2025.03.11
クラウドストレージとは?
メリット・デメリット・選び方でのポイント

近年、クラウドサービスの普及により、社内の文書やファイルをクラウド上で管理する企業が増えています。クラウドストレージを活用すれば、場所やデバイスを問わずデータにアクセスでき、業務の効率化やセキュリティの強化にもつながります。本記事では、クラウドストレージとは何かをわかりやすく解説し、メリット・デメリットや導入時の選定ポイントについて詳しくご紹介します。
クラウドストレージ(オンラインストレージ)とは?
クラウドストレージとは、インターネット上で利用できるデータやファイルの保管場所、またはそのサービスのことです。近年、多くの企業で導入が進んでおり、業務の効率化を目的に活用が広がっています。クラウドサービスの一種で、オンラインストレージと呼ばれることもあります。さまざまな事業者がこのサービスを提供しており、契約することで利用できます。
クラウドストレージは、単にデータやファイルを保管するだけのものではありません。データの作成・編集、収集・分類といった保管前の業務から、共有や分析といった保管後の業務までクラウド上で行うことが可能です。このように、一連の流れをクラウド上で完結できるため、業務全体の効率化につながります。
クラウドストレージについては、以下のページでも解説しています。
クラウドストレージとローカルストレージの違い
ローカルストレージとは、ハードディスクや外部記憶装置など、PCのデータ保存領域のことを指します。これに対し、クラウドストレージはインターネット上のサーバにデータを保存するサービスです。
両者の主な違いは、データの保存場所にあります。ローカルストレージでは、データはPC本体や外部記憶装置に保存され、基本的に保存した端末でのみアクセスできます。一方、クラウドストレージはインターネット上にデータを保存するため、ほかのPCやスマートフォンからもアクセス可能です。また、クラウドストレージは理論上、保存できるデータ量に制限がなく、必要に応じて容量を増やすことができます。
クラウドストレージと従来型サーバの違い
従来のファイルサーバはオンプレミス型と呼ばれ、社内のローカルネットワーク上に自前の物理サーバを設置して運用する方式です。クラウドストレージとの大きな違いは、ファイルの保存場所にあります。
従来型のファイルサーバは、ファイルの共有に特化しており、PC本体ではなく社内の物理サーバにデータを保管し、同じネットワーク内の利用者同士でデータを共有するためのシステムです。そのため、外部からのアクセスにはVPNなどの仕組みが必要になります。
一方、クラウドストレージはインターネット上のサーバにデータを保存するため、インターネット環境があれば社内外を問わずアクセスが可能です。ユーザーごとにアクセス権限を設定できるため、異なる拠点や外部の関係者とも安全かつスムーズに情報を共有できます。
ガバメントクラウドとして政府もクラウドストレージを活用
政府も行政のクラウドサービスとして「ガバメントクラウド」を活用しています。ガバメントクラウドとは、政府共通のクラウドサービス利用環境です。
政府が活用する背景にあるのは、デジタル庁が原則とする「政府情報システムにおけるクラウドサービスの適切な利用に係る基本方針」です。この方針では、ガバメントクラウド活用の目的を「システム開発の短期間化や継続的な開発・改善の実現等の要素もあるが、主としてコスト削減とセキュリティの向上にある。」と述べています。
クラウドストレージのメリット
クラウドストレージは、その利便性と柔軟性の高さから、多くの企業で導入が進んでいます。特に、以下のような点に魅力を感じる方にとって、有力な選択肢となります。
場所を問わず利用できる

クラウドストレージの大きな利点は、インターネット環境があればどこからでも利用できることです。従来型のファイルサーバのように、社内ネットワークに接続する必要がなく、USBメモリーなどの外部記憶装置を使ったデータの持ち運びも不要になります。社内のデータをクラウド上に保存しておけば、外出先や自宅からでもスムーズにアクセスでき、リモートワークや出張時にも役立ちます。
また、クラウドストレージは、パソコンだけでなくスマートフォンやタブレットからもアクセスできるため、場所や端末を問わず業務を進められます。
スケーラビリティが高い
従来型のファイルサーバでは、構築するネットワークによって保存できるデータ量に制限がありました。一方、クラウドストレージは必要に応じてストレージ容量を拡張できるため、データの増加にも柔軟に対応できます。急なデータ増加があった場合でも、追加のハードウェアを用意することなく容量を増やせるため、将来の拡張を見越した過剰な設備投資をする必要がありません。
