、形式知を組み合わせ、新しい形式知を生み出すためのプロセスです。例えば、集まった形式知から新しい知識を生み出せないか、より良い方法はないのか、模索していくようなことです。ここでも一人ひとりで行うのではなく、組織的にグループで話し合うことが重要になってきます。

内面化(Internalization)

熟成された形式知を個人が自分自身の暗黙知にしていくことが、このプロセスの最終目的です。組織的にブラッシュアップしてきた形式知を、それぞれが自身の業務に役立て実践していきます。

ここで得られた暗黙知は、業務を続ける上でより良いかたちになっていくこともあるでしょう。そうなると、従業員一人ひとりの中でより成長した暗黙知を共有し、形式知に変えていくプロセスが必要となります。そのため、内面化の次はまた共同化、表出化、とプロセスを繰り返していきます。

SECIモデルと似ているものにPDCAサイクルがあります。

PDCAサイクルとは、Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)を繰り返すビジネスモデルで、4つの工程を繰り返す点がSECIモデルと同じです。

しかし、PDCAサイクルはいきなり計画から始まります。現場でどのような知識があるのか検討するのではなく、「〇〇をする」という指示から始まる構成です。つまり、すでに形式知ができ上がっていることを前提としています。

一方SECIモデルは、客観的に把握できていない暗黙知を表に出すことから始めます。内面の知識まで活かすことができ、なおかつその知識をブラッシュアップすることが可能です。目先の効率化ではなく、長期間の発展を目指すのであれば、SECIモデルをじっくりと実践してみるのも良いでしょう。

SECIモデルにより共感が深まった従業員たち

SECIモデルはなぜ企業において必要な存在なのか、SECIモデルがもたらすメリットについて解説します。

企業の属人化を防げる

企業の属人化は、個人の暗黙知に頼って業務を進めることから起きます。暗黙知を持つ従業員が退職や休職をしてしまうと、何も知らない人が後を引き継ぐしかありません。そうなると、通常業務ができるようになるまで業務の効率が落ちる、もしくは停止することになります。

しかし、SECIモデルで暗黙知を形式知としていれば、一人の従業員だけではなく多くの従業員が業務を遂行できるようになり、企業の属人化を予防できます。

従業員同士の共感を深められる

SECIモデルは一人で行うことはできません。従業員それぞれが持つ暗黙知を共有し、検討しながら形式知としていく性質上、必ずグループで対話を深めていくことが必要となります。それぞれの知識の違い、互いの良い所を確認し合うことになり、相互理解や関係改善につながるといえます。

知識や技能をブラッシュアップできる

SECIモデルの工程の1つである連結化では、形式知同士をつなげ、より良いアイデアを生み出す試みを行います。それぞれが異なる暗黙知を持ち磨き上げているより、もっと早くもっと良いものが生まれる可能性が高いでしょう。

効率化や生産性の向上につながる

SECIモデルを実践する工程では、グループで暗黙知を共有し、形式知に変換、その後形式知をより良いかたちにブラッシュアップします。そのために従業員同士で深く対話するため、関係性が良好になり、互いの知識や技能がより磨き上がることが期待できます。

少子高齢化により生産人口が減っていて、人材不足に悩む企業は少なくありません。業務の生産性が向上すれば、少ない人材で効率良く業務を回せるようになるでしょう。

SECIモデルを活用する従業員たちのイメージ

実際にSECIモデルを企業内で行うためには何をすれば良いのか、具体的な方法を紹介します。

知識共有のためのアプリケーションを活用する

SECIモデルはまず暗黙知を共有する時に有効です。できれば対面ミーティングを行うのが一番ですが、在宅ワークやリモートワークの従業員がいたり、従業員同士の時間を合わせるのが難しかったりする場合は、専用のアプリケーションがあれば便利になります。

知識共有に適した既存のアプリケーションを導入するのも良いのですが、より使いやすく自社に合ったものがほしい時には、独自のアプリケーションを開発するのもおすすめです。

動画を活用する

SECIモデルの最初の工程である「暗黙知の共有」では、言語化できないような知識や技能を伝え合わなければなりません。この時動画を活用すれば、言語化や図解をしなくてもお互いの考えや行っていることを分かりやすく共有できます。時間をかけて言語化する必要もなくなるため、説明する側の負担も減らせるでしょう。

空き時間を活用して動画を見るようにするためには、短時間動画の作成がおすすめです。

社内に対話できるスペースを導入する

SECIモデルは一人だけでは実践できず、従業員同士で対話、検討を続けなければなりません。何度もディスカッションが必要になるため、社内に気軽に対話できるスペースがあると便利でしょう。必要な時、必要な人と対話しながら仕事ができる、フリーアドレス制の導入も有効です。

SECIモデル実践に役立つFUJIFILM IWpro

SECIモデル実践のためにそれぞれのノウハウを集約化したい場合、富士フイルムビジネスイノベーションのFUJIFILM IWproをおすすめします。

FUJIFILM IWproはSECIモデルに必須ともいえる、データの共有や管理ができるアプリケーションです。

データを自動で取り込み、クラウド上で管理。その後、作業や進捗状況をリアルタイムで確認できます。決まった法則で書類の名称をつける、保管場所など決める、といったことが可能で、今まで個別に管理していた書類の統一化をします。動画の共有もできるため、暗黙知の共有にぴったりでしょう。

FUJIFILM IWproの特徴は以下の4つです。

人をつなげる
  • 1つの画面で文書を共有できる
  • クラウド上で共同作業、同時編集ができる
プロセスをつなげる
  • 現在のタスクを見える化することにより、必要な作業を共有できる
  • フォーマットが異なるファイルを1つにまとめられる
情報をつなげる
  • データだけではなく、ファクスや紙文書も取り込み可能
  • 画像補正、フォーマットも自動で適正に処理できる
場所をつなげる
  • クラウド上で動かせるため、従業員がどこにいても利用可能
  • どこにいてもセキュアな環境で作業できる

SECIモデルではそれぞれ何をしているのか、何を経験したのか、といったことを共有するのが重要です。FUJIFILM IWproを活用すれば、在宅ワークの人がいても現在のプロセスを共有し、同時に作業ができます。

SECIモデルとは、個人が自分の中にだけある暗黙知を対話を通じて形式知とし、その形式知を今後の発展に活かすためのマネジメント手法です。SECIモデルを実践することにより、社内に対話が増え、個人の知識を組織全体の財産として活かせます。

SECIモデルを実際に行うためには、状況を共有できるアプリケーションの導入がおすすめです。その際には、富士フイルムビジネスイノベーションのFUJIFILM IWproを利用してみてはどうでしょうか。

富士フイルムビジネスイノベーションでは、それぞれのノウハウを共有し、個の知識を全体に広げるために活用できるアプリケーションとして「FUJIFILM IWpro」を提供しています。

SECIモデルを始めるためには、まずそれぞれの知識や技能を共有していかなければなりません。そのようなとき「FUJIFILM IWpro」を活用することで、それぞれが行っている業務内容の共有や、書類の共同管理が効率的に行えるようになります。ナレッジマネジメントとしてSECIモデルを導入したいとき、ぜひご活用ください。