2023.07.27
カイゼンとは?もう古い? 考え方や効果的に進めるポイントを解説
「カイゼン」は製造業に携わる人なら必ず押さえておきたい用語の一つです。製造業では、高い品質や納期の遵守が常に求められるため、新製品や新設備などが増えていく中でそれらを維持するのに高い管理能力等が求められます。そういった時に役立つのが「カイゼン」という取り組みです。
当記事では、カイゼンについて解説するとともに、具体的な進め方やポイントなどもご紹介します。製造業に携わる方や、現状よりもさらに良い現場づくりを目指している方などはぜひ参考にしてみてください。
カイゼンとは?
カイゼンとは、業務内容やプロセスなどを見直して現状よりもさらに効率化を図り、より良い状態を目指す取り組みのことを指します。漢字表記の「改善」とは分けて使われるのが一般的で、それぞれ以下のような違いに沿って使用されます。
【カイゼンと改善の違い】
- カイゼン:現状をより良い状態へ変化させることを目的に行なわれる取り組み
- 改善:現時点で把握できるマイナス面(課題点や問題点など)を修正して、良い状態にしていく取り組みのこと
カイゼンとは、業務内容やプロセスなどを見直して現状よりもさらに効率化を図り、より良い状態を目指す取り組みのことを指します。漢字表記の「改善」とは分けて使われるのが一般的で、それぞれ以下のような違いに沿って使用されます。
カイゼンの考え方
カイゼンは、課題点を解決することだけでなく、現状の中からさらなる向上ポイントを見つけて取り組むことでもあるため、常にカイゼンに取り組み続ける意識を持たなくてはいけません。そのため、カイゼンに取り組む方、取り組みを指示する方は以下の考え方を意識しておくことをおすすめします。
【カイゼンの考え方】
- 現状に満足せず効率化ポイントを探し続ける
- 他社から指摘される前に自ら気づく意識で現場を把握・客観視する
- もっと現場全体の負担が軽減する(楽ができる)ような取り組みが無いかを模索し続ける
「改善」の場合は改善点や問題点を解決すればそこで終わりますが、カイゼンの場合は終わりがないことを知っておきましょう。常に現場の効率化を図るための向上思考を持ち続けることが、カイゼンの取り組みの質を高めます。
トヨタ式「カイゼン」とは
上記の違いに沿って、カイゼンと改善は使い分けられます。つまり、カイゼンは現場の現状がどういった状態かを問わずに、取り組んでいけるのが特徴です。
カイゼンのルーツは現自動車メーカーのトヨタが考案した「トヨタ式カイゼン」だと言われています。トヨタ式のカイゼンは世界的にも知名度が高く、製造業が取り組むべき模範としても有名です。
【7つのムダ】
- 加工のムダ
- 在庫のムダ
- 造りすぎのムダ
- 手待ちのムダ
- 動作のムダ
- 運搬のムダ
- 不良・手直しのムダ
カイゼンは古い?
カイゼンの取り組み規範には「ムダの排除」といった基本的な項目が多く、新しい取り組みとしては認識されていません。そのため、時代にそぐわない取り組みとして考えられることも多いですが、「品質の安定」や「生産工程の安定」が求められる製造業においては、基本項目が重視されるので古い考えとして淘汰されることは無いでしょう。
実際に、今もなお取り組み続けている企業は多いですし、最近では建設業やサービス業など、幅広い業界でも活用されたりしています。ただ、カイゼンの基本的な考えはDX化が進む現代ではマッチしないケースも出てきているため、これまでのカイゼンの良い点は踏襲しつつ取り組むことが重要となってくる点には、注意が必要といえるでしょう。
カイゼンの進め方
カイゼンを実際に製造現場へ導入していく際は、ある程度の取り組み順序を決めておくとスムーズに進められます。また、順序を決めておけば部門別に取り組む際もやり方が統一され、後々都合がよくなるケースも多いため、あらかじめ企業全体の基本事項として「カイゼンの進め方」を決めておくことを推奨します。
以下では、一般的なカイゼンの進め方をご紹介します。PDCAを意識したうえで、以下の取り組みを遂行していきましょう。
【カイゼンの進め方】
- 課題の洗い出し
- 課題に対して改善できるアイデアを出す
- アイデアを実行し評価を行う
課題の洗い出し
課題の洗い出しでは、現状を把握したうえで具体的な問題点や改善点を浮き彫りにしていきます。課題を洗い出すことで、カイゼンに従事する人が明確な目的をもって取り組めるようになるでしょう。
課題を洗い出す際は、日常作業において危険に感じる部分や不便に感じる部分などに着目すると、質の高い課題点・改善点を見つけやすくなります。質の高い課題点・改善点を洗い出したら、それらの改善によって得られるメリットを具体的にイメージしやすくなるように従業員へ周知し、高いモチベーションを維持しながら取り組めるように工夫していきましょう。
課題に対して改善できるアイデアを出す
課題を洗い出したら、改善できるアイデアを出していきましょう。アイデアの具体的な内容は課題ごとに異なりますが、全体の共通点として、悪い部分だけに焦点を当てすぎずにアイデア出しをしていくことが大切です。そのためには、「現状を良くするためにはどうしたらいいか」という視点でアイデアを出していきましょう。そうしないと、悪い部分だけを改善した瞬間に目的が達成されて、カイゼンがストップしてしまう可能性が高まってしまいます。
