タイムスタンプとは?仕組みや役割、電子帳簿保存法改正の影響などを解説

2025.03.11

タイムスタンプとは?
仕組みや役割、電子帳簿保存法改正の影響などを解説

タイムスタンプを付与するPC上のファイル

デジタル化が進む現代のビジネスシーンで、電子データの信頼性を確保する重要な技術として注目を集めているタイムスタンプ。電子帳簿保存法の改正により、その重要性は一層高まっています。本記事では、タイムスタンプの基本的な仕組みから実務での活用方法、最新の法改正による影響まで、詳しく解説します。

タイムスタンプの定義

タイムスタンプは、電子データがいつ作成されたか、または、いつ変更されたかを証明するデジタル技術です。コンピューター上での時刻の取り扱いは、1970年1月1日からの経過秒数を数える「UNIX時間」という概念に基づいています。

この技術により、電子データに「タイムスタンプ」という時刻証明を付与することで、そのデータがある特定の時点で確かに存在していたことを証明できます。銀行の取引記録や契約書など、データの信頼性が重要な場面で広く活用されています。

改ざん防止技術としての役割

タイムスタンプはデータの改ざんを防止する重要な機能を持っています。電子署名が作成者の証明を行うのに対し、タイムスタンプはデータの作成時刻や存在時刻を証明します。これにより、データが後から改ざんされた場合、タイムスタンプの検証時に不整合が発生し、改ざんを検知することが可能となります。

データの整合性維持は、組織のデータ管理において重要です。適切なアクセス制御とセキュリティー対策により、不正アクセスやデータ侵害からの保護が可能になります。これにより、機密情報や個人情報の安全性が確保されます。

データの整合性が維持されることで、システム全体の信頼性が向上し、予期しない動作や障害のリスクが低減します。

タイムスタンプの検証は、電子文書から生成されたハッシュ値の比較によって行われます。ハッシュ値は文書の「電子的な指紋」のような役割を果たし、文書が1文字でも変更されると全く異なる値になるという特徴があります。

タイムスタンプの検証では、まず現在の電子文書からハッシュ値を新たに生成します。次に、タイムスタンプに記録された元のハッシュ値を取得し、両者を照合します。文書が改ざんされた場合、元の文書から生成されたハッシュ値とタイムスタンプ内のハッシュ値が一致せず、またタイムスタンプのデジタル署名が無効となるため、不整合が発生します。

電子データの原本性を証明する仕組み

タイムスタンプによる原本性の証明は、複数のステップで構成される精密なプロセスです。最初に対象となる電子データからハッシュ値が生成されます。

続いて時刻認証局(TSA)がこのハッシュ値と時刻情報を結合します。その後、TSAが電子署名を付与し、最終的に署名済みタイムスタンプトークンが発行されます。

このような段階的なプロセスを経ることで、データの存在時刻と完全性が確実に保証されます。

ファイルの原本性を証明しているイメージ

電子帳簿保存法の概要と目的

電子帳簿保存法は、帳簿書類の電子的な保存を認める法律として制定されました。2022年の改正では、事務負担の軽減と税務手続きのデジタル化の促進を主な目的としています。

この改正により、スキャナ保存要件の緩和や電子取引データの保存義務化が実施され、タイムスタンプ要件についても見直しが行われました。

事業者は適切な要件を満たすことで、紙の書類をデジタルデータとして保存することが可能となります。

対象となる書類の種類

タイムスタンプが必要な書類は、主に国税関係の電子データとして保存される書類に該当します。具体的には以下のものが含まれます。

  • 領収書: 業務上の支出を証明するために必要
  • 請求書: サービスや商品に対する請求を記録するために必要
  • 仕訳帳: 会計の記録を残すために重要な帳簿
  • 契約書: 取引の内容を証明するために必要

電子帳簿保存法における保存要件について説明します。

電子帳簿等保存では、会計ソフトなどで作成した帳簿や書類を電子データのまま保存する場合、タイムスタンプの付与は不要とされています。

スキャナ保存の場合、紙の請求書や領収書をスキャンして保存する際には、入力期間内にタイムスタンプを付与するか、記録事項の削除・訂正の履歴が残るシステムを使用するか、またはデータ入力・保存が法令上の期限内に行われたことを客観的に確認できる方法のいずれかを選択する必要があります。

