お客様導入事例 株式会社マルハチ村松 様

お客様導入事例 株式会社マルハチ村松 様

株式会社マルハチ村松様の創業は1868年(明治初年)。2021年には創業153年を迎えた老舗の食品製造会社です。各種調味料や惣菜、完全調理品、冷凍食品、介護治療食などの企画・製造・販売を中心に、幅広く事業を手がけています。最近では、バイオ医薬用素材の製造を行うなど、新たな取り組みにも積極的です。社会的に食品に対する安全性の要求が高まる中、管理レベルを上げることによる作業負担は避けられず、多くの課題が生まれています。そんな課題に対して向き合い、製造現場における紙帳票の電子化を通じて生産性の向上と業務量の削減に成功した同社の取り組みについてご紹介します。

株式会社マルハチ村松グループ本社 取締役 石村 誠 様
株式会社マルハチ村松 取締役(兼 静岡工場 工場長) 川村 将仁 様
生産管理課 課長 渡邉 賢次郎 様
生産企画課 寺岡 佑 様

左から)石村様、川村様、寺岡様、渡邉様

食品に対する安全性の要求レベルが高まるにつれ
紙での記録業務が多大な負荷に

社会的に食品に対する安全性の要求レベルが高まる中、食品安全システムの国際規格を取得するなど、対応を進めてきたマルハチ村松様。それにより付帯業務が増え、労働生産性が低下しつつあったという。

株式会社マルハチ村松グループ本社 取締役 石村 誠 様

石村樣:当社はダシをはじめとする各種調味料や惣菜、完全調理品、冷凍食品、介護治療食などの企画・製造・販売、各種調味料や水産物などの輸出入や海外生産および通信販売、さらには機能性素材やバイオ医薬用素材の共同開発・受託製造などを行うメーカーです。本社を静岡県焼津市に置き、「信頼を積み重ね、皆で幸せを分かち合いましょう。」を経営理念として大切にしながら、安心・安全な食品の発信を心がけています。

川村樣:当社本部となる静岡工場では、粉末系や液体系の各種調味料の他に、惣菜やレトルト品、魚などを使った業務用加工製品などを手がけています。

近年は社会的に食品の安全性に対する要求レベルやニーズが急速に高まっており、さらには食品安全システムの国際化も進んでいます。我々もその要求にしっかり応えようと考えており、FSSC22000(※1)認証、MSC CoC/ASC CoCの認証を取得しております。

こうしたトレーサビリティに対する要求の高度化により、生産現場における管理レベルを上げなくてはいけなくなり、記録やマニュアル作りといった付帯する間接業務の比率が年々増加しています。その結果、労働生産性が低下しつつあり、付加価値を高めるような業務時間が確保できずにいました。

※1 食品安全マネジメントシステムに関する国際規格

渡邉樣:例えば監査に必要な書類の整理といった業務も、きちんとできていない場合がありました。ゆえに、お客様の監査を受ける場合に、必要な書類を探して慌てて用意する、といったケースもあったと聞いています。

石村樣:こうした課題から、静岡工場における製造現場の労働生産性向上に向けた取り組みがスタートしたのです。

製造記録書の電子化で労働生産性の向上を目指す

製造現場における紙帳票の電子化を目的に、タブレットを活用して帳票の記録や閲覧が行えるソリューション「i-Reporter」の導入を決める。補助金も申請し、そのプロセスを富士フイルムビジネスイノベーションジャパンが入念にサポート。

株式会社マルハチ村松 取締役(兼 静岡工場 工場長) 川村 将仁 様

川村様:今回のプロジェクトの目的は、間接業務比率を減少させ、労働生産性を上げるとともに余裕時間を確保すること。また、製造記録については年間で64,000枚の紙を使用し、6,900時間の作業時間を割いていたので、これを効率化して付帯業務時間を削減すること。そして、手作業での製造記録書作成や帳票点検作業を減らすことで、静岡工場全体で労働生産性を103%向上させることでした。

そのために、製造現場における紙帳票の電子化を進めようと考え、導入を検討したのが「i-Reporter」です。

「i-Reporter」はタブレットを活用することで帳票の記録や閲覧が簡単に行えるソリューションで、展示会を通じて知り、その使いやすさに興味を持ちました。導入や運用の支援をどこに相談しようかと考えた結果、富士フイルムビジネスイノベーションジャパンにお願いすることにしたのです。ちょうど当社の別の部署でICTを活用した伝票管理などの業務効率化をお手伝いいただいており、実績がわかっていましたから信頼できると思いました。

