テレワークを導入する手順7ステップ|現状やメリット・ポイントを説明

2022.12.26

テレワークを導入する手順7ステップ|
現状やメリット・ポイントを説明

テレワークを導入する手順7ステップ|現状やメリット・ポイントを説明

近年、働き方改革の推進や新型コロナウイルスの流行など、様々な要素によって注目を集めているテレワークは、今もなお導入を開始する企業が増え続けています。テレワークは社員が柔軟な働き方ができるようになる効率的な方法の一つですが、いざ導入しようとなると「何から始めれば良いのかわからない…」と頭を悩ませている方も少なくないのではないでしょうか?

そこで当記事では、テレワークを導入するための手順やポイント、そして導入することで得られるメリットについて解説していきます。テレワーク環境をスムーズに導入して、なるべく良い形でスタートダッシュを切れるように参考にしてみてください。

テレワークとは、離れたという意味を持つ「Tele」と、働くという意味を持つ「Work」を合わせた造語で、場所や時間にとらわれない新しい働き方のことを指します。働き方改革や新型コロナウイルスの影響によって、テレワークを導入する企業が増加傾向にあり、今後も変わらず増えていくことが予測されます。

また、テレワークにはいくつかの種類があり、働き方によって呼び名が異なります。実際に導入するとなった時に、どんな種類があるのか把握しておけば、より柔軟な働き方を推進していくことができるでしょう。

テレワークの種類

テレワークは、厚生労働省と総務省が運営する「テレワーク総合ポータルサイト」内で以下のように定義されています。

在宅勤務

自宅に居ながら就業する働き方です。企業に所属しながら在宅勤務をおこなう「雇用型」と、個人事業主などが行う「自営型」があります。ほぼ毎日在宅勤務としている企業もありますが、コミュニケーションの質や生産性を見直すために、定期的にリアル出社させる「ハイブリッドワーク」に変化している企業も存在します。

サテライトオフィス勤務

会社から離れたサテライトオフィスや、ワークスペースにて就業するやり方です。サテライトオフィスには専用型と共有型があります。

専用型

自社や自社グループの社員専用に企業が独自に用意したサテライトオフィスです。お客様訪問後に近場のサテライトオフィスで仕事をして帰宅するなどといった柔軟な働き方が実現可能です。

共有型

複数の企業や個人事業主が共有で利用するオフィスです。シェアオフィスまたはコワーキングスペースとも呼ばれます。専用スペースを設ける必要がないため、経費を抑えられるというメリットがあります。

モバイルワーク

移動中の新幹線内や飛行機内で就業するやり方です。移動時間を有効活用できるため、生産性を高める効果が期待できる一方、環境を整えるための設備投資が必要になります。

総務省が公開している情報通信白書のデータによると、民間企業におけるテレワークという働き方は、近年増加傾向にあります。導入が急速に進んだ背景には新型コロナウイルスの影響が大きく、流行した年から実施率を大幅に増加させています。

調査の結果では、新型コロナウイルスが拡大して1回目の緊急事態宣言が出されたころには企業のテレワーク実施率は17.6%でしたが、およそ2~3か月後には56.4%に急増しました。緊急事態宣言が解除されてからは少し低下しましたが、2回目の緊急事態宣言が出される頃には38.4%になっています。

また、テレワークの実施率は業種や地域ごとに差があることも確認されています。実施率の高い業種は、情報通信業や学術研究、専門・技術サービス業、金融業などです。一方で実施率の低い業種は医療、介護、福祉が最も低く5%以下というデータでした。飲食サービス業、運輸業なども現場とは離れたところでの就業が難しいことから実施率は低くなっています。

2020年11月に調査された地域別の実施率調査では、36.3%で関東が高く、近畿、東海・北陸・甲信越と続きました。三大都市圏と呼ばれる地域が高い結果が出ています。このように、新型コロナウイルス拡大前からテレワーク自体は行われていたものの、業種や地域ごとに差はありますが、コロナ禍や働き方改革をきっかけに全体的に実施率が伸びたことがわかります。

時間や場所にとらわれない自由な働き方ができるテレワークは、就業する従業員と実施する企業の双方にメリットやデメリットがあります。まず企業側には以下のようなメリットがあります。

多様な人材を獲得できる

テレワークを行うことで従業員のワークライフバランスの実現に繋がるため、多様な人材を獲得しやすくなります。育児や介護が原因で時短勤務になってしまう人や、地方など会社から離れたところに在住している人など、テレワークができることによって勤務時間や通勤時間にとらわれない働き方ができるようになるでしょう。

