お客様導入事例 藤枝市役所様
【申請書作成支援システム】

市民のことを忘れずに、ICTを活用しながら
さまざまな課題解決を進めていく

静岡県藤枝市役所様ではICTを活用したまちづくりを目指し、さまざまな窓口改善に取り組まれています。その一環として、2019年11月5日から当社の申請書作成支援システムの利用を開始され、住民の皆様の申請書の記入負担を軽減されております。藤枝市様の申請書作成支援システムの導入経緯や窓口業務でのICT活用方法などをご紹介いたします。

複数の申請書への記入負担を心苦しく思っていました

-藤枝市様の窓口業務における申請書の課題について教えてください。

職員様A 住民異動の手続きは、住所そのものの異動だけではなく、それに伴う証明書の取得や印鑑登録、お子様がいらっしゃるご家庭では手当や医療などさまざまな手続きが必要となり、確認事項も多く時間がかかります。市民課の窓口では、住民票・戸籍・印鑑登録など8種類の手続きについては、それぞれ申請書の記入が必要となります。住民 異動に伴う手続きを行ったあとで、必要に応じてそれらの手続きの申請書を市民にお渡しすると、さらにご負担をおかけすることになります。
住民異動時の手続きではないのですが、私が戸籍届出の受付をしたときに「また名前を書くの?」と市民に言われたことが過去にありましたので、市民がそういう感情になっていることは否めません。さらに、マイナンバーカードを持っている市民は、必ず券面変更も伴います。その場合はさらに申請書を記入いただくことになります。そうした手続きの積み重ねが、窓口全体の待ち時間につながっているという課題がありました。

職員様B 私たちが言うのも変なのかもしれませんが、住民異動に関わる手続きをしたうえで、さらに何枚もの申請書に氏名・住所の記入をお願いすることは、お役所仕事だなと感じるときがあります。
その一方で、2019年6月に市民課においてご遺族手続き支援コーナーを開設し、お亡くなりになったかたの手続きをスムーズに実施できるような仕組みなどを構築していました。これらの仕組みは、負担が軽くなってありがたいというお言葉を市民から実際にいただいていたため、お亡くなりになったかたの手続き以外でも、何枚も書かなくても済む仕組みにできればと考えておりました。

解決したいのは市民の待ち時間の短縮

-それらの課題を解決するために、検討された施策はどのようなものがあったのでしょうか。

職員様B 藤枝市はICTを活用したまちづくりを目標にしており、国土交通省「スマートシティモデル事業」の先行モデルプロジェクト注記の選定自治体であることや、地元産業でのICT活用促進を目指し、民間企業と連携して実証実験を行う環境にあります。募集した実証実験には全国から応募があり、高齢者の見守りや河川水位観測など多岐にわたるICT活用事業が展開されました。特徴的なものとしてはイ ノシシの捕獲検知があります。近年被害が市街地近辺に及んでいること、猟友会の高齢化が進んでいることから、箱罠に設置したセンサーで捕獲をお知らせし効率化を図る実験を行いました。
そういった環境から、市民課窓口においても、市民の利便性向上のために情報技術を活用した解決方法はないものか、検討を始めました。たとえば、戸籍業務に関するAIの活用もそのひとつです。しかしながら、調査の結果、AIを実現するためには市民課の職員だけではなく、情報部門の職員も巻き込む必要があり、かなりの労力を要することがわかりました。また、今回導入した申請書作成支援システムを職員ではなく市民に操作していただく方式も検討しました。しかし、これまで申請書の記入はお客様の負担が多く、待ち時間にも影響していたため、職員がシステムを操作して、マイナンバーカードの読み取りなどの対応をしたほうが市民の負担軽減につながるのではないかと考え、採用しませんでした。

  • 注記AIやIoTなどの新技術、官民データをまちづくりに取り入れ、持続可能で分野横断的な取り組みを目指し、都市・地域の課題に係るソリューションシステムを実装するモデル的な取り組みを支援する国土交通省の取り組み。

