このコンテンツは医療従事者向けの内容です。
いでハートクリニックは大阪府吹田市北部の国立循環器病研究センターの跡地に位置し、循環器内科、内科、心臓血管外科を中心に、患者さんのためにほぼ休診日を設けず外来診療や訪問診療を提供しています。今回は、2023年10月に導入された64列/128スライスCT SCENARIA*1 View*2 Plusと心臓の動き補正技術Cardio StillShot*3 について、井手亨院長と細川徹技師のお二人にお話を伺いました。
いでハートクリニック
井手 亨 院長
細川 徹 技師
はじめに、いでハートクリニックの概要や理念について教えてください。
いでハートクリニックは大阪府吹田市北部の国立循環器病研究センターの跡地に位置し、大阪大学医学部附属病院からも近い場所に2023年10月に開院しました。循環器内科、内科、心臓血管外科を中心に行っているクリニックです。
「心のこもった医療で健やかな日々を」という理念の下、患者さんが入院することなく元気に過ごしていただくために、休診日をほぼ設けず、個性あふれる専門性の高いスタッフとともに、外来診療や訪問診療を提供しています。
循環器クリニックでCT装置を導入した経緯を教えてください。
私が以前勤務していた大阪大学医学部附属病院では、心臓血管手術の術前検査の患者さんに数週間の検査待ちが発生しており、近隣施設に検査の依頼・日程の調整など多くの労力が必要でした。これを解決し、患者さんの迅速な検査と治療を促進するために、大学と連携した循環器クリニックの立ち上げを検討しました。
心臓血管手術における術前検査には高度な画像診断が不可欠であり、患者さんの心臓や血管の状態を正確に把握することで、手術の成功率を向上させることにつながります。
そこで、私はCT装置の導入をメインにクリニックの開院を検討しました。私が求めるCT装置は、患者さんの心臓や血管の内部構造を非侵襲的に詳細に観察することができるだけでなく、大学病院の患者さんの術前検査に耐えうる性能を有するものでした。富士フイルムヘルスケア社製のSCENARIA View Plusは、心臓の動き補正などに特長的な機能を有しており、大学でも使用していたSYNAPSE*4 VINCENT*5の使いやすさと解析の精度も決め手になりました。
現在では依頼があれば即日説明・検査を行っており、患者さんの長期間の検査待ちはなくなり、続々と検査依頼をいただいています。術前検査が迅速かつ効率的に行うことができ、心臓の動き補正によりブレの少ない画像情報を得ることで、検査から計測まで短期間で高精度な手術プランニングが行えるようになりました。このように、いでハートクリニックでは、急な検査依頼や患者さんの都合に合わせた、高品質で先進的な医療サービスを提供しています。
CT装置導入後の検査運用や心臓動き補正の使用感について教えてください。
2023年10月の開院当初からACS(急性冠症候群)が疑われる胸部症状を示す患者さんや術前検査、心臓ドックなどの冠動脈CT検査が行われました。現在では大阪大学医学部附属病院からの紹介患者も含めて冠動脈CT検査は月に20件以上あり、多い日では4件/日の冠動脈CT検査があります。
冠動脈CT検査で得られたデータからセグメント再構成、およびハーフ再構成とCardio StillShot(以下、CSS)のON/OFFで再構成を行い、その後SYNAPSE VINCENT Coreを使用して解析しています。
症例においては、SCENARIA View Plusのモーションアーチファクト補正技術であるCSSが有効であった症例を提示させていただきます。
症例1)
70代男性
HR:71-75 bpm/sinus(βブロッカー内服およびコアベータ静注)
AAA術前検査目的
高頻拍症例でハーフ再構成では、RCA(Right Coronary Artery)に一部モーションアーチファクトが認められました。セグメント再構成にすることで、アーチファクトは改善されていますが、ハーフ再構成CSS/ONにより更に改善され、アーチファクト箇所の評価も可能となりました。
症例2)
50代男性
HR:51-59 bpm/sinus(ステント挿入)
心臓ドック症例
PCI(冠動脈形成術)ステント留置後の症例において、ハーフ再構成CSS/ONによりモーション補正処理が行われ、ステント部分の歪みが補正されていることが確認されました。CSSを用いることで、ステント留置箇所に生じる微細な動きや変動に対しても効果的なモーション補正が行われています。
いでハートクリニックでは積極的にCSSを用いた処理を行っており、高頻拍症例や不整脈症例などセグメントやハーフ再構成では評価が難しい症例でも、ブレの少ない画像を提供しています。ただし、息止め不良や体動などの症例においては、生データから動きの補正処理を施すことで、偽画像が生成される可能性もあるため、元画像と一緒に確認するなど注意が必要となります。
クリニックとして今後の展望があれば教えてください。
当クリニックの課題として、冠動脈CT検査の被ばく線量をより低減させたプロトコルの検討があげられます。患者さんの体格にあった管電流の設定やIPV (Iterative Progressive reconstruction with Visual modeling)の技術を活用し、適切な撮影条件を模索していきたいと考えています。 いでハートクリニックでは、心のこもった医療を提供し、患者さんが健やかな日々を送るためのサポートを継続的に提供していきます。今後もCT装置を使用していく中で発信できることを模索していきたいと思います。
SCENARIA View
- 販売名
全身用X線CT診断装置 SCENARIA View
- 医療機器認証番号
230ABBZX00027000
3D画像解析システム SYNAPSE VINCENT
- 販売名
富士画像診断ワークステーション FN-7941型
- 医療機器認証番号
22000BZX00238000