さらに、最近では就業時以外の生活や家族との時間、趣味や勉強の時間をしっかりと確保したいという人も増えていて、転職や就職先にテレワークを求める人も増加傾向にあります。したがって、テレワークを行なっている企業は、イメージUPも図れるメリットも持ち合わせます。

コストを削減できる

テレワークを導入することによって様々なコストを削減できます。具体的には以下の通りです。

【削減できるコスト】

  • 従業員の交通費
  • 従業員の移動・出張費用
  • 紙資料による印刷代など
  • 会社の光熱費や設備費

従業員の交通費などを減らせることは、企業にとっても大きなコスト削減に繋がります。また、出社する人が少なくなることで、会社の光熱費などを減らすことも可能です。また、規模の小さなオフィスに移転することにより事務所に掛かる経費を削減するなど、様々なコストを削減できるメリットがあります。

事業継続性を確保できる

事業継続性とは、新型コロナウイルスによる外出禁止例や自然災害・テロなどといった不測の事態が発生した場合でも、事業止める事なく継続していくことを意味します。テレワークを導入することで、この事業継続性を高めることが可能です。

実際に2020年に新型コロナウイルスが急拡大した時には、今まで経験したことのない規模のパンデミックであったため、国による外出自粛等により様々な事業が中断し、経済に大きな打撃を与えました。

テレワーク環境を整備していれば、このような事態が発生したとしても事業を継続させていくことができるでしょう。

業務効率が向上する

テレワーク環境を整備する過程で、仕事に必要な紙文書をデジタル化・電子化したり、社内会議やお客様との商談をWeb会議上で行なえるようなコミュニケーション基盤を構築することによって業務効率の向上が期待できます。

営業職で例えると、お客様との商談の際、テレワーク導入前であればお客様先に訪問する必要がありますが、テレワーク環境を整備すれば、Web会議や商談ツールなどを利用してオンライン上で商談を完結させることが可能となり、長い移動時間を削減できるでしょう。浮いた移動時間を活用して商談の準備がより丁寧に行えるなど、時間の有効活用が可能となり、業務の品質向上に繋がるメリットもあります。

次に企業側のデメリットをそれぞれ確認していきましょう。

セキュリティ対策が必須

テレワーク環境には様々な形態があり、従業員の私物パソコンを利用するBYODなどのやり方もありますが、必ず考慮しなければならないのがセキュリティ対策です。テレワークを行うことによって、今まで社内だけを守ればよかった従来の境界型セキュリティ対策が通用しなくなってしまうので、テレワークを行う従業員に持ち出し可能な業務専用のモバイルパソコンを新たに貸与したり、リモートアクセス(VPN)を導入して必ず会社の管理しているネットワークを経由させるなどの対策が必要となります。

勤怠管理の難易度が上がる

従業員の働く場所が多様化することで、労務管理の目が行き届かなくなる可能性があります。特に管理職の方にとって、今まで目の前で仕事をしていたメンバーが、在宅やリモート環境で仕事をすることで目視できない状況になるため、戸惑うケースも発生します。 また、従業員も仕事を切り上げるタイミングを自身でしっかり管理する必要があります。仕事が一段落するまで、遅い時間まで業務を行い、残業過多になるケースもあるため、日々の勤怠をリモートでも管理できるしくみや方法を検討する必要があります。

以上で説明したような企業側の視点のほか、従業員側の視点でも、さまざまなメリット・デメリットが存在します。

従業員にとっては、通勤時間を減らすことによってストレスが減り、生産性の向上に繋がることや、副業などが可能になるというメリットがあります。もう少し詳しくメリットを見ていきましょう。

プライベートで使える時間が増える

通勤が不要になったり、就業場所が自宅になることにより、従業員が自由に使える時間が増え、ワークライフバランスが向上が期待できます。これまで、育児や介護などで十分な労働時間を確保できなかった人材にとっては柔軟な働き方ができるワークスタイルはモチベーションの向上にも繋がりますし、それによって高い生産性も実現可能となります。

自分にあった執務環境を作れる

テレワークでは、自分が最も仕事をしやすい環境を自分自身で整える事ができるため、その結果、業務効率や質の向上が期待できます。 働きやすい環境は個人によって好みがわかれますが、使う道具を自分に合ったものにしたり、休憩のタイミングを自分で決めたりできるため、自分が最もパフォーマンスを発揮できる状態を維持しやすくなります。

