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リポソームの図

リポソーム : 事例紹介

がん領域の創薬開発において、低分子を安定な脂質ナノカプセル粒子に封入するDDS(ドラッグデリバリーシステム*1)として確立された製剤です。この技術は、新たな低分子抗がん剤の薬物動態、生体内分布、安全性の課題を解決する可能性があります。

事例紹介

富士フイルムが設計・製造した2つのリポソーム治験薬が臨床試験中です。

トポテカンの例:リポソームによる薬物動態、有効性-安全性のプロファイルの改善

トポテカン内包リポソーム製剤の透過型電子顕微鏡写真です。

富士フイルムが設計・製造したFF-10850は、DHSMをベースとしたトポテカン内包リポソームの注射剤です。トポテカンは従来、リポソーム脂質二重膜の透過度が高かったのですが、DHSMベースのリポソームを使用することにより、3年以上の冷蔵保存が可能となりました。
FF-10850は現在アメリカで臨床試験中です。

動態改善

動態改善のグラフ トポテカン内包リポソーム製剤FF-10850をマウスに静脈注射すると血漿濃度は線形で用量に比例し、リポソーム化していないトポテカン製剤よりも有意に高い。

有効性向上

有効性向上のグラフ マウスにトポテカン内包リポソーム製剤FF-10850を週1回0.5mg/kg投与を2週間続けた群。リポソーム化していないトポテカン2mg/kg投与を5日つづけた群。DOXILを週1回16.7mg/kg投与を2週間続けた群。その3群を比較すると、同等の腫瘍増殖阻害が示されました。FF-10850は、週1回1.3mg/kg投与を2週間続けるとほぼ完全な腫瘍退縮をもたらし、ES-2プラチナ耐性卵巣がん異種移植マウスモデルにおいて、リポソーム化していないトポテカンと比較して統計的有意性を示しました。
  • Steel-Dwass検定により統計解析を行った(※ 、P<0.05)

毒性低減

毒性低減のグラフ マウスにトポテカン内包リポソーム製剤FF-10850を週1回0.5および1.3mg/kg投与を2週間続けた群とリポソーム化していないトポテカン2mg/kg投与を5日つづけた群は体重減少がみられないですが、DOXILを週1回16.7mg/kg投与を2週間続けた群は体重減少が見られました。FF-10850を週1回4mg/kg投与を2週間続けたものはわずかに体重が減少します。
好中球のグラフ マウスにトポテカン内包リポソーム製剤FF-10850を週1回0.5および2mg/kg投与を2週間続けるとコントロールと同等の好中球数となります。対照的にリポソーム化していないトポテカン2mg/kg投与を5日続けると3,5,7日目に好中球数が減少し、10日目にコントロールと同等の好中球数に戻ります。

免疫チェックポイント阻害剤とトポテカン併用療法の有効性

生存率
CT26結腸癌モデルにおけるトポテカン内包リポソーム製剤FF-10850とPD-1抗体の併用療法は、各単剤療法と比較して生存期間を大幅に延長します。
トポテカン内包リポソーム製剤FF-10850とPD-1抗体の併用療法は、試験した75%(8匹中6匹)のマウスで腫瘍の完全縮小ももたらしましたが、単剤療法ではPD-1のみで0%(8匹中0匹)、FF-10850で12.5(8匹中1匹)%の縮小をもたらしました。
  • Log-rank検定により統計解析を行った
    (*, P < 0.05; **, P < 0.01; and ***, P < 0.001)
  • Susumu Shimoyama et al, Mol Cancer Ther 2023

DHSMベースのリポソームトポテカンは、in vivoで高い薬効と安全性を示し、PD-1Abとの高い併用効果を示しました。
(Susumu Shimoyama et al, Mol Cancer Ther 2023)

ゲムシタビンの例:リポソーム製剤による免疫チェックポイント阻害剤(ICI)との併用効果の増強

ゲムシタビン内包リポソーム製剤の透過型電子顕微鏡写真です。

富士フイルムが設計・製造したFF-10832は、アメリカで臨床試験を開始した唯一のゲムシタビン内包リポソーム製剤です。
冷蔵条件下で3年以上の安定性が確認されています。

マウス腫瘍モデルでのゲムシタビンとCTLA-4阻害剤併用療法の有効性

CTLA-4阻害剤とゲムシタビン併用効果の研究プロトコルでは、皮下移植した6週齢の同系雌マウスに、 接種後7日目、14日目、21日目に、リポソーム化していないゲムシタビンまたはゲムシビン内包リポソーム製剤FF-10832を静脈内投与し、接種後3週間は10mg/kgのCTLA-4阻害剤を週2回、腹腔内投与した。治療期間終了後、腫瘍体積を継続的に観察した。
CTLA-4阻害剤単独投与またはリポソーム化していないゲムシタビンとCTLA-4阻害剤の併用投与では、試験したマウス8匹中1匹で完全寛解した。一方、ゲムシタビン内包リポソーム製剤FF-10832とCTLA-4阻害剤の併用では相乗効果が発揮され、8匹中7匹で完全寛解した。
腫瘍微小環境
EMT6モデルにおけるCTLA-4阻害剤とゲムシタビン併用療法の腫瘍微小環境解析のための研究プロトコルです。リポソーム化していないゲムシタビンまたはゲムシタビン内包リポソーム製剤FF-10832の静脈内投与を週1回、3週間実施し、CTLA-4阻害剤の腹腔内投与を週2回、2.5週間実施した。治療期間(16日間)終了後に腫瘍を採取し、フローサイトメトリーにより免疫細胞を分析した。
M2 cell
ゲムシタビン内包リポソーム製剤FF-10832の単剤療法またはリポソーム化していないゲムシタビンとCTLA-4阻害剤の併用療法では、M2マクロファージはコントロールと比較して約半分に減少する。FF-10832とCTLA-4阻害剤の併用療法により、M2マクロファージの数はほぼゼロになる。
M1 cell
FF-10832またはリポソーム化していないゲムシタビンの単剤療法、およびリポソーム化していないゲムシタビンとCTLA-4阻害剤の併用療法は、M1マクロファージの割合にさまざまな効果を示し、コントロールと比較してその数を約5倍に増加させる。FF-10832とCTLA-4阻害剤の併用療法は、コントロールと比較してM1マクロファージを約10倍に増加させる。
CD8 T cell
FF-10832またはリポソーム化していないゲムシタビンの単剤療法、およびリポソーム化していないゲムシタビンとCTLA-4阻害剤の併用療法は、CD8陽性T細胞にわずかな効果しか示さない。FF-10832とCTLA-4阻害剤の併用は、コントロール、FF-10832またはリポソーム化していないゲムシタビンの単剤療法、あるいはリポソーム化していないゲムシタビンとCTLA-4阻害剤の併用療法と比較して、CD8陽性T細胞を約5倍に増加させる。
  • Poster presentation of AACR Annual meeting 2019, in Atlanta from March 29th to April 3rd

ゲムシタビン内包リポソーム製剤は、腫瘍微小環境におけるM2マクロファージの減少とM1マクロファージ、CD8陽性T細胞の増加だけでなく、EPR(Enhanced permeation and retention effect)効果による腫瘍組織への有効成分の高蓄積という二重の効果により、CTLA-4免疫チェック阻害剤(ICI)との併用効果を高めます。

  • *1 薬剤の効果を最大限発揮させるための制御技術であり、必要な時間・場所に必要最小限の薬剤を届けることを目指しています。