パブリッククラウドとは?プライベートクラウドの違いやメリットを解説

2025.03.11

パブリッククラウドとは?
プライベートクラウドの違いやメリットを解説

パブリッククラウドとは? 

ビジネスのデジタル化が進む中、業務効率化やコスト削減を実現する手段としてクラウドの活用が広がっています。特に、多くの企業や個人が利用しやすいパブリッククラウドは、注目度が高いサービスの一つです。

本記事では、パブリッククラウドの概要やプライベートクラウドとの違いに加え、導入の注意点について詳しく解説します。

パブリッククラウドとは、企業や個人を問わず、不特定多数のユーザーが利用できるクラウドサービスのことを指します。総務省の「クラウド技術の概要と活用方法」では、「複数の利用者で共同利用」するクラウドと定義されています。

このクラウド環境では、サーバやソフトウェア、ネットワーク回線といったインフラが、ユーザー全体で共有されます。そのため、利用者は必要なサービスのみを選び、従量課金制やサブスクリプション方式でコストを抑えながら利用することが可能です。

パブリッククラウドは、大規模な設備を自社で構築する必要がないため、導入コストを抑えながら最新の技術を活用できる点が大きなメリットです。その一方で、利用者が共有する環境であるため、セキュリティ対策の検討も重要です。

パブリッククラウドとプライベートクラウドの違い

クラウドサービスは大きく分けると前述したパブリッククラウドとプライベートクラウドの2種類があります。プライベートクラウドは、特定の企業や組織が専用の環境を構築して利用するクラウドサービスです。セキュリティやパフォーマンスを自由に管理できるため、医療機関や金融機関など、高度なデータ保護が求められる分野に適しています。しかし、専用環境を用意する分、初期費用や運用コストが高くなる傾向があるため、導入の際には慎重な検討が必要です。
それぞれの特長を理解し、目的に応じた選択をすることが重要です。

パブリッククラウドとSaaSの関係

パブリッククラウドを利用したサービスの一形態として、SaaS(Software as a Service)が挙げられます。SaaSはクラウド上で提供されるソフトウェアです。利用者はインストール不要で、インターネット経由で即座にサービスを利用できます。代表的なサービスとして、Google WorkspaceやMicrosoft 365、Salesforceなどがあり、企業の業務効率化に大きく貢献しています。

SaaSは、サービス提供会社がすべての管理を行うため、利用者はメンテナンスの手間を掛けることなく、最新の機能を利用できる点がメリットです。クラウドの形態としては、IaaS(インフラの提供)やPaaS(開発環境の提供)も存在し、それぞれ異なる役割をもっています。SaaSの具体的な活用方法については後述の「SaaS(Software as a Service):完成されたソフトウェアの提供」で詳しく解説します。

パブリッククラウドは、単なるデータの保存場所としてだけでなく、さまざまなサービスを提供するプラットフォームとしても活用されています。前述したように、これらは大きく分けて IaaS、PaaS、SaaSの3種類があります。企業の業務効率化やITインフラの最適化を支援するサービスが数多く存在するため、種類別に理解を深めることが重要です。ここからは、それぞれの特長について詳しく解説します。

IaaS(Infrastructure as a Service):インフラの提供

IaaSは、クラウド上でサーバやストレージ、ネットワークといったITインフラを提供するサービスです。企業が物理的なサーバを保有する必要がなく、クラウド上で必要なリソースを自由に確保できるため、柔軟な運用が可能です。

例えば、企業が社内システムの基盤を構築する場合、従来はサーバ機器を購入し、データセンターで管理する必要がありました。しかし、IaaSを活用すれば、クラウド上で仮想サーバを立ち上げ、必要に応じてCPUやストレージの容量を調整できるため、コスト削減にもつながります。

また、開発環境の構築にも適しており、開発者が自由に仮想マシンを作成し、アプリケーションのテストを行うことができます。開発のスピードを向上させるとともに、リソースの無駄を減らすことが可能です。

PaaS(Platform as a Service):開発環境の提供

PaaSは、アプリケーションの開発に必要なプラットフォームをクラウド上で提供するサービスです。IaaSがサーバやネットワークといったインフラを提供するのに対し、PaaSではデータベースやプログラム実行環境など、より開発に特化した機能を利用できます。

