AI技術開発活動の紹介
働き方の未来を変えるAI技術者たち
感動を生むAIソリューションを創る
富士フイルムビジネスイノベーションでは、新しい働き方や業務効率化を実現するAIソリューション開発に取り組んでいます。複合機ビジネスをはじめとするこれまでの知見やデータを活かしつつ、専門性と探究心を武器に活躍するAI技術開発者の挑戦に迫ります。
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安藤
2010年入社。コンピューター上でシミュレーションする技術を専門とし、故障や部品交換を予測して保守メンテナンスを効率化する技術を確立。現在、AI技術開発グループのリーダーを務める。 -
ヨウ
2018年入社。電機メーカー等でアルゴリズムやソフトウェアの開発に従事。富士フイルムビジネスイノベーションでは深層学習を活用したセキュリティモデル開発、チャットボットやVOC感情分析のデモ開発を行い、現在は生成AI活用技術開発のテーマリーダーを務める。 -
長谷川
2022年入社。複合機の異常検知技術開発や営業支援のための有望顧客・商材の推薦技術開発を担当。現在、営業支援システムのプロトタイプ開発に邁進中。
自分たちの手でAIソリューションを確立する
――富士フイルムビジネスソリューションで、AI技術者の道を選んだ理由を教えてください
安藤 富士フイルムビジネスイノベーションでは20年前からオフィス業務自動化の技術開発に取り組んでおり、私はコンピューターシミュレーションを専門として、機械学習で故障や部品交換を予測する技術を手がけてきました。近年AI技術が急速に進化したことで、これまでの集大成として、AIを核とした業務ソリューションを新規事業として確立する絶好のタイミングだと考えたのです。
私は研究者として技術開発に取り組む中で、技術は先進的であるだけでなく、使いやすく、利用することで喜びを感じられるものにすべきだと思うようになりました。そこでアプリケーション開発を手がけるベンチャー企業で研修し、UX開発の手法を学びました。この経験を活かし、UX設計の視点を取り込んだAI技術開発のリーダーを務めることになりました。
長谷川 自分はデータサイエンスやAIに興味があり、大学時代は数理統計の研究室に所属していました。安藤さんたちが手がけてきた故障予知などの品質工学分野では、富士フイルムビジネスイノベーションはトップレベルの技術を有しています。この会社の技術開発部門なら自分の統計の知識を活かせると考え、入社を決めました。
ヨウ 以前、社内で競合分析のプロジェクトがあり、複合機とソリューションをセット販売するビジネスモデルを全国展開していることが富士フイルムビジネスイノベーションの強みだということに気が付きました。この会社はソリューション分野でもっと飛躍できるポテンシャルがあると、私は確信しています。その可能性を自分の手で開拓したくて、ChatGPTに代表されるような大規模言語モデル(LLM)などの生成AI技術を2018年から独学で学び始めました。
安藤 ヨウさんはいち早くLLMに注目していて、社内でも先駆者ですよね。その知識と技術を活かし、生成AI活用技術開発のテーマリーダーを務めてもらうことになったのです。
課題から多くを学び、技術の進化につなげる
——現在取り組んでいる技術開発や、道のりを教えてください
安藤 AI技術開発チームでは、30近いAIソリューションを社内に試験導入して効果を検証し、有効だった技術を3つのテーマに分けた商品開発プロジェクトを進行しています。ヨウさんは生成AI、長谷川さんは営業支援システムのプロジェクトを担当し、私は全体をマネジメントしています。
ヨウ 私は生成AI技術をベースに業務用アプリケーションを容易に生成する技術開発に取り組んでいます。たとえば、顧客から問い合わせが入ると、その内容をAIが解析して担当部署に割り振るシステムの開発です。実際に問い合わせ窓口業務に導入し、効果測定しながら技術改善を進めてきました。サービス化には、企業ごとの組織構成や業務を理解したうえで、ユーズシーンを抽出し、汎用化するプロセスが必要です。そのためには、現場のヒアリングを重ねながら、指標数値だけでなく生データを詳細に分析すること、異常値やトレンドを素早く察知するデータの解釈力を磨いていくことを心がけてきました。
