2023.08.18
QCDSとは?
意味やQCDとの違い、改善方法を徹底解説
製品を評価する際に活用するQCDSという指標は、製造業市場上における自社の価値を高めるうえで欠かせない指標の一つとなっています。もし、QCDSを意識した業務運営を心がけることができれば、自然と自社製品の質や管理体制の向上が見込めるだけでなく、顧客満足度の向上に繋げることができるでしょう。
そこで当記事では、QCDSの基本情報とQCDSを改善させる方法について解説します。この内容を参考にQCDSを意識することの重要性を知り、各業務工程の改善を実施することで自社の価値を高めていきましょう。
QCDSとは
QCDSとは、製品を評価する際に使われる指標の一つです。以下4項目の頭文字をとった用語で、それぞれの質を高めることによって企業価値を高められると考えられています。
【QCDSを構成する4つの項目】
- Quality(クオリティ):顧客が求める製品の品質基準
- Cost(コスト):製造にかかるコスト・製品価格
- Delivery(デリバリー):顧客が希望する納期
- Service(サービス):顧客に対して行うサービス・サポート
製造業に携わる企業は、これら4項目を企業内で客観的に評価し、顧客の要望に合わせて改善していくことが求められます。物価の変動や世間の製品に対するトレンドなど様々な観点からQCDSを評価するため、基本的には改善作業に終わりが無いことを知っておきましょう。
QCDSの意味
QCDSにはそれぞれきちんとした意味があり、正しく理解することが大切です。意味を知らずしてQCDSを意識した業務改善は行えませんし、取り組む際の具体的な方法を決めることもできないでしょう。そこで以降では、QCDSのそれぞれの項目の意味を詳しく解説するので参考にしてください。
Quality(クオリティ)
Quality(クオリティ)とは、顧客が求める製品の品質を意味します。製造業において品質は最も重要な項目の一つとして認識されており、品質を担保できない企業に製造依頼はきません。そのため、各企業は「品質規格書」や「作業手順書」などあらゆる書類や方法を使って品質を担保できるように努めています。
製品の品質は企業によって求められる基準が異なるため、要望を正しく理解して基準を明確にしておくことが大切です。基準を明確に把握しておけば、過度に品質を高めすぎる必要もなくなるため、コストパフォーマンス良く品質担保に努めることができます。
Cost(コスト)
Cost(コスト)とは、製品の製造にかかるコストや売却時の製品価格を意味します。製造から販売までの全ての工程で発生するコスト全体を把握することで、コストの削減や適正な販売価格を算出することが可能です。
適正価格で取引を行うことができれば顧客の信用を失うこともありませんし、健全な経営状態を築けるでしょう。企業運営を健全に行えるかどうかはコストによる影響が大きく、業務改善を進める際は特に意識したいポイントとも言えます。健全な経営状況が実現すれば、顧客も安心して取引を継続できるでしょう。
Delivery(デリバリー)
Delivery(デリバリー)とは、顧客との取引で設定される納期を意味します。製造業において納期の遅れは最も許されない行為です。もし遅れるようなことがあれば、その被害は自社だけでなく取引先や最終納品メーカーなど全ての関連企業を巻きこむため、被害額は計り知れないものとなるでしょう。
そのため、納期を確実に守ることのできる生産計画を立てることが企業には求められます。場合によっては生産計画を顧客とシェアすることで、顧客側に納期通りに納品される安心感を抱いてもらうこともできるでしょう。
Service(サービス)
Service(サービス)とは、顧客に対するサービス・サポートを意味します。近年の市場環境において、顧客体験や顧客満足度は非常に重要視される項目の一つとなっています。これらを高めることで顧客ロイヤリティの向上が図れ、自社のファンを獲得することができるでしょう。
製品価値を高めることももちろん重要ですが、それ以上に顧客体験や顧客満足度の項目は重要視されており、最近ではアフターフォローの強化を図っている企業なども多くみられます。
以下のコラムでは必要な資材の調達や製造現場の管理・納品予定などを管理して取引先に納めるまでを、きっちりまとめるための業務(生産管理)について、詳しく解説していますので、生産管理ついて深く理解したい方はぜひ参考にしてみてください。
QCDSとQCDの違い
そもそもQCDSは、QCDという製造業に欠かせない3項目を表す用語から派生しています。「Service(サービス)」でも触れたように、顧客体験や顧客満足度が重視される昨今において、QCDSはQCD以上に注目を集める指標となっています。
QCDS以外にも「QCDF」「QCDR」といったワードがありますが、これらもすべてQCDから派生しています。製造業で重視される項目を表す用語は色々とありますが、それらは全てQCDをベースに考えられていることを知っておきましょう。そうすることで、QCDの重要性はそのままに、サービスという付加価値を意識した取り組みができるようになるはずです。
