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(日本のフィルム市場において「価格協定」は存在しない)
AND HORIZONTAL PRICE FIXING IN THE JAPANESE FILM MARKET”
平成8年3月29日
富士写真フイルム株式会社
富士フイルムに対するコダックの主張は、基本的に次の二点に集約される。
第一に、富士フイルムが特約卸商(特約店)を支配することで「流通ボトルネック」が生じ、コダックフィルムが日本の市場から閉め出されているという点、そして第二に、富士フイルムの指揮の下で広範な価格協定の共謀が行われ、コダックによる価格競争が阻止されているという点である。
富士フイルムは昨年12月の反論書において、「流通ボトルネック」が存在しないこと、すなわち、特約店の顧客の圧倒的多数は既にコダックフィルムを扱っているか、コダックフィルムの納入業者と何らかの取引関係があることをはっきりと示した。
また、富士フイルムは昨年10月及び本年2月の反論書で、日本の価格水準が米国の価格と同等であること、及び日本全国で価格競争が活発に行われていることを示した。
そして、今回本書において、コダックのいう「価格協定」など存在しないことを示す。
コダックの主張は、事実に基づき細かく分析していくと、至るところで破綻をきたす。市場の様々な事実は、価格協定が存在せず、またありえないことを示している。価格協定に関するコダックの「証拠」は、詳細に分析すると何の意味も持たないことが明らかになる。それらの多くは本件とは無関係であり、また価格協定など存在しないことを示している。
こうしてコダックの主張の全ては完全に論破されるのである。
コダックの主張の核心は、小売店がコダックが妥当だと考える価格より高い価格をコダックフィルムに設定しているという点にある。しかし、実際には過去10年間、コダックは殆ど常に富士フイルムと同じメーカー希望小売価格を設定してきた。つまり、コダックは小売店に対して、コダックフィルムを富士ブランドと同じ価格で売ってほしいと言い続けてきたのである。これは、強い販売力を持つメーカー(富士フイルム)がリードする市場を攻略しようとする挑戦者のとるべき戦略とは思われない。
過去10年間の急激な円高は、コダックに大きな競争の機会を与えた。すなわち、コダックはドル換算の収入を一定に維持しながら、円建て価格を絶えず引き下げることができたはずである。
しかし、円が87%上昇した(239円→128円)1985年から1988年の間に、コダックは1本当たりの輸入価格をドル換算で27%引き上げた。また、1990年から1994年にかけて円が42%上昇した(145円→102円)時にも、輸入価格を32%上げている。換言すれば、コダックは円高の恩恵を日本の消費者に還元せず、自身で享受したのである。
1986年、当時のコダックのホイットモア会長は、「日本市場におけるプライスリーダーでないコダックは富士フイルムより低価格で販売することに関心がない」と明言した。
又、翌年、円高を考慮して価格を下げてほしいという小売店の要求に対し、当時コダック=ナガセの社長であった澤田氏は、「価格を引き下げても需要が伸びるかどうか疑問である」と値下げを拒否した。更に、日本コダックのシーグ社長は、カメラに比べフィルムの価格が低すぎることを指摘し、やはり値下げを拒んだ。コダックフィルムの日本での価格レベルは、米国及びその他の市場に比べて既に低かったため、更なる安売りは他国への流出を招き逆効果になるのである。コダックの役員の発言の真意は明らかである。
コダックは、「卸売価格を下げても、小売店の価格協定によって、それが小売価格に反映されないので、思うように価格競争ができない」という。しかし、コダックは、小売店が卸売レベルでの値引きを消費者に還元することを拒絶した証拠を何も示していない。もし、コダックの主張が事実なら、日本コダックはそうした証拠を十分に持っているはずである。それが提示されないのは、コダックの主張が全くのでっちあげである「証拠」である。
仮に、コダックフィルムの小売店への卸売価格が富士フイルムのそれより低いとしても、富士ブランドと同じマージンが得られる程度までコダックフィルムの価格を下げ、富士ブランドとの価格差を利用してコダックの売上げを伸ばすか、或いは(コダックのいうように)コダックフィルムに富士ブランドとほぼ同じ価格になるまでマージンを上乗せし、その売上げから高いマージンを得るかは、各小売店がその経営判断で自由に決めているものであり、そこに価格協定など存在しない。
コダックの価格戦略の問題点は、小売店がより大きなマージンを得られ、かつ消費者にコダックフィルムを買う気を起こさせるに十分な程に安く販売できるような、卸売価格を提示してこなかったことである。要するに、コダックは、価格競争によりマーケットシェアを得ることを望まなかったのである。
マルチパック品やプライベートブランドフィルムが市場において急速に台頭してきた事実は、低価格品による価格競争が活発に行われていることを如実に表し、富士フイルムの指揮により価格競争の抑圧が行われているというコダックの主張を明確に否定するものである。
日本の写真フィルムの小売価格の実態は、実販価格とメーカー希望小売価格との間に大きな隔たりがあることを示しており、特にマルチパック品についてそれが言える。このような市場環境から、富士フイルムは昨年12月にマルチパック品のメーカー希望小売価格を廃止した。
コダックが用いた日本政府の調査データは、バーゲン品、処分品、ディスカウント品を対象としていないにもかかわらず、富士ブランドのフィルムが広範囲でメーカー希望小売価格よりも安く売られていることを示している。
コダックは、自身のメーカー希望小売価格と比較しても、また富士ブランドと比較しても、日本中で安く売られている。コダックの価格戦略の問題点は、小売店が安く売ってくれないことでなく、小売店が通常の利益を得ながら、コダックフィルムをより多く販売する気を起こさせるのに十分な程、卸売価格を安くしていないことにある。