生産管理課 課長 渡邉 賢次郎 様

渡邉様:富士フイルムビジネスイノベーションジャパンには、状況把握のために工場の実態調査をお願いし、運用実現性をしっかり考えながら準備を進めていただきました。「i-Reporter」の導入に合わせ、工場内に無線LANを導入し、システム構築だけでなく帳票フォームの統一化やマスタの統合化など業務改善もご提案いただき、非常に助かりましたね。結果、製造各課での独自管理によるデータフローの分断の解消など、業務フローにおけるボトルネックの解消が図れました。

また、導入を進める中で、日本能率協会コンサルティング(JMAC)による農林水産省の「食品産業イノベーション推進事業」の補助金申請を受ける話が出ました。正直なところ、申請には手間がかかるので尻込んでいましたが、富士フイルムビジネスイノベーションジャパンの営業に相談したところ、一緒に動いていただき、おかげさまで補助金を受けることができました。サポートがなければ交付してもらえなかったと思いますので、非常に感謝しています。

寺岡様:それ以外でも、システムの導入にあたっては、帳票を確認する責任者側と、記録書を記入する社員との認識のズレについてすり合わせる部分で非常にご尽力いただきました。結構な数の会議を重ねましたが、その中で都度的確なアドバイスをいただけたので、スピード感を持って進めることができました。

「もう紙には戻れない!」電子化で付帯業務を約8割削減

「i-Reporter」の導入に合わせた業務フローの見直しなどにより、付帯する業務量や作業時間は大幅に削減。空いた時間を教育に充てたことで社員のスキルアップにつながったほか、他部署の業務の支援などもできるようになった。

生産企画課 寺岡 佑 様

寺岡様:導入の効果ですが、一番大きかったのが作業時間を削減できたことです。これまでは記録書を準備するためには、基幹システムから情報を引き出し、責任者がエクセルで手入力し、そのデータを紙に印刷して各場所に保管しておくという流れで行っていました。今はその作業がなくなり、管理者の作業負担が大きく減っています。おかげで課内でのジョブローテーションができるようになりました、また、教育に充てられる時間が増え、個人個人のスキルアップにもつながっています。加えて、時間が削減できたことで人員を忙しい他の部隊の支援に回せるようになりました。

具体的な効果としては、紙ベースで進めていた記録書が7割程度削減できたと感じています。管理者が製造記録書を準備する作業についても、月あたり415時間かかっていたものが62時間になり、85.1%削減しています。原料の受け入れ業務についても月あたり160時間かかっていたのが105時間になり、34.4%削減。それらを合わせて、付帯業務全体で導入前の工数に比べると79.6%も削減しています。結果として、工場全体の労働生産性は105%に向上し、目標を大きく達成しました。

削減できた時間を人件費で換算すると、今回の導入にかかった費用は約1年で回収できる見込みです。その点からも、期待以上の大きな効果が出ていると感じています。

石村様:以前は、現場の作業が終わってから、課長クラスの社員が残って事務作業している姿を見ることがよくありました。しかし、システムの導入後はそんな場面を見ることはなくなりましたね。

寺岡様:導入して2週間ほどたった頃に、「すっかりタブレットの操作に慣れたので、もう紙の記録書には戻れないよね」と話す社員を見かけました。現場で活用されていると感じ、すごく嬉しかったですね。スムーズに浸透できた要因としては、UIが感覚的に操作できる簡単なもので、使いやすくて覚えるのに苦労が少ないからだと考えています。しかも、作業時は薄手のゴム手袋をしているのですが、それを外さなくても使えるので非常に楽ですね。

今後は「ものづくり」の部分でデジタル技術の導入を検討予定

付帯業務の電子化の次は、直接業務である「ものづくり」の部分でのデジタル技術の導入だ。IoTやICTを積極活用することで、業界に先駆けた新たな取り組みを模索していく。

寺岡様:今後の課題の1つが「属人化」です。今のところは、記録書の編集や管理、保守といった作業は専任である私が基本的には、一人で全て担当しています。ですから、私が不在になると作業が進められない状況です。権限の共有など、他の人でも管理できるような体制を作っていきたいと考えています。

また、今回は製造記録書を電子化したのですが、物流・製造間でやり取りする書類など、一部の業務についてはまだ電子化しきれていません。今後はそういうところも1つずつ進めていきたいですね。手順書などの電子化も取り組み始めたところなので、今後は他の部署にも横展開していこうと考えています。

石村様:電子化のメリットは、蓄積されるものが紙ではなくデータになること。そのデータをどう活用していくかはしっかり考えていきたいですね。そして、ここにいるメンバーを含め、社内のいろいろな人が活用できる体制を整えていくつもりです。