このサービスを活用することで、開発者は環境構築の手間を省き、アプリケーションの設計やコーディングに集中できます。例えば、データベース管理システムやライブラリがあらかじめ用意されているため、開発者はゼロから環境を構築する必要がなく、効率的に開発を進めることが可能です。PaaSは、特に要件が少ないシンプルなアプリケーションの開発に適しています。短期間でのリリースが求められるプロジェクトや、小規模なサービスの立ち上げなどに活用可能です。

SaaS(Software as a Service):完成されたソフトウェアの提供

SaaSは、クラウド上で利用できるソフトウェアを提供するサービスです。利用者はアプリケーションをインストールすることなく、インターネット経由でサービスを利用できます。パソコンやスマートフォンがあればどこからでもアクセス可能です。

例えば、Google WorkspaceやMicrosoft 365のようなオフィスソフト、SalesforceのようなCRM(顧客管理)ツール、SlackやZoomのようなコミュニケーションツールがSaaSの代表例です。これらのサービスは企業の業務効率化に大きく貢献しており、個人利用としても広く普及しています。

SaaSの大きな利点は、運用管理が不要であることです。サービス提供会社がメンテナンスやアップデートを行うため、利用者は常に最新の機能を使うことができます。また、ユーザー数に応じた課金体系が一般的であるため、必要な範囲でコストを抑えながら導入できる点も魅力です。

パブリッククラウドの普及が進んでいる背景には、導入コストの低さや柔軟な運用が可能な点があり、企業の規模を問わず利用しやすい環境が整っています。ここでは、パブリッククラウドを活用する主なメリットについて解説します。

初期費用が少なく導入しやすい

パブリッククラウドのメリットのひとつは、導入時の初期費用が少なくて済む点です。従来、企業がITインフラを構築する際には、高額なサーバ機器の購入やデータセンターの運用コストが必要でした。しかし、パブリッククラウドでは、サーバやネットワーク機器を自社で所有する必要がなく、最小限のコストで環境を整えられます。また、パブリッククラウドは不特定多数のユーザーが共同で利用するため、インフラがすでに整備されており、短期間で導入できる点も魅力です。

運用コストや人件費を抑えられる

クラウドサービスは従量課金制のものが多く、使用した分だけ料金が発生するため、コストを最適化することが可能です。また、クラウドサービスの管理やメンテナンスはサービス提供会社が行うため、企業側で専任のIT担当者を配置する必要がありません。そのため、人件費を削減しながら、最新の技術を活用できる環境を維持することも容易です。

BCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)対策として有効

BCP対策として有効

BCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)の観点からも、パブリッククラウドの利用は非常に有効です。中小企業庁の「中小企業BCP策定運用指針」によると、BCPとは「企業が自然災害、大火災、テロ攻撃などの緊急事態に遭遇した場合において、事業資産の損害を最小限にとどめつつ、中核となる事業の継続あるいは早期復旧を可能とするために、平常時に行うべき活動や緊急時における事業継続のための方法、手段などを取り決めておく計画のこと」と定義されています。

パブリッククラウドを活用することで、災害やシステム障害が発生した際でも、データがクラウド上に保存されているため、迅速な復旧が可能です。また、リモートワークとの相性も良く、従業員がどこからでも業務を継続できます。さらに、セキュリティ対策が強化されたクラウドサービスを利用することで、情報漏洩のリスクを軽減し、安全な運用を実現できます。

パブリッククラウドは、コスト削減や柔軟な運用が可能といったメリットがある一方で、企業のシステム運用においては、トラブル対応やカスタマイズの制限、セキュリティリスクへの対策が求められることが多く、事前に十分な検討が必要です。
ここでは、パブリッククラウドのデメリットについて詳しく解説します。

トラブルがあっても自社で対処できない

自社でのトラブルの対処は不可

パブリッククラウドは、サービス提供会社がインフラを管理するため、トラブル発生時の対応も基本的に事業者に委ねられます。例えば、大規模な障害が発生した場合、自社のシステムが一時的に使用できなくなってしまう可能性もゼロではありません。

AWSなどのクラウドサービスでは、ユーザーがサーバの再起動などの基本的な作業を行うことは可能ですが、ネットワーク障害やデータセンターの問題など、自社では対応できないトラブルに直面することもあります。