電子取引データ保存においては、PDFなどの電子データでやり取りした書類の保存には、タイムスタンプが付与された状態での受領、訂正・削除の履歴が残るシステムの利用、訂正・削除ができないシステムの利用、または事務処理規程に基づく運用のいずれかの要件を満たす必要があります。

法人の場合、確定申告の提出日の翌日から通常7年間の保存が必要です。ただし、欠損金の繰越控除を受ける場合は、最長10年間の保存が求められます。

電子保存を実施する際は、速やかなデータ化とタイムスタンプの付与が推奨されます。また、原本の取り扱いに関する社内ルールを策定し、検索機能や閲覧機能など、適切なシステム要件を満たすことが求められます。これらの要件を満たすことで、税務調査等への対応が円滑になり、業務効率の向上にもつながります。

タイムスタンプが満たすべき要件と適用範囲

タイムスタンプには、真実性と可視性の確保という二つの重要な要件があります。

真実性の確保では、高度なハッシュアルゴリズムを用いた改ざん防止機能を実装し、タイムスタンプの検証が常時可能な状態を維持します。また、データへのアクセス記録を確実に保持することで、操作の透明性を確保します。

可視性の確保においては、タイムスタンプが付与された電子データを画面表示や印刷で確認できる機能が必要です。また、必要な文書をすぐに探し出せる検索機能や、データの長期保存を可能にする確実なバックアップ体制も求められます。

これらの要件を適切に満たすことで、タイムスタンプ付きの電子データは、法的な証拠能力を持つものとして認められ、電子帳簿保存法などの法令要件にも対応することができます。

タイムスタンプ付与の流れ:PDFファイルなど

PDFファイルにタイムスタンプを付与するためには、いくつかの重要な手順があります。

まず、信頼性の高いタイムスタンプサービスに登録する必要があります。タイムスタンプサービスには、認証局系とクラウド系の2種類があり、選定は企業のニーズに合わせて行います。登録後、サービスから提供されるAPIや専用ソフトウェアを使ってタイムスタンプを適用する準備を整えます。

次に、専用ソフトウェアをインストールします。このソフトウェアは、タイムスタンプサービスと連携し、PDFファイルにタイムスタンプを埋め込む役割を果たします。ソフトウェアのインストールが完了したら、タイムスタンプを付与したいPDFファイルを選択します。これには、単一ファイルだけでなく、複数ファイルの一括処理も可能です。

ファイルを選んだ後、タイムスタンプを実行します。タイムスタンプは、PDFファイルのメタデータとして記録され、正確な時刻とともに、その時刻にファイルが作成または変更されたことを証明します。付与されたタイムスタンプは、後から改ざんされていないことを保証するために暗号化されます。

タイムスタンプを付与した後は、必ずその正確性を検証します。検証ツールを使って、タイムスタンプが正しく反映されているか確認します。最後に、タイムスタンプが付与されたPDFファイルは、安全な場所に保存します。保存する際は、バックアップや暗号化処理を施し、ファイルの整合性を保つための対策を講じます。

これらの手順を適切に実施することで、法的要件を満たし、信頼性の高いデータ保存が実現できます。

タイムスタンプサービスの種類と選び方

タイムスタンプサービスには、認証局系とクラウド系の2種類があります。選択肢は、企業の規模や用途に応じて異なります。

認証局系サービスは、国家認定を受けた高い信頼性を誇ります。正確な時刻管理、セキュリティー面での優位性(HSM(Hardware Security Module、暗号処理を行うための専用のハードウェアデバイス)利用)、24時間サポートが特徴ですが、導入コストが高いです。

クラウド系サービスは、手軽で柔軟性があり、導入が簡単でコストも抑えられます。API連携が容易で業務効率化機能が充実していますが、時刻精度や証明書の信頼性は、認証局系に比べてやや劣ります。

選定時は、信頼性(時刻精度やセキュリティー)、コスト(初期費用・運用費用)、操作性、サポート体制、将来性を総合的に評価することが重要です。特に、電子帳簿保存法への対応が求められる場合、認証局系を検討すると良いでしょう。

さまざまなタイムスタンプサービスを選択

費用と導入時の準備:無料ツールとの比較も

タイムスタンプの導入にはさまざまなコストが発生します。初期費用は規模や要件によって10万円から100万円程度が目安となります。

また、月額費用として数万円程度、タイムスタンプの発行料金として1通あたり数十円程度が必要となります。

導入に際しては、システム環境の整備が不可欠です。また、社内での運用ルールを明確に定め、関係するスタッフへの教育も実施する必要があります。これらの準備を入念に行うことで、スムーズな導入と運用が可能となります。