川村様:データを分析し活用していくためにも、今後は新たなデジタル技術を積極的に導入していきたいですね。

今回のプロジェクトでは付帯作業を中心に無駄を省くことができました。今後は、生産部としての直接業務、つまり「ものづくり」で活用していきたいです。例えば、記録できたデータをもとに品質を上げる取り組みを考えたり、歩留まりを上げたりすることにも応用していけるといいですよね。

食品製造業界は手作業を重視する工程がまだまだ多く、IoTやICTの導入が非常に遅れている業界です。だからこそ他社に先駆けるという意味でも、IoTをテーマに何か新しいことができないかを話し合ったところです。そうしたノウハウをたくさんお持ちの富士フイルムビジネスイノベーションジャパンには、引き続きいろいろとご協力いただきたいですね。

「働き方改革」製造記録書作成業務の改善イメージ

原料受入れ業務の改善イメージ

左から)
株式会社マルハチ村松 生産企画課 寺岡 佑 様
株式会社マルハチ村松 取締役(兼 静岡工場 工場長) 川村 将仁 様
株式会社マルハチ村松グループ本社 取締役 石村 誠 様
株式会社マルハチ村松 生産管理課 課長 渡邉 賢次郎 様
富士フイルムビジネスイノベーションジャパン 大畑 賢太郎

トレーサビリティが重要視され、食品安全システムの国際化への対応も余儀なくされる食品製造業界。付帯業務がどうしても多くなりがちな中で、株式会社マルハチ村松様はデジタルソリューションの導入によって労働生産性を向上し、業務の効率化を実現しました。業界に先駆けてさらなるデジタル化への取り組みを加速したいと意気込む同社の今後の取り組みに目が離せません。

まとめ

導入前 取り組むべき課題 解決策 改善効果

◆生産現場での記録対象の増加に伴い間接業務比率が増加。労働生産性が低下しているとともに付加価値を高める時間が確保できていない。

  • 約64,000枚/年の紙使用の削減
  • 製造現場でのペーパーレス化帳票の電子化による印刷製本業務の排除
  • 紙ベースの記録書7割削減
  • 工場全体の労働生産性105%向上
  • 記録書付帯業務全体工数
    79.6%削減
    管理者の製造記録書準備作業時間85.1%削減
    415時間/月 → 62時間/月
    原料の受け入れ業務時間
    34.4%削減
    160時間/月→105時間/月
  • 付加価値を高める時間の確保
    社員教育時間が増え、個々のスキルアップにつながった
  • 手書きでの製造記録書作成、帳票点検作業等、約6,900時間/年かかっている製造記録業務時間の削減
  • 製造現場でのシステム構築
    タブレット入力による入力時間短縮
    製造記録書作成の自動化
    帳票点検業務の効率化

◆手書きの製造記録書のため、データ活用ができず、書類の検索にも時間がかかる

  • 手書きの製造記録書のため、データ活用ができず、書類の検索にも時間がかかる
  • 帳票フォームの統一化、ルール化により、情報不足の解消
  • 文書の検索時間の削減
  • データ活用の有効化
導入前

◆生産現場での記録対象の増加に伴い間接業務比率が増加。労働生産性が低下しているとともに付加価値を高める時間が確保できていない。

取り組むべき課題
  • 約64,000枚/年の紙使用の削減
  • 手書きでの製造記録書作成、帳票点検作業等、約6,900時間/年かかっている製造記録業務時間の削減
解決策
  • 製造現場でのペーパーレス化
    帳票の電子化による印刷製本業務の排除
  • 製造現場でのシステム構築
    タブレット入力による入力時間短縮
    製造記録書作成の自動化
    帳票点検業務の効率化
改善効果
  • 紙ベースの記録書7割削減
  • 工場全体の労働生産性105%向上
  • 記録書付帯業務全体工数
    79.6%削減
    管理者の製造記録書準備作業時間85.1%削減
    415時間/月 → 62時間/月
    原料の受け入れ業務時間
    34.4%削減
    160時間/月→105時間/月
  • 付加価値を高める時間の確保
    社員教育時間が増え、個々のスキルアップにつながった
導入前

◆手書きの製造記録書のため、データ活用ができず、書類の検索にも時間がかかる

取り組むべき課題
  • 手書きの製造記録書のため、データ活用ができず、書類の検索にも時間がかかる
解決策
  • 帳票フォームの統一化、ルール化により、情報不足の解消
改善効果
  • 文書の検索時間の削減
  • データ活用の有効化

システム導入後の効果

※ 458時間 × 平均人件費 2,000円 = 916,000円/月 の効果が出ている(1年で投資回収見込み)

注記:事例の内容は2021年2月時点の情報です。

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