一例ではありますが、具体的なカイゼンのアイデアとして以下の例を並べておきます。
【課題を改善するためのアイデアの例】
- 作業手順の改善
- 作業人員の配置・構成を改善
- 属人化している作業の改善
アイデアを実行し評価を行う
アイデアを出したら実際に取り組む内容を決めて、実行に移しましょう。実行していく中で、さらに意識すべきポイントや改善点などが出てくることが予想されるため、もし出てきた場合は必ず記録しておいてください。そして、記録した内容をもとに実行した内容を評価し、PDCAサイクルを回していきましょう。
PDCAサイクルとは、Plan(計画)・Do(実行)・Check(評価)・Action(改善)の頭文字をとったもので、一連の改善業務をサイクル化した行動規範です。基本的にはPDCAサイクルに沿って常に良い状態を目指し続けるのがカイゼンであるため、以下の画像を参考に取り組んでみましょう。
カイゼンと同時に取り組むべき活動
カイゼンを進めていくうえで様々なアイデアを出して取り組んでいくことになりますが、それらのアイデアとは別で、同時に取り組んでいくべき活動として「3M」と「5S」があります。3Mと5Sは工場などに勤めていれば一度は耳にするであろう言葉で、職場環境の整備と業務改善を行う重要な活動として認識されています。
以降では「3M」と「5S」の基本情報と、それぞれの重要性について解説していきます。
3M
3Mとは「ムリ・ムダ・ムラ」をまとめて表現した用語のことで、トヨタが分類した「7つのムダ」もこの3Mに含まれます。それぞれの概要は以下の通りです。
【3Mの概念】
- ムリ:従業員が能力値以上の業務につくことで、負担が大きくなってしまうこと。
- ムダ:特に意味を持たない作業のこと。トヨタの「7つのムダ」も該当します。
- ムラ:仕事の品質が一定でない状態のこと。
3Mを意識したカイゼンに取り組むことで、効果的に業務効率化が図れるようになるため、カイゼンの基本概念として意識しておきましょう。また、3Mを意識するためには事前の業務状態の調査も重要です。業務状態を的確に把握できていなければ、作業のどの部分にムリ・ムダ・ムラがあるのかを把握できません。効果的なカイゼンに取り組むためにも、3Mを意識した業務状態のチェックは欠かさないようにしましょう。
5S
5Sとは、「整理、整頓、清掃、清潔、躾(しつけ)」の総称で、現場環境を健全なものにするための活動として認識されています。整理整頓することで、不要なものが無く、必要なものが適切な場所に保管されるようになります。また、清掃することで埃やごみが少ない現場が実現し、躾が行き届くことで従業員に対する外部からの評価が変化します。
カイゼンは内部的な改善だけでなく、対外的な側面でも効果を発揮する活動であるため、5Sは必ずと言っていいほど取り組む価値があるものです。カイゼンを取り入れていない企業でも、5Sは基本事項として活動している企業が多いので、現場運営の基礎として認識しておきましょう。
以下のコラムでは5Sについてさらに詳しく解説していますので、5Sについて深く理解したい方はぜひ参考にしてみてください。
カイゼンを効果的に進めるためのポイント
ここまではカイゼンの基本的な内容をご紹介してきましたが、以下ではカイゼンの効果をさらに高めるためのポイントをご紹介していきます。すでにカイゼンに取り組んでいる方や、3Mや5Sがしっかりできており、これからカイゼンに取り組もうとしている方はぜひ参考にしてみてください。
【カイゼンを効果的に進めるためのポイント】
-
作業工程を可視化する
└カイゼンで取り組む内容を明確化するためにも、既存の作業工程の可視化は欠かせません。可視化したうえで、課題を洗い出して効率よくカイゼンを進めていきましょう。 -
DX化など業務のシステム化を図る
└DX化などのように既存の体制に導入できるシステムは、積極的に導入の検討をしてみましょう。費用面に負担はかかりますが、現場を良くするという目的は達成できる可能性が高いです。 -
人事評価制度にカイゼンの項目も追加する
└カイゼンは従業員が取り組むものであるため、従業員が意欲的に取り組まなければ効果は生まれにくいです。そのため、場合によっては人事評価制度を改めるなどして、カイゼンに取り組む意識を高める工夫が必要となるでしょう。 -
部門間連携を強化する
└カイゼンは企業全体で取り組む活動であるため、部門単体で動くことはほとんどありません。そのため、部門間でカイゼンの協力が必要となる場合に備えて、連携を強化しておくことが大切です。
まとめ
カイゼンとは、業務内容やプロセスなどを見直して現状よりもさらに効率化を図り、より良い状態を目指す取り組みのことを指します。そのため、悪い点が無い、課題点が無いといった企業でも、取り組む価値がある活動です。
カイゼンは現場運営における基本的な項目に注目して取り組むことが多いため、時代にそぐわないと思われることもあります。しかし「品質の安定」や「生産工程の安定」が求められる製造業においては、基本項目が重要であるため時代遅れとは言い切れません。DX化など現場環境が大きく変わっている昨今ではありますが、そういった状態でもカイゼンは十分な効果を発揮するので、自社の環境や需要に合わせてカイゼンの良い面を踏襲しつつ、取り組んでいくことをおすすめします。