このようなリスクを回避するためには、障害発生時の対応計画(BCP)を事前に策定し、代替手段を確保することが重要です。例えば、マルチクラウド環境を構築して一部のシステムを別のクラウドに分散させることで、障害発生時の影響を最小限に抑えることができます。

カスタマイズ性が低い

パブリッククラウドは、標準化された環境を提供するため、カスタマイズ性が低いこともデメリットです。特にSaaSを利用する場合、ハードウェアやソフトウェアの仕様はサービス提供会社によって決められており、企業が独自にカスタマイズできる範囲は限られています。そのため、SaaSを導入する際には、「サービスを自社の業務に適用する」というよりも、「業務をSaaSの仕組みに適応させる」といった発想が求められます。

一方で、IaaSを利用する場合は、仮想サーバの設定やネットワークの構成など、ある程度のカスタマイズが可能です。しかし、プライベートクラウドと比較すると制約が多いため、高度なカスタマイズ性を求める場合は要件に照らし合わせた比較が必要です。カスタマイズが必要な業務をクラウド化する際には、どの程度の柔軟性が求められるかを事前に整理し、パブリッククラウドとプライベートクラウドのどちらが適しているかを検討しましょう。

パブリッククラウドを導入する際は、単にコストや利便性だけを重視するのではなく、セキュリティや長期的な管理・運用のしやすさも考慮することが必要です。特に、業務の中心にクラウドを置く場合は、事前の準備が不十分だと、運用開始後にさまざまな問題が発生する可能性があります。ここでは、パブリッククラウドを導入する際に注意すべきポイントを解説します。

セキュリティ対策を徹底する

セキュリティ対策の徹底

パブリッククラウドは、サービス提供会社によるセキュリティ対策が施されていますが、完全にリスクがないわけではありません。誤操作や設定ミスによる情報漏洩、アクセス管理の不備などが原因で、データが外部に流出してしまうケースもあります。

例として、クラウドストレージの公開設定を誤ってしまい、社内の機密情報がインターネット上で閲覧可能になってしまうトラブルが想定できます。

こうしたリスクを回避するためにはアクセス権限の管理を徹底し、定期的にセキュリティ設定を確認することが重要です。パブリッククラウドを導入する際には、暗号化や多要素認証などのセキュリティ対策を強化し、不正アクセスや情報漏洩などのリスクを最小限に抑えることが求められます。

自社に合ったサービスを選ぶ

パブリッククラウドを導入する際は、自社の環境や目的に適したものを選択することが重要です。例えば、データ量が多い場合は、ストレージ容量の大きなサービスが適しています。セキュリティが重視される場合は、より強固なアクセス管理機能をもつクラウドサービスを選ぶことが必要です。

また、既存のシステムとの連携も考慮する必要があります。パブリッククラウドとオンプレミス環境を併用するケースでは、APIの互換性やデータ連携の方法を事前に確認し、スムーズに移行できる環境を整えることが大切です。

導入後に「思ったように運用できない」といった問題が発生しないように、事前にトラフィック量や運用コスト、長期的な視点での管理のしやすさを考慮しながら選定を進めましょう。

運用開始後の管理・最適化を行う

パブリッククラウドは、導入後の管理も重要です。運用開始後は適切なリソースの確保や、コスト最適化のための継続的な見直しが欠かせません。

例えば、クラウドサービスの料金は従量課金制が一般的なため、不要なリソースを放置してしまうと、想定以上のコストが発生することがあります。そのため、定期的に使用状況を分析し、不要なサーバやストレージを削減することで、最適なコスト管理を実現できます。

また、クラウドサービスは定期的に新機能が追加されるため、運用担当者は新しい技術やアップデート情報を把握し、システムの改善に活かすことが求められます。運用開始後も継続的に最適化を行うことで、より効率的なクラウド活用が可能です。

クラウドの導入を検討する際は、セキュリティ対策や運用の最適化を考慮しながら、長期的に活用できる仕組みを整えることが必要です。

富士フイルムビジネスイノベーションでは、クラウド導入から運用までをワンストップで支援できる多彩なサポートメニューを提供しています。専任スタッフがいなくてもスムーズにクラウド環境を構築できるため、初めての導入でも安心して活用できます。また、セキュリティ面やシステムの最適化など、企業のニーズに応じた柔軟な対応が可能です。

【関連コンテンツ】