コラム

WEBマーケティング新時代
~成果が出るパーソナライズ実践事例~ 事例編2

アドビ株式会社 様

アドビ株式会社 望月 ありさ氏

デジタルエクスペリエンス事業本部 ソリューションコンサルティング部

プロフィール

ウェブ制作・アクセス解析からキャリアをスタートし、プロジェクトマネジメント、運用組織・業務設計、品質管理など、長年大企業のオウンドメディア運用支援に携わる。その後、東京理科大学大学院にてMOTを取得。お客様と一緒に、ビジネスとテクノロジーの両面から心躍る顧客体験の創造を目指す。

本記事では、すぐに使えるパーソナライズ施策アイデアTipsをお伝えいたします。アドビのパーソナライズのソリューションを使用しているお客様が、実際に施策として行なったもので、素晴らしい知見の集大成です。

今回はそこから4つ、「訪問者に興味を持たせる」「カスタマージャーニーを円滑に進める」「コスト削減のアイデア」「カスタマーロイヤリティの構築」の事例をご紹介いたします。

視点すぐに使えるパーソナライズ施策Tips

訪問者に興味を持たせる:パーソナライズするために訪問者を知る

例えば、インターネット、携帯電話、ストリーミング・メディアなどのサービスの月額プランを選択するとき、見込み客は自分たちにとっての重要な要素に基づいて意思決定を行います。その重要な要素は人それぞれ異なっている場合が多いと思います。主要な顧客が誰で、彼らにとって最も重要な要素が何かを知ることは、貴社のサービスを選んでもらえるきっかけとなるオファーや体験を提供するのに役立ちます。

ある大手ケーブルテレビ会社が売上と収益を伸ばしたいと考えたとき、マーケティングチームは、新規およびリピーター向けにクリエイティブとブランド体験をカスタマイズすることが、その目標を達成することにつながると考えました。

自社にあるデータを分析・活用したところ、家族、ホームビジネス、スポーツ、ゲームの4つの訪問者グループがいることを特定しました。(これらのグループに当てはまらない訪問者は、デフォルトのエンターテインメント・グループに分類されました。)

また、ユーザー・エクスペリエンスと市場調査から、インターネット・サービスを選択する際に、顧客が最も重視するのは、ブランド、スピード、信頼性の3要素であることがわかりました。

マーケティングチームは、この3つの要素を強調する度合いを変えながら、グループごとに異なるヒーローバナーを開発しました。さらに、それぞれのユーザーに響くようなクリエイティブなコピーと画像を使用しました。ウェブサイトを訪れた訪問者は、そのターゲットに適したバナーが表示されます。

例えば、ゲーマー層には、インターネット速度に焦点を当てた見出しと、ゲーマーの画像を使用したバナーを表示しました。このように、ターゲットを絞った体験により、訪問者一人当たりの売上と収益が増加しました。

本施策を実施した企業様:通信事業

成果:訪問者1人あたりの売上と収益増加

カスタマージャーニーを円滑に進める:常に選択肢を提供する

バケーションを楽しむ人にとって、バケーションレンタルやホテルの部屋を検索して、まさに予約したい物件が見つかったのに、実はもう利用できないと判明することほど、もどかしいことはないでしょう。

あるヨーロッパの旅行会社では、オンライン検索で、すでに閉鎖された物件や予約済みの物件にアクセスすることがあることがわかりました。同社は検索結果をコントロールすることはできませんが、同等の物件を推薦することは可能です。パーソナライズされた類似の物件を推薦することで、ハイシーズンの予約件数を3倍近くに増やすことができたのです。

オンラインショップで、在庫切れや販売中止の商品と類似の商品を推薦するような使い方は、容易に想像がつきます。

例えば、ある家電量販店で特定のモデルのポータブルBluetoothスピーカーを検索したところ、その商品が売り切れだった場合、商品レコメンデーションを使って、同価格帯で品質の良いスピーカーを提案することができます。もう手に入らない商品があることは、より上位の商品への誘導のきっかけにもなり得ます。