長谷川 私は、営業活動を効率化する有望顧客の抽出や推奨商品を自動でリスト化する技術を開発し、自社営業活動でトライアルを行いました。営業担当者からは「参考になった」という声もあったのですが、一方で「現場との乖離がある」との声も多く、AI活用の課題である「解釈性」の壁に突き当たりました。
ヨウ 生成AIは、すでに確立した業務・知識をAIに教え込んで自動化する技術ですが、長谷川さんが取り組んでいるのは、膨大なビッグデータからAIが「解答」を導き出す技術ですよね。ベクトルは逆ですが、両方の技術を活用したAIソリューションを生み出せれば富士フイルムビジネスイノベーションの強みになります。
長谷川 そうなんです。ただ、AIの導き出した解答を見せるだけでは、営業担当者も納得できないし、お客様に共感してもらえる説得力が生まれないと気づきました。ユーザーに支持されるシステムをつくるには、AIがなぜその判断に至ったかという解釈性もわかりやすく提示する必要があると学びました。
安藤 システムを実際に使うお客様やユーザーは、AIで解決できる課題が何かをまだ理解していないケースがほとんどです。二人が話してくれたように、最初はお客様業務に入り込み、その課題や内容を深く理解していくコンサルティングのプロセスが欠かせません。そのうえで初めて必要なデータやAIの精度を高めるデータ処理の方法が定義できるのです。
私たち富士フイルムビジネスイノベーションの技術開発者が恵まれているのはプロトタイプを使って検証していく場が社内に豊富にあることです。社内の業務課題を解き、ユーザーの声を直に聞きながら、オフィスワークに共通する課題や必要技術が定義できました。こうした過程を経て、現在、汎用化したAIソリューションパッケージを商品開発するフェーズに到達しています。
「仕事を楽しくする」AIを実現する夢へ
——今後の皆さんの夢を教えてください
安藤 ゆくゆくは生成AIの先にある自律型AIの開発に成功して、富士フイルムビジネスイノベーション独自のソリューションビジネスを世界に先駆けてリリースしたいですね。人が設定した目標に向けて、AIがプロセスやタスクを整理して自動的に進めるようなシステムです。そうすれば私たちはタスクに振り回されることなく、もっと目標やビジョンにフォーカスした働き方ができます。AI技術開発を通じて、仕事がもっと楽しく、ラクになる働き方を実現したいです。
長谷川 自律型AI技術は、私とヨウさんで検討している次なるチャレンジテーマです。入社前は、データサイエンティストは数字と向き合う仕事だと思っていたのですが、開発のゴールを決めたり、システム全体を構想したりできる創造的な仕事だと知りました。これからも自分が関心をもった分野には果敢にチャレンジしていきたいですね。社内育成施策であるキャリア面談では、自分のやりたいことを率直にマネジャーに伝えています。社内公募制度による異動のチャンスもあり、自分の探究心に従って仕事ができるのが富士フイルムビジネスイノベーションの良さだと感じています。
安藤 各自が最も関心のある領域で活躍することで、スピードと革新性が生まれるといった考えが職場にはありますね。AI技術開発チームは、データサイエンティストだけでなく、企画、UXリサーチャー、コンサルティングなどのスペシャリストからなり、各々のスキルを活かして自律的に働ける理想のチームだと思います。
ヨウ 私は、生成AI技術を活用し、オフィス業務の自動化を加速させていきたいと考えています。現在は汎用LLMを利用していますが、ゆくゆくは自分の手でユニークな生成AIモデルを作りだしたいと思っています。
安藤 複合機は、あらゆる業種業務に普及しているビジネスの必須ツールです。その意味では、富士フイルムビジネスイノベーションは日本全国にビジネス基盤を有しており、AIソリューションのシェアをもっと拡大できると私は考えています。現在、AI技術開発は発展途中の新規事業ですが、ゆくゆくは自社の複数事業を繋ぐ中心的存在にしたいと思っています。
私達が目指していることは、富士フイルムビジネスソリューションはAIの会社だと認知されるまで、事業を大きく育てていくことです。お客様に感動を与えるAIソリューションを自分たちの手で生み出すことが、その第一歩になると考えています。