自分の業務に集中できる

職場では、その場にいるメンバーと気軽にコミュニケーションを取れるメリットがある一方、業務中に突然話しかけられると、それまで集中して進めていた作業がストップしてしまい、生産性を損なうケースもあります。テレワーク環境では、チャットやメール、あるいはWeb会議ツール等でのコミュニケーションがメインになるため、突然業務を止められるケースが激減し、自分の作業に集中して取り組むことが可能になります。

続いて、従業員側の視点でのデメリットを説明していきます。

コミュニケーションが希薄になる

リアルでの対面の機会が減るため、従業員同士や上司とのちょっとしたコミュニケーションの機会も失われます。 そのため、Web会議ツールやチャットツールを活用して、意図的にコミュニケーションの機会を創出し、チームとして円滑に仕事を進める工夫や、マネージャーのスキルが求められます。一方、各メンバーの業務の見える化や棚卸しを行うことで、それまで属人化していた業務を標準化できたり、無駄を洗い出したりことにもつながるため、テレワークの機会をうまく活用し業務改革を進めて行くことが大切です。

運動不足になりがち

通勤が不要になるので、自宅から外に出る機会が減り、運動不足になりがちです。 運動不足が慢性化すると、体重の増加や生活習慣病のリスクが高まります。そのリスクを回避するには、休憩時間等の空き時間にウォーキングをしたり、30分に1度程度、椅子から立ち上がって軽く歩くなどとといった対策が有効です。

多様な人材を獲得できたり、コスト削減ができたりと、企業にとってもメリットが多いテレワークですが、いざ導入するとなった際には具体的に何から始めれば良いんか悩んでしまう方も多いでしょう。そこで、テレワーク導入をスムーズに行うための手順を以下にまとめましたので、ぜひ参考にしてみてください。

【テレワークを導入する手順】

  1. 導入目的を明確にする
  2. 導入範囲や実施頻度を決める
  3. 推進体制を構築する
  4. 現状を把握する
  5. ICTツールを導入する
  6. セキュリティ対策を実施する
  7. 評価する

①導入目的を明確にする

まずは、テレワークを導入する目的を明確にします。目的を明確にしていないまま実装してしまうと、テレワークとしての機能があやふやなままで定着していきません。「テレワークを導入する」ことが目的やゴールにならないよう、「テレワークを導入してどのような効果を得たいのか」を明確にしておきましょう。

【テレワークの導入目的例】

  • 多様な人材の獲得
  • 社員の交通費・移動費などのコスト削減
  • 社員の離職防止
  • 企業イメージの向上
  • 事業継続性の確保
  • 社員の職場環境・体制への満足度向上
  • 資料の電子化

目的を検討する際、目的は複数あっても問題ありません。社内の課題や問題点を解決するための目的を設定できたら、次にそれを従業員に説明・共有できるようにしていきます。会社全体が同じ目的に向かってテレワークの導入に当たれるようにしましょう。

②導入範囲や実施頻度を決める

導入目的が明確に決まったら、次に導入範囲やテレワーク実施の頻度などを決めます。主に以下の4つの事項を検討してください。

  • 対象となる従業員
  • 対象となる業務
  • 実施する頻度
  • 導入方法・形態

最初から従業員全員でテレワークを始めようとしても混乱を起こしてしまうので、まずは部署ごとや育児・介護のある一部の従業員など、対象者や対象業務を限定して取り組んでいくと良いでしょう。テレワークの実施頻度も、最初は週に1~2日として残りは出社という形にすれば比較的スムーズな導入が可能です。

テレワークには代表的な在宅勤務以外にもモバイルワークやサテライトオフィスでの就業など様々な形態があるので、対象の従業員や業務形態などを考慮しながら細かい導入方法を決めていきましょう。

③推進体制を構築する

次に、テレワークの導入に向けた推進体制を構築します。推進体制はしっかりと構築できていないと、導入を周知していないことによる従業員の孤立などが起こってしまう恐れがあるため、従業員からの不信感に繋げないためにも必ず構築しておきましょう。

具体的には、対象の従業員や業務内容を決めて、導入に携わるメンバーを中心に社内の体制を整えていきます。従業員全体に導入目的や導入方法などをしっかりと周知し、共有できるようにすることによって企業全体でテレワークの導入に臨みましょう。

