2023.08.30
検図方法とは?
重要性や手順、検図のポイント、チェックリストを解説
製造業において「図面」は、必ず必要となる書類の一つです。図面は部品ひとつひとつに応じて作成するのが一般的で、これらの図面同士で整合性が取れていなければ、組み立ての際に不具合等が生じてしまいます。そこで重要視されているのが、図面を検査する「検図」という工程です。検図を知らずして図面の正確性は語れません。設計部門や生産技術部門などに関わる方は、必ず把握しておきましょう。
当記事では、検図の基本情報や手順・ポイントなどを解説します。検図の質を高め、全ての製造工程を円滑に進めるためにも、当記事の内容をぜひ参考にしてください。
検図とは
検図とは、作成した図面を出図(作成した図面を展開すること)する前に、不備等が無いかをチェックすることです。2人以上の担当者に検図を行わせるのが一般的で、複数名で図面の不備や他の図面との整合性を確かめます。そして、図面に問題が無いかを確実にチェックしたうえで出図へと移行します。
検図は現場での経験や図面の細かな知識が必要で、誰でも簡単にできる業務ではありません。というのも、検図をクリアして出図された図面に不備があった場合は、まず検図した担当者の信用性が疑われ、現場全体に多大な迷惑をかけてしまいます。企業側は、こうした重要な役割を持つことを知ったうえで、検図の担当者を選定しなくてはいけません。
製造業における検図の重要性
製造業において検図は、とても重要な工程です。検図が適切になされていないと、図面を基に製造した部品が他の部品と整合性を取れずに不具合を発生させてしまう可能性があります。もし、組み立ての段階で図面によるミスが発覚した場合、「組み立て費用」「製造費用」「材料費用」などの多くが損失となり、その被害額は計り知れないものとなるでしょう。
以上のように、図面による大きな損失を防ぐために行うのが検図であるため、企業側はその重要性を理解したうえで、検図の担当者を選定しましょう。製造業で発生するトラブルの多くが設計によるミスといわれているため、検図による不備を無くすためにも、優秀な人材を2人以上配置したほうが良いでしょう。
検図の手順
以下では、検図の手順を解説します。まずは検図の基本的な手順を把握しなければ、自社に合わせた正確性の高い検図作業に改善することもできません。以下の基本的な手順を押さえたうえで、自社にどのように組み込んでいけるかを検討してみてください。
【検図の手順】
- 安全性を確認
- 仕様書の要求事項を確認
- 組立図を確認
- 部品図面を確認
安全性を確認
図面を作成する際は、部品単体だけに注視して作成するのではなく、組み立てや業務フローなど幅広い視点を持って作成します。そのため、組み立てなどを行う際の安全性をチェックすることも大切です。設計の段階で業務に関わる担当者がケガをする可能性が少しでもあるなら、その可能性を限りなくゼロにするように努めなくてはいけません。
部品の不具合による被害損失はたしかに大きいですが、従業員が大けがを負った際の損失とは比べられません。ケガ無く安全に正確な部品を作るためにも、図面や仕様書で安全性を必ずチェックしましょう。
仕様書の要求事項を確認
安全性を確認して、実際に製品の検図を行う際には、仕様書の要求事項を確認しましょう。基本、製品を企画する前の段階で「どういった製品を作るのか」を記載した仕様書があるはずです。それを参考に検図を行うことで、製品の開発側の意図を組み込んだ図面であるかどうかの判断ができるでしょう。
特に、製品の提案者が自社ではなくクライアントなどの場合は、念入りに仕様書の内容を確認しなくてはいけません。自社であればいつでも要求事項を確認しやすいですが、クライアントの場合は逐一確認しすぎるとコミュニケーションが悪化する可能性も出てきてしまいます。そのことも踏まえて、仕様書の内容をチェックして要求が明確になっているかを確認しておきましょう。
組立図を確認
組立図とは、各部品同士を組み立てた後の状態を図面化したものです。3DCADなどを利用して図面化するのが一般的で、確認する際はCAD上で部品同士の干渉等が無いかをチェックします。ここで干渉が見つかった際は、すぐにその製品図面の再設計が必要となるでしょう。
部品単体のチェックでは気づきにくいことも、組立図だと発覚するケースが多いので、組み立てを必要とする製品の場合は必ず組立図のチェックを行ってください。
