インボイス制度の開始に伴う適格請求書発行事業者の登録方法 登録が必要になる場合についても解説

2022.07.29

インボイス制度の開始に伴う適格請求書発行事業者の登録方法
登録が必要になる場合についても解説

インボイス制度の開始に伴う適格請求書発行事業者の登録方法 登録が必要になる場合についても解説

インボイスを発行できるようになるためには、適格請求書発行事業者の登録が必要です。手続き方法によってはかかる期間が異なるため、余裕をもって進められるようにしましょう。

今回は、インボイス制度の登録申請について、書類とe-Taxの両方を解説していきます。他にも登録申請を行う上での注意点についても触れておりますので、インボイス制度登録の際に参考にしてください。

インボイス制度とは「適格請求書保存方式」のこと。つまり、「請求者側が既定事項を記載したインボイス(適格請求書)を発行することについて定めた制度」であり、インボイスを用いることで仕入税額控除が受けられるようになります。

インボイス制度において、免税事業者への影響が大きく取り沙汰されていますが、課税事業者においてもそのままではいられません。仕入税額控除を受けるために欠かせないインボイスを発行するためには、適格請求書発行事業者になる必要があり、適格請求書発行時業者になるには税務署での登録申請が必要です。

適格請求書発行事業者の登録をする場合、申請書の提出またはe-TaxによるWeb申請ができます。以下ではそれぞれの登録方法について解説していきます。

紙による登録申請

紙の申請書の場合は、下記の手順に沿って登録申請を行います。

  1. 登録申請書フォーマット別窓で開きますをダウンロードする
  2. 申請書を作成する
  3. インボイス登録センターに郵送する

ちなみに登録申請書フォーマットは、国内事業者用と海外事業者用とで分かれているので注意が必要です。申請書を作成し、インボイス登録センターに郵送したら、こちらで書類の審査が行われます。この審査に通れば登録番号が記載された登録通知書が送付され、適格請求書発行事業者として認められます。

紙による登録申請は1ヶ月ほどの期間がかかります。受付状況や混雑具合によっては、多少前後することを留意しておきましょう。

では、ここから詳しく説明していきます。

登録申請書の書き方

登録申請書の書き方は、現時点で免税事業者か課税事業者かで異なります。正確に記載できていないと、再申請することになり、登録時期が遅れるので注意して記入を進めましょう。

登録申請書の書き方

国税庁HP『適格請求書発行事業者の登録申請手続(国内事業者用)』より引用

書面の提出は「インボイス登録センター」へ

作成が終わった書類の提出先は、インボイス登録センターです。各地域によって管轄のセンターが異なるので、提出先を間違えないようにしておきましょう。

各センター 管轄地域
札幌国税局インボイス登録センター別窓で開きます 北海道
仙台国税局インボイス登録センター別窓で開きます 青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県
関東信越国税局インボイス登録センター別窓で開きます 茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、新潟県、長野県
東京国税局インボイス登録センター別窓で開きます 千葉県、東京都、神奈川県、山梨県
金沢国税局インボイス登録センター別窓で開きます 富山県、石川県、福井県
名古屋国税局インボイス登録センター別窓で開きます 岐阜県、静岡県、愛知県、三重県
大阪国税局インボイス登録センター別窓で開きます 滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県
広島国税局インボイス登録センター別窓で開きます 鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県
高松国税局インボイス登録センター別窓で開きます 徳島県、香川県、愛媛県、高知県
福岡国税局インボイス登録センター別窓で開きます 福岡県、佐賀県、長崎県
熊本国税局インボイス登録センター別窓で開きます 熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県
沖縄国税事務所インボイス登録センター別窓で開きます 沖縄

引用元:国税庁 各局(所)インボイス登録センターの管轄地域別窓で開きます

e-Taxによる登録申請

e-Taxで登録申請をする場合は、下記の3つの方法で申請が可能です。

方法 電子証明書 ソフトの
インストール
利用端末 利用可能者 税理士による
代理送信
e-Taxソフト 必要 必要 パソコン 法人・個人事業者 可能
e-Taxソフト(WEB版) 必要 不要 パソコン 個人事業者のみ 不可
e-Taxソフト(SP版) 必要 不要 スマートフォン・タブレット 法人・個人事業者 可能

e-Taxでの申請には、マイナンバーカード等の電子証明書が必要です。また、e-Taxを利用するためには、利用者識別番号と暗証番号が必要になるので、事前に準備しておくことでスムーズに申請を進められます。

ネット申請は「WEB版」「SP版」がおすすめ

e-Taxで申請する場合は、「WEB版」もしくは「SP版」の利用がおすすめです。これらの申請方法では、ソフトのインストールが不要なだけでなく、申請データの作成に「問答形式」を採用しているため、申請に必要な情報の記入漏れを防げます。

一方、ソフトでの申請はインストールが必要なうえに、手書きと同様に各項目に記入することになるため、記入漏れが発生しやすく登録がスムーズにいかない場合があり、注意が必要です。