QCDSの優先順位
QCDSには優先順位があり、「Q→C→D→S」の順番で優先度が高いです。ここで理解しておきたいのは、各項目の関係性です。それぞれの項目は「お互いに両立することのない関係性」すなわちトレードオフの関係性にあります。(画像参照)
QCDのトレードオフの関係
どういうことかというと、各項目を0~100の点数で表すとした場合、「Q=100点、C=100点、D=100点」という配分にはならないことを意味します。全てを両立することができないため、取り組む際は全体のバランスを考えて改善に取り組む必要があるのですが、その際におろそかにしてはいけない順番として「Q→C→D→S」があります。
QCDSを改善させる方法
QCDSの優先順位を把握したら、実際に改善作業に入ります。「QCDSの優先順位」でも取り上げたように、それぞれの項目が独立していて両立することは無いため、一つ一つに改善策を設けて取り組むことが大切です。
Qualityの改善
Qualityの改善方法としては、4M管理の最適化が最も効率的です。4Mとは、「Man(人)・Machine(機械)・Material(材料)・Method(方法)」の4つの要素を指す用語で、製造業においては生産工程を適切に管理するのに役立つ要素として活用されています。
4Mを見える化することにより、品質に関わる項目の状態を明確に把握することが可能です。品質に関わる項目を見える化しなければ、自社の製品の品質状況を正確に把握することができませんし、改善する箇所を分析することもできません。
4Mの見える化が完了したら、それぞれの項目の基準と品質基準を設けましょう。「製造に着手する人の条件」「製造する機械の固定化」「使用材料の指定」「手順等の方法の確立」といったように4Mの基準を設けて、それらを基に品質の基準を整備してください。
Costの改善
Costの改善方法には、Qualityと同じように項目の見える化をすることで「最新の適正価格」を把握し続けるといったものがあります。原材料費や人件費などのコストは、社会情勢や取引先の変化によって変動し続けるため、適切な管理のもとで最適価格を算出し続けることが大切です。
もし価格が高騰したことにより自社で負担する額が増えれば、負担額を切り詰めるために従業員に過度な負担を押し付けてしまう可能性があります。従業員の負担が増えると品質の低下を招く可能性が高まるため、一定の品質を確保したいのであれば適正価格を算出して余裕を持たなくてはいけないでしょう。コストに合わせて品質基準を下げるという方法もありますが、最終販売先が個人ユーザーの場合は満足度の低下を招く可能性があるため、あまりおすすめできません。
Deliveryの改善
Deliveryの改善方法には、納期遅れを見越した生産計画の立案が挙げられます。納期遅れは許されないことですが、基本的に多くの企業で製造工程の遅れは発生しやすい傾向にあります。そのため、製造工程が遅れることを見越した生産計画を立てることが重要です。
期間にどのくらいの余裕を持つべきか、過去のトラブル履歴等を参考に算出してください。例えば、品質の定期巡回を1日1回行う企業の場合、最大でも1日分の全損で済むので、1~2日分の余裕を持って計画を立てるのが最適です。
Serviceの改善
Serviceの改善方法は、顧客が求める水準・要望・コストなどを把握して付加価値として与えられるサービスを模索することが挙げられます。顧客が何を求めているのか、何をすれば付加価値として新たな価値提供ができるのかを考えて実行することで、顧客満足度の向上に繋がるでしょう。
ある程度、製品の品質を担保できる状況が構築できているのなら、既存のコスト(時間や費用)をサービスに振り分けることで一定の顧客満足度の向上が期待できます。QCDSはトレードオフの関係にあるため、何を削ってサービスに費やせるかをしっかりと検討することが大切になってくるでしょう。
まとめ
QCDSとは、製品を評価する際に使われる指標の一つで、Quality(クオリティ)、Cost(コスト)、Delivery(デリバリー)、Service(サービス)の頭文字をとった用語として知られています。従来までの製造業では、QCDのみが重視されているのが一般的でしたが、昨今の顧客満足度や顧客体験の重要性が高まってきた流れによって、S(Service)が追加されたQCDSが注目を受けるようになりました。
QCDSを意識した業務改善を行うことで、企業価値の底上げが期待できます。ただ、QCDSはそれぞれが独立しているだけでなく、トレードオフの関係にもあるため全てを両立させることができません。全体のバランスを見て、自社の業務形態に合わせた改善に取り組むことが重要となってくるため、全ての項目の状況を明確に把握して順次適切に改善策を実施していくことが重要です。