④現状を把握する

テレワークの導入にあたり、社内では就業規則や勤怠管理など、様々な制度やルールを変更しなければなりません。変更するために、まずは各部署やチームごとの現状を把握する必要があります。現状の把握をしてから、テレワークを導入するためにどのような変更が必要なのかを洗い出しましょう。洗い出す項目は以下の通りです。

  • 就業規則
  • 勤怠管理
  • 給与制度
  • 人事評価制度
  • セキュリティ環境
  • ICTツールの環境 など

特に勤怠管理や人事評価制度などは、現状を把握したうえで明確な変更点を示すことで、社内のトラブルを防止できます。現状の制度やルールを把握してから、どのような部分を変更するのかを慎重に決めていきましょう。

⑤ICTツールを導入する

次に、テレワークでは必要不可欠のICTツールを導入します。ICTとは、情報通信技術「Information and Communication Technology」の略で、デジタル化された情報の通信技術のことです。仕事に必要な資料や情報が揃っている会社に出勤をしないテレワークでは、このICTツールを使って社内での仕事と同じような環境を整える必要性が出てきます。

【テレワークで使用できるICTツールの種類】

  • Web会議システム
  • チャットなどのコミュニケーションツール
  • 勤怠管理・労働管理ツール
  • セキュリティ対策ツール
  • テレビ会議システム
  • タスク管理ツール など

従来では社内でのみ可能だった会議や勤怠管理、従業員同士のコミュニケーションなどが、ICTツールを利用することで、テレワーク先でも同様にできるようになります。対象となる業務形態に合わせて選ぶようにしてみてください。

⑥セキュリティ対策を実施する

社外で業務情報を扱うため、テレワークではセキュリティ対策が重要になってきます。情報漏洩やコンピューターウイルスの感染、サイバーテロ等の様々な脅威が存在する状況において、セキュリティ対策が疎かになっていると、企業の信用問題にも関わります。セキュリティ対策には以下のような方法があるので、自社に必要な対策を確認したうえで取り組めるようにしていきましょう。

テレワークで重要となるセキュリティ対策

  • セキュリティソフトの導入
  • 徹底した端末の管理
  • ログの管理
  • アクセス制限の実施
  • データのバックアップの徹底

モバイルワークや、コワーキングエリアなどを利用してのテレワークでは、端末などの紛失の可能性も出てきます。社内でのルールの整備も必要ですが、端末を暗号化するなど、紛失することを前提とした対策も非常に重要です。

⑦評価する

テレワーク環境を無事に導入できたら、その後は定期的に評価を行うようにしましょう。導入して終わりにならないように、評価をするタイミングや項目を設けることで改善へと繋げてください。

基本的には、企業ごとで就業規則や働き方が違うため、いきなり完璧なテレワークになることは殆どありません。ですので、評価から改善のPDCAサイクルを回し続けることで、より効率的な働き方が実現するように努めましょう。

テレワークを導入した直後は、不安を感じる従業員も一部存在します。そのため、テレワークの導入を失敗させないためにも、従業員へのサポートは欠かさないようにしましょう。従業員のサポートをしっかりと行わないと、業務効率化の効果が薄くなったり、従業員のモチベーションが低下したりといった事態を招くことにもなりかねません。

具体的なサポート例として、円滑なコミュニケーションツールの配備、操作がしやすいツールの導入、いつでも相談に乗れるサポート体制などが挙げられます。従業員の技術的な部分から精神的な部分までしっかりとサポートすることで、テレワークを導入しても企業運営を健全に進めていくことができるようになるでしょう。

テレワークとは場所や時間にとらわれない新しい働き方のことで、働き方改革の推進や新型コロナウイルスの影響によって注目を集めています。テレワークを導入することによって、業務効率化に繋がったり、コスト削減に繋がったりと様々なメリットを享受できるので、助成金などを活用して導入を進めていくのがおすすめです。

テレワークを導入するには、Web会議システムやクラウドストレージ、勤怠管理システムの設備が必要になるなどそれなりにコストを要するため、導入手順をしっかりと押さえて効率よく進める必要があります。導入に手間取るほど、業務の効率低下を招きやすく、従業員が受け入れるモチベーションも低下しやすくなってしまうので、当記事の内容を参考にスムーズな導入を進めてみてはどうでしょうか。

スムーズなテレワーク環境の実現に向けて、当記事の内容が少しでも参考になれば幸いです。

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