登録申請を行う際には次のような点に注意しておきましょう。

【登録申請を行う上での注意点】
  • 提出期限に注意
  • 記入漏れ・ミスはないように申請書を作成
  • 免税事業者は追加記入事項がある
  • 登録申請の取り消しには別の用紙を再提出しなくてはならない

書類の再提出を求められた場合は、手続きにかかる期間が延びてしまうため、記入漏れ・ミスと期限は特に意識しておきましょう。

提出期限に注意

適格請求書発行事業者になるのが遅れてインボイスの発行ができない期間が生じてしまうと、その間、取引先とのやり取りにおいて、取引先側にかかった仕入税額の控除ができなくなります。取引先側の税額負担が大きくなり、今後の取引に影響が出ることも危惧されるため注意しておきましょう。登録申請は申請してからその場で受理されるのではなく、審査を終えてからになるため、処理されるまでに下記の期間を要します。

【適格請求書発行事業者の登録方法による処理期間】
  • 書類:約1ヶ月
  • e-Tax:約2週間

登録期限間際など、登録者が集中した場合などは、上記よりも時間がかかることがあるため、処理期間を考慮して登録申請を行いましょう。

記入漏れ・ミスはないように申請書を作成

申請用紙に記入漏れや記載ミスがあると、審査が通らず差し戻しとなります。その場合、再度書類を作成して申請する手順を踏むことになるため、登録までに時間を要してしまいます。無駄な時間を消費しないよう、申請書は正確に作成しましょう。申請書作成で注意したい点は下記のとおりです。

【申請書作成の注意点】
  • 書類の貼付が漏れている
  • 株式会社や所在地などを省略している
  • チェックすべき箇所のチェックが漏れている

一回で申請が許可されるように、記入後は郵送する前に書類を見返しておきましょう。

免税事業者は追加記入事項がある

免税事業者の場合は2枚目にも記入事項があるため、忘れないように対応しましょう。免税事業者の記入事項にはチェックボックスが2つありますが、希望する内容によってチェックを入れる箇所が異なります。

「適格請求書発行事業者の登録申請書」(次葉)の記載例【法人用】

それぞれ次のような違いがあるため、どうすべきかをよく考えてからチェックを付けましょう。

  • 「上」にチェックを入れる場合・・・令和5年(2023年)10月1日から適格請求書発行事業者になりたい
  • 「下」にチェックを入れる場合・・・消費税課税事業者(選択)届出書を提出して、課税期間の初日から適格請求書発行事業者になりたい

登録申請の取り消しには別の用紙を再提出しなくてはならない

「インボイス制度に登録したけど、何らかの事情により登録の取り消したい」という場合は、「適格請求書発行事業者の取消しを求める旨の届出書別窓で開きます」を提出する必要があります。ただし、届出書を提出すればすぐに登録が取り消されるわけではなく、届出書を出すタイミングでその効力を失うタイミングも異なります。

届出を出すタイミング 登録取り消し(効力失効)のタイミング
課税期間が終了する15日以前 翌課税期間の初日
課税期間が終了する15日前“以降” 翌々課税期間の初日

つまり、課税期間の途中で届出書を出した場合は、その課税期間中は登録されたままとなりますが、課税期間が残り15日を切ったタイミングで届出書を出した場合は、翌課税期間も効力を持ち続けることになります。

インボイス制度において、適格請求書発行事業者の登録が必要な人は下記の通りです。

適格請求書発行事業者(課税事業者)の登録が必要な人
  • 取引先が課税事業者の人
  • 取引先から課税事業者に転換を要求されている人

インボイス制度の対象は課税事業者ですが、消費税を免除されている免税事業者も取引相手によっては登録する必要性が出てきます。

取引先が課税事業者の人

取引先が課税事業者の場合、適格請求書発行事業者でない事業者はインボイスを発行できないため取引先が仕入税額控除を受けられなくなります。そうなると販売時に預かった消費税から仕入で払った消費税を差し引くことができないため、取引先は収益が減少してしまいます。

つまり、自身が払うべき消費税を取引先に負担してもらう形になります。このような事態を避けるためにも取引先が課税事業者の場合は、適格請求書発行事業者の登録を行う必要が出てきます。

取引先から課税事業者に転換を要求されている人

インボイスの発行ができないと取引先の消費税額の負担が増えます。免税事業者を含む適格請求書発行事業者でない事業者は、取引先から適格請求書発行事業者への転換を求められるケースも考えられます。もしこれに応じられない、または代替案がない場合は、取引中止もあり得ることを留意しておきましょう。

適格請求書発行事業者登録の書類を送り、実際に登録されると登録番号と事業者の情報が公表されます。登録情報は国税庁の「適格請求書発行事業者公表サイト別窓で開きます」で登録番号を入力すれば確認可能です。ちなみに発行された適格請求書に記載されている取引先の登録番号を入力すれば、取引時点で効力が失効していないかといった情報も調べられます。

インボイス制度への登録はBtoB事業者に大きく関係してきます。取引先との良好な関係を続けるためにも、早い内から準備しておきましょう。登録方法は書類とe-Taxから選択可能です。処理されるまでの期間が早いため、e-Tax、特にWeb版とスマートフォン版がおすすめです。