職員様A このような検討を重ねていくなかで、職員がシステムを操作する前提で、お客様の申請書の記入負担を軽減できる仕組みの申請書作成支援システムを導入することになりました。

導入後2カ月で296件の申請書記入を省力化

-申請書作成支援システムを設置されたあとの運用や効果はいかがでしょうか。

職員様B 藤枝市としては、申請書作成支援システムは、マイナンバーカードを活用する場と考え、カードの交付率を上げていく施策のひとつとしても捉えているため、運用としては、マイナンバーカードの利用に限定しています。
具体的には、手続きに関わる発券機において、マイナンバーカードの有無で申請手続きが変わるようにしています。マイナンバーカードを持っていないかたは、申請書を記入いただいた後に発券機を操作し、マイナンバーカードをお持ちのかたは、発券機の操作のみとする運用をしております(図表1)。

図表1:マイナンバーカードの有無による申請手続きのフロー

-申請書作成支援システムは、どのくらい利用されていますか。

職員様A 申請書作成支援システムの利用状況ですが、藤枝市では2019年11月5日から申請書作成支援システムを運用しており、その間の利用件数を集計すると、図表のようになります(図表2)。
11月~12月の2カ月間の申請書作成支援システムの利用件数としては、住民異動件数全体の9%(108件)です。システムから出力した申請書の枚数は、図表2の①住民異動届から⑧児童手当までを合計した296件で、市民は出力した申請書に署名、捺印をするのみでご負担をおかけすることなく申請手続きができます。
また、職員側の効果としては、申請書を補記する手間が発生しなくなりました。具体的に言うと、これまでは、市民が記載する申請書には記載日の記入漏れや住所の記入省略などがあり、その補記が手間となっておりました。しかし、記載日についてはシステムによって自動で入力され、住所についてはマイナンバーカードの情報を読み取るためそれらの手間が発生しなくなりました。

図表2:2019年11月~3月の藤枝市様の申請書作成支援システムの利用件数とシステムで作成した申請書の枚数

※1:本人用と代理人用の申請書含む ※2:転入、転居含む ※3:転入・転居・転出含む ※4:3月の住民異動件数については3月17日までの集計数値

市民課の業務って、事業課だった?

-今後の課題とその対策はどのようにお考えでしょうか。

職員様A 市民課の業務は、ルーチン業務のイメージがありますが、ここ数年の市民課の業務は事業課だった?というくらい、新たなことに取り組む必要がありました。マイナンバーカードの導入や運用もそうですし、これからの法改正といった各種課題もそうです。
本来は市民を第一優先に、ルーチン業務を確実に実行することを市民課は求められていると思いますが、これらの環境変化に応じて市民課においても先を見据えて、各種課題にどのように取り組むか、長期的に考える必要があると思っています。

職員様B 藤枝市の申請書作成支援システムの運用はマイナンバーカードが必須となりますので、マイナンバーカードの普及が課題です。普及をさせるためにも、しっかりとした広報活動が必要だと考えています。今回の取り組みはすでに新聞やインターネットニュースでも取り上げていただきましたが、マイナンバーカードは、ご存知のとおり賛否があり、市民の捉え方もさまざまだと思います。ですが藤枝市では、 市民がマイナンバーカードを持つことで、窓口での手続きが便利になりますよというアピールを続けマイナンバーカードの交付率を伸ばしていきたいです。
あわせて、我々職員には、ルーチン業務のほかに、マイナンバーカード関連の業務や法改正などいろいろ対応しなければならない課題があります。これらの課題の対応には、マンパワーが必要です。藤枝市だけではなく、どの自治体も、人員の配置にお悩みだと思います。そういうところの課題解決はすぐには難しいと思いますが、このようなところに、ICTの活用ができて、市民だけではなく、職員の業務も効率化が図れるような仕組みが開発され、運用がされれば、サービス向上につながると思います。
また、市民課は市民サービスの最前線です。さまざまな課題解決を進めていくなかで、市民のことを忘れない仕事をしていくことを、常に意識して取り組んでいきたいと思います。

(取材:2019年度時点の情報となります)

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