本施策を実施した企業様:通信事業・旅行事業

成果:類似商品を紹介して離脱防止・売上向上

コスト削減のアイデア:コールセンターへの通話を振り分ける対象顧客

コールセンターでカスタマーサポートを提供することは、顧客の質問に対応するための素晴らしい方法です。カスタマーサポートの電話1分あたりの平均コストは約1ドルです。現実には、多くの顧客からの質問は、オンラインで簡単に入手できる情報で対応することができます。

米国のある大手通信事業者のカスタマーケアセンターでは、月に10万件近くの電話を受け付けていました。その多くは、特定のトピックに関する質問で、お客様が自分のアカウント情報を見れば、すぐに簡単に答えられるようなものでした。そこで同社は、このよくある質問を記したコピー、例えば 「使用したデータ量を知りたいですか?」を用意し、その横にあるリンクをクリックすると、その質問が表示されるようにしました。このコピーの横にあるリンクをクリックすると、お客様はアカウントのログインページに移動し、ログイン後に「データ使用量を確認する」というリンクが表示されるようになりました。すると、その質問に答える詳細な情報がすぐに表示されたのです。この施策により、3分の1以上の電話がコールセンターからなくなり、数十万ドルのコスト削減を実現しました。

本施策を実施した企業様:通信事業

成果:数十万ドルのコスト削減

カスタマーロイヤリティの構築:思いがけないものを提供する

お客様が自社のアプリを利用しログインすることで、その人が誰であるかを企業側は理解することが出来ます。その情報をうまく活用し、パーソナライズされた体験を通じて顧客を喜ばせることで、顧客がアプリを再び利用するようになります。

ヨーロッパのある大手通信事業者は、アプリを利用する顧客の請求データと位置情報を利用して、顧客が該当するセグメントに基づいてパーソナライズされたバナー、コンテンツ、オファーを配信しました。単なる取引に関連しないものを配信したかったので、顧客の位置情報に基づいて地元の音楽フェスティバルの情報を追加しました。

すると、月間アプリ利用者数、1日のアプリ利用者数が高水準に変化しました。

本施策を実施した企業様:通信事業

成果:アプリ利用者数が高水準に

まとめ

本記事では、すぐに使えるパーソナライズ施策Tipsとして、「訪問者に興味を持たせる」「カスタマージャーニーを円滑に進める」「コスト削減のアイデア」「カスタマーロイヤリティの構築」の4つをご紹介させていただきました。

パーソナライズ施策の運用に少しでも携わった方には共感いただけると思いますが、パーソナライズは一日にして成らず。どの企業様も、最初は簡単なパーソナライズから始まります。その後、顧客の属性情報や行動情報、オンラインからオフラインも含んでのデータの統合分析を経て、そのデータを活用したパーソナライズとなります。さらにAIや機械学習をフル活用した高度なパーソナライズへと段階を経て、パーソナライズ施策も、より成果のでるもの、かつ効率化されたものに洗練されていきます。パーソナライズには正解がなく、施策には失敗がないという思想もあるため、日々のお悩みも深くなりがちですが、すべては顧客からいただいたデータを活用し、顧客に還元するために顧客体験を向上させるもので、お客様とのコミュニケーションの一環です。ぜひ、パーソナライズ施策の運用を、お客様とのコミュニケーションを楽しんでいただければ幸いです。

編集後記

今回の記事はいかがでしたでしょうか。みなさまのマーケティング施策のご参考になれば幸いです。もしパーソナライズの仕組みが未導入、仕組みはあるけど使いこなせない、といったお悩みがあればぜひ富士フイルムビジネスイノベーションにご相談ください。ツール導入は不要、マーケターのみなさまに伴走しながらマーケティングDXをサポートさせていただきます。