また、クラウドストレージは導入時に物理的な機器の設置や交換が不要なため、サーバの構築やメンテナンスに掛かる負担を軽減できます。企業の成長や業務の拡大に合わせてスムーズに運用できる点も、大きなメリットの一つです。
アクセス権管理を柔軟に行うことができる
クラウドストレージでは、ユーザーやグループごとに閲覧、編集、削除などの権限を細かく設定できます。これにより、共同所有者としてすべての操作を許可するユーザーから、特定のファイルをアップロードするだけのユーザーまで、役割に応じた適切な権限を付与できます。必要最小限の権限を設定することで、情報漏洩のリスクを抑えることが可能です。
また、こうした権限管理は一元化されており、管理者の負担を軽減できます。さらに、クラウドストレージにはアクセスログを記録する機能があり、不正アクセスや不審な操作を早期に発見するのにも役立ちます。
自動でバックアップできる
多くのクラウドストレージサービスには、自動バックアップ機能が備わっています。これにより、手動で保存する手間がなく、データの保存し忘れを防ぐことができます。また、誤ってファイルを削除してしまった場合でも、バックアップから復元できるため、大切なデータを失うリスクを軽減できます。
さらに、バージョン管理機能を備えたサービスであれば、過去の編集履歴を確認し、必要に応じて以前の状態に戻すことも可能です。加えて、クラウドストレージはインターネット上にデータを保存するため、自社のサーバやパソコンが故障しても影響を受けません。災害やシステムトラブル時のデータ保護対策としても有効です。
ファイルを共同で編集できる
クラウドストレージは、クラウド上にデータを保存するため、複数人で同じファイルを同時に編集できるのが大きなメリットです。リアルタイムで変更が反映されるため、更新のたびにデータをやり取りする手間がなく、スムーズに作業を進められます。
また、URLを共有するだけで社外の関係者にも簡単にファイルを閲覧・編集してもらえるため、迅速な情報のやり取りが可能です。
導入コストを抑えられる
ファイルサーバを構築するには、機器の購入や設計・構築が必要となり、初期費用が高額になりがちです。一方、クラウドストレージは専用のハードウェアを用意する必要がなく、ベンダーに月額・年額の利用料を支払うだけで導入できます。そのため、初期投資を抑えながら、すぐに運用を開始できます。
さらに、クラウドストレージは運用管理をベンダーに任せられるため、導入後のコスト負担も軽減できます。セキュリティ対策やシステムのメンテナンスなど、自社で対応する業務を削減できるため、管理負担を最小限に抑えられるのもメリットです。
クラウドストレージのデメリット
メリットの多いクラウドストレージですが、デメリットもあります。導入を検討する際は、以下に挙げるポイントに注意しましょう。
インターネット環境が必要である

クラウドストレージを利用するには、インターネット環境が不可欠です。オフラインの状態ではアクセスできないため、外出先で利用する場合は周囲のネットワーク環境を事前に確認する必要があります。また、電波が不安定な場所では接続が途切れる可能性がある点にも注意が必要です。
特に重要なのがレスポンス速度です。クラウドストレージの動作はインターネット回線の速度に左右されるため、快適に使用するには高速かつ安定した回線が求められます。しかし、どれだけ高速な回線を用意しても、社内LANと比べると遅延が発生しやすくなります。そのため、従来型サーバからクラウドストレージに移行した際、一時的に社内からの不満や問い合わせが増える可能性があります。
カスタマイズ性が低い
クラウドストレージは一般的にパッケージ化されており、機能の取捨選択や細かいカスタマイズはほとんどできません。基本的にはベンダーが提供する仕様のまま利用する形となるため、自社の要件に完全に合わせることは難しい場合があります。
特に、既存システムとの連携、複雑なファイル管理の仕組みの構築、細かいセキュリティ設定などを必要とする場合は、制約が生じる可能性があります。そのため、クラウドストレージが自社の運用に適しているかどうか、導入前に十分な検討が必要です。
障害発生時に復旧を待つ必要がある
クラウドストレージは、サービス提供元のベンダーが運用や保守を行うため、ベンダー側で障害が発生した場合は、自社で対応することができず、復旧を待つしかありません。