以下のコラムでは3DCADの導入効果や注意すべきポイント、導入時にどういった製品比較をすべきか?について詳しく解説していますので、3DCADについて深く理解したい方はぜひ参考にしてみてください。
部品図面を確認
部品図面の確認では、実際に製造するにあたり不備等が無いかをチェックします。この際に重要となってくるのは、加工現場での知識です。加工現場の知識が無ければ、実際に製造したときのことをイメージしながら「正しい図面かどうか」を確認できません。
例えば、プラスチック成形のような分野では、製品部分とスプール・ランナーと呼ばれる無駄な部分をニッパーで処理することが多いのですが、この際にニッパーで処理するゲートの部分の構造に不備があれば、加工時の効率を大幅に下げてしまうことに繋がります。
つまり、ニッパーのサイズや形状など、現場でどのように加工が行われているのかを知ったうえで、部品図面に問題が無いかを確認することが求められるのです。生産効率の視点も含めたうえで、部品図面はチェックしましょう。
効果的に検図を行う際のポイント
「検図の手順」で基本的な手順を把握したら、次は効果的に行うポイントを把握しましょう。検図の重要性は業種の形態などによって異なり、どの程度注力するかの塩梅も異なります。自社に合わせた検図の方法に最適化するためにも、以下のポイントを押さえておくことをおすすめします。
【効果的に検図を行う際のポイント】
- 図面全体が一目で見えるようにする
- チェックリストを活用する
図面全体が一目で見えるようにする
「検査・チェック」という工程で重視されやすい感覚の一つに、「違和感」があります。具体的な根拠は無くても違和感を抱いた場合、ほとんどの場合で何かしらの問題点がある可能性が高いです。この「違和感」を感じるためには、図面全体を一目で見れるような環境を作ることが大切になってきます。
例えば、パソコンで図面を確認するにしても、画面が小さかったり図面が一部切り取られたりしていては、全体を把握しにくくなってしまうでしょう。図面全体が一目で見れるようにする具体的な方法としては、「紙媒体でのチェック」や「ディスプレイが大きいものを導入」といったことが挙げられます。
紙媒体はペーパーレス化の流れに反する形にはなりますが、検図による不具合で発生する損失を踏まえてどうするべきかで判断してください。また、ディスプレイに関しては画面自体を導入する方法もあれば、プロジェクターを利用して複数名でチェックするといった方法もあります。
チェックリストを活用する
検図ではさまざまな項目をチェックしなくてはいけませんが、それらを頭で完璧に覚えておくのは難しいでしょう。もし覚えていられたとしても、それらを漏れなくチェックできる保証はありません。そのため、検図する際はチェックリストを作成することをおすすめします。
実際のところ、検図を行っている企業の多くではチェックリストを採用しているところが多い傾向にあります。この記事を参考に、改めてチェックリストがちゃんと運用されているかを確認しておきましょう。
チェックリストの作り方
チェックリストはパソコンでデータ化しておき、検図をするたびに使用して専用データとして保存しておきましょう。チェックする内容は、検図担当者だけでなく設計部門の担当者なども含めて作成してください。そうすることで、最初の設計段階でのミスも削減されるでしょう。
チェックリストの基本項目ができている場合は、検図担当者に合わせてチェックリストを改良するのもおすすめです。例えば、検図担当者が普段見逃しやすい項目があるのなら、その項目を大きなフォントで記載したり、リストの最初のほうに持ってきたりすることで、見逃し対策に繋げられます。
まとめ
検図とは、作成した図面を出図(作成した図面を展開すること)する前に、不備等が無いかをチェックすることです。製造業において、検図はとても重要な役割を持つ工程として認識されており、検図に不備があれば製造工程全体に悪影響を与えてしまいます。
そのため、検図は図面の知識だけでなく、現場の知識もある程度有していることが大切です。それゆえに、検図担当者を採用する側は、優秀な人材を慎重に配置しなくてはならないでしょう。
検図の工程がしっかりと整備されていれば、円滑な製造現場の運営が実現するだけでなく、損害が発生するリスクを最小限に抑えることも可能です。以上のことを踏まえて、企業は検図の重要性を理解しておきましょう。