トラブルシューティング例

タイムスタンプの運用では、さまざまなトラブルが発生する可能性があります。タイムスタンプ付与時にエラーが発生した場合は、まずネットワーク接続の状態を確認します。

また、証明書の有効期限が切れていないかも確認が必要です。問題が解決しない場合は、サービス提供者のサポートに連絡することが推奨されます。

検証エラーが発生した際は、ファイル形式が適切かどうかの確認や、データが改ざんされていないかの確認が必要です。場合によってはタイムスタンプの再付与も検討する必要があります。

実際の運用でのチェックポイント

日常的な運用においては、複数の重要な確認事項があります。第一に、タイムスタンプの有効期限を定期的に確認することが極めて重要です。タイムスタンプの有効期限切れは文書の法的証拠能力に影響を及ぼすため、有効期限の3か月前から計画的な更新作業を進めることが推奨されます。特に長期保存が必要な文書については、PAdES形式などの長期署名形式の採用を検討する必要があります。

データのバックアップは、システム障害や災害に備えて複数の方法で実施することが望ましいです。オンラインストレージへのバックアップだけでなく、重要なデータについては定期的なオフラインバックアップも実施します。バックアップデータの整合性検証も月次で行い、必要に応じてリストア訓練を実施することで、緊急時の対応力を高めることができます。

システムへのアクセスログの確認は、セキュリティー管理の要となります。通常と異なる時間帯のアクセスや、特定のIPアドレスからの連続的なアクセス試行など、不審な動きを早期に発見できるよう、日次でのログ確認体制を構築します。また、アクセス権限の定期的な見直しも重要で、特に人事異動や退職時には速やかな権限の変更・削除が必要です。

システム全体の動作状況モニタリングでは、CPUやメモリ使用率、ストレージ容量、ネットワーク負荷などの基本的な指標に加え、タイムスタンプ発行の処理時間や成功率なども監視します。特に業務のピーク時における処理遅延や、エラーの発生には注意が必要です。これらの指標に基づいて、システムのキャパシティープランニングや性能改善を計画的に実施することが重要です。

最新の法改正内容とその影響

2024年度の電子帳簿保存法改正では、さらなる要件の緩和が実施されています。これにより、企業の電子化への移行がより容易になりました。

e-文書法は、民間企業において保存義務のある法定文書の電子保存に関するルールを定めています。会社法や商法に基づく帳簿類、議事録、契約書類などが対象となります。

電子署名法は電子署名の法的効力を規定し、電子文書の真正性を確保するための法律です。

電子化促進策も拡充され、より多くの企業がデジタル化に取り組みやすい環境が整備されています。

行政手続きにおいては、原則すべての手続きでGビズIDの採用を目指し、企業の行政手続きの利便性を向上させています。

アナログ規制のうち、多くの見直しが必要とされ、見直しが完了している条項も目立ってきています。

技術の進歩

タイムスタンプ技術は日々進化を続けています。近年はブロックチェーン技術との連携が注目を集めており、より強固なセキュリティーと透明性の確保が可能となっています。

また、人工知能技術の活用により、タイムスタンプの付与や検証プロセスの自動化が進んでいます。

クラウドサービスの発展により、より使いやすく柔軟な運用が可能になっているのも特徴的です。これらの技術革新により、タイムスタンプの活用範囲は今後さらに拡大すると予想されます。

タイムスタンプの利用が広がる分野

タイムスタンプの活用は、従来の文書管理の枠を超えて多様な分野に広がっています。電子契約の分野では、契約の締結時刻を証明する重要な要素として活用されています。

知的財産管理においては、発明や創作物の存在時期を証明する手段として注目されています。医療分野では、診療記録の完全性を保証する手段として採用が進んでいます。また、研究データの信頼性確保やIoTデータの証明など、新しい活用方法も次々と生まれています。

法令遵守できるシステムでタイムスタンプを利用

タイムスタンプは、デジタル社会における電子データの信頼性を確保する重要な技術として、ますます注目を集めています。電子帳簿保存法の改正により、その導入は多くの企業にとって必須となりました。

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