障害の影響が長引くと、業務に支障をきたす可能性もあるため、導入時にはベンダーの障害対応方針や復旧の目安について事前に確認しておくことが重要です。サービスの可用性やバックアップ体制、緊急時のサポート体制などを把握しておくことで、リスクを最小限に抑えられます。
ランニングコストが掛かる
クラウドストレージには買い切りのサービスもありますが、基本的には月額または年額で料金が発生します。導入費用は抑えられるものの、ランニングコストが発生する点に注意が必要です。
料金はユーザー数や契約容量によって変動するため、利用状況によってはコストが増加する可能性があります。そのため、導入時には自社の運用に合ったプランを検討することが大切です。
クラウドストレージを選ぶポイント
クラウドストレージを導入する際は、「容量と料金」「機能や操作性」「セキュリティ対策」などを基準に選ぶことが重要です。それぞれのサービスを比較し、自社に適したものを選びましょう。

容量と料金:どれだけのデータを保管する必要があるか
クラウドストレージを選ぶ際は、容量と料金のバランスを確認することが重要です。ベンダーやプランによって提供されるストレージ容量が異なるため、特に法人利用では、大容量が必要なケースに備えて適切なサービスを選ぶ必要があります。
容量無制限のプランを選べば、保存容量を気にせず利用できますが、その分コストが高くなり、期待したほどのコスト削減につながらない可能性があります。自社で扱うデータの種類やユーザー数を考慮し、無駄のないストレージプランを選びましょう。
また、データの保存容量だけでなく、アップロード容量の上限にも注意が必要です。特に、動画や高解像度の画像を頻繁に扱う企業は、十分なアップロード容量が確保されているか事前に確認しておくことが大切です。
機能や操作性:どのような作業を行えるか
クラウドストレージを導入しても、必要な機能がなかったり、操作が複雑で使いこなせなかったりすると、十分に活用できません。例えば、インターフェースの使いやすさ、共有できるユーザー数、対応端末などはサービスによって異なり、業務効率に大きく影響します。そのため、搭載されている機能や操作性を事前に確認することが重要です。
また、情報漏洩のリスクを考慮すると、閲覧権限や編集権限を細かく設定できる機能があると安心です。特に、複数のチームや外部の関係者とデータをやり取りする場合は、権限管理の柔軟性もチェックしておきましょう。
多くのベンダーでは無料トライアル期間を設けています。導入前に実際の操作感を確かめ、自社の業務に適しているか試したうえで契約すると、失敗を防ぐことができます。
セキュリティ対策:暗号化や認証機能の有無
セキュリティ対策は、クラウドストレージを選ぶうえで欠かせないポイントです。クラウドストレージのセキュリティはベンダーに依存するため、安全性を確保するためには提供されている機能をしっかり確認する必要があります。
まず、データの暗号化が施されているかをチェックしましょう。暗号化には、保存データを保護するものと、通信中のデータを保護するものの2種類があります。データが暗号化されていれば、万が一不正アクセスを受けた場合でも、情報が漏洩するリスクを抑えられます。
また、認証機能もセキュリティ強化の重要な要素です。IDとパスワードに加えて、2段階認証を採用しているか、強固なパスワード設定を求めるパスワードポリシーがあるかなどを確認しましょう。
取り扱うデータの重要度や自社のセキュリティ要件に応じて、必要な対策が備わっているかを事前にチェックし、安心して利用できるサービスを選ぶことが大切です。
まとめ
クラウド上にデータを保管できるクラウドストレージは、場所を問わずに利用できるだけでなく、スケーラビリティの高さやアクセス権管理の柔軟性など、多くのメリットがあります。導入の際には、容量や機能、セキュリティ対策を確認し、自社の業務に適したサービスを選ぶことが重要です。
「FUJIFILM IWpro」は、データの保管に加え、ファイルの共有や複合機でスキャンした文書の電子化など、前後の業務まで対応できるクラウドサービスです。業務の効率化を促進し、テレワークの推進にも貢献します。
また、限定URLから特定のファイルにアクセスして文書を共有できるクラウドサービス「Working Folder」や、Microsoft 365 アプリ内でスムーズにデータの保存・アクセスが可能なクラウドストレージ「OneDrive」も、安全なデータ共有や保管をサポートします。
文書やファイルをクラウドに保存したいと考えている方は、ぜひ導入をご検討ください。
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