コダックのいう価格協定の主な「証拠」なるものは、過去20年にわたる業界紙の記事から構成されている。しかし、その殆どは全く証拠たり得ず、関連性のないものをつなぎ合わせた虚構に過ぎない。
まず、記事の多くは現像サービス或いはカメラの価格に関するもので、本調査には関係がない。また、301 条調査は現在進行している不公正な慣行に対処することを目的としたものであり、コダックの引用した古い記事はこの点でも何の意味も持たない。更に、とり上げるに足る残り僅かの記事も、価格安定を望む単なる意見や競争相手の値下げへの単なる不満の表明を記述しているものであり、それだけでは価格協定を立証するものとはならない。
a.11月6日の反論書
コダックは、昨年11月6日の反論書で業界紙の様々な記事を「証拠」として引用し、富士フイルムが再販価格維持に関わっていることを主張している。しかし、その全てが的外れか、或いは単なる憶測の域を出ていないものである。それをコダックがむりやり価格協定の画策だと主張しているもので、全く信じがたいことである。
b.11月6日の反論書の「添付資料」
コダックが昨年11月6日の反論書に付した948ページに及ぶ「添付資料」には、日本の写真業界の価格設定に関する業界紙の記事が多く掲載されている。しかし、その殆どが現像サービス或いはカメラに関したものであるか、又は20-30年以上前の記事で余りにも古いため、考慮にすら値しない代物である。これら関連性のない記事を除外して残ったものを見ても、富士フイルムが小売店にフィルムの安売りをさせないように圧力をかけたとか、或いは小売店に売価を決めさせないようにしたという類のことは書かれていない。
c.コダックが引用した他の資料
- 価格維持を支持する発言
コダックが引用している記事の中に、富士フイルムの幹部が価格維持を支持する発言をしたというものがある。しかし、それらは、銀ショック後の極端な価格変動が安定することを望む単なる意見の表明であったり、プライベートブランド等による「価格破壊」を前に、新製品導入や販売促進によって新たな需要をつくり出していこうというメーカーの考えを表したものに過ぎない。 - 流通業者との強固な関係
コダック自身が引用した記事は、富士フイルムの強固な流通網を作り上げたのは真摯な営業活動である、と評価している。富士フイルムが小売店の価格決定を阻んだとか、値引きに対して処罰行為をしたことを示唆する箇所はない。 - 競合メーカーによる値下げへの対応
コダックは、カラー印画紙の値下げを行った際に、富士フイルムがこれを理解しがたいと評し、値下げする余裕はないと発言した記事を引用している。しかし、現実には富士フイルムはこれに値下げでもって対抗したのである。コダックが引用したこのエピソードは、コダックが攻撃的な価格設定を決断した稀なケースと、それに対する富士フイルムの当たり前のリアクションを示しているに過ぎない。 - メーカー希望小売価格の存在
コダックの引用した記事は、実販価格との乖離が大きくなりすぎたため、カメラのメーカー希望小売価格撤廃の問題が生じたことを報じたもので、富士フイルムが小売店に対し、フィルムのメーカー希望小売価格に基づく価格設定を強制したことを示唆する箇所は見当たらない。 - 公正取引推進協議会
コダックは、「公正取引推進協議会の設立が過剰な競争の抑制を促す」とした記事を引いた。しかし、公取推進協は、カメラに関する派遣店員と販売援助金の問題に対処するために設立されたもので、カラーフィルム及びカラー印画紙に関する本調査とは無関係であり、又業界の反競争的行為を示すものでも決してない。
*その他、コダックによる根拠のない主張の例を列挙すると、以下の通りである。
但し、これらは、フジカラー友の会を除き、本来当社と直接関係のないものである。
a.全連
コダックは、全連(写真製品の小売業者の事業者団体)のメンバーが価格競争の制限を共謀したという事例を挙げようと無駄に試みている。
- 1983年VRキャンペーン
コダックは、全連が公取委の協力を得て、コダックによるVRフィルムパックのキャンペーンを阻止しようとしたと主張するが、全連は欺瞞的な広告、特に当時殆どのカメラで使用できなかったVR-1000フィルムが含まれていた点に苦情を申し立てたのである。これに対して、長瀬は非を認め、自らテレビ広告の中止を決めた。価格について何らかの措置が採られることは決してなかったのである。 - 逆輸入ロッテ・フィルム
コダックは、ロッテ・ブランド逆輸入フィルムの広告に関して、小売店が公取委に苦情を申し立てた1988年の例を繰り返し述べている。引用記事から明らかなのは、小売店が懸念したのは逆輸入フィルムの価格でなく、その欺瞞的な広告であったということである。誰かが逆輸入フィルムの販売を止めさせようとしたことや、止めさせることに成功したことを証明するものは何もない。コダックは、虚偽広告に対するクレームを価格協定にすりかえている。 - フィルム無料提供サービス
コダックは、小売店の値引きに対する全連の干渉を示す「証拠」として、ある大手カメラ店チェーンが1994年に行ったフィルム無料提供サービスに対する、全連理事の反対意見を取り上げている。しかし、このチェーンのフィルム無料提供は、フィルムの安売りというよりも、現像サービスやカメラの販促に関係するものであり、そもそも反対意見の表明以外に何かが起きたことを示すものは全くない。実際、この販促サービスは何ら妨害を受けることなく、現在も続けられている。 - 生協ブランドフィルム
コダックの主張とは反対に、「全連がコダックによる生協ブランドフィルムの販売を妨げるため具体的な措置を採った」という類のことは、引用記事で述べられていない。それどころか、コダックはその後、他の大手スーパーチェーンでもダブルブランドフィルムを供給し続けている。このことから、コダックによる低価格フィルムの販売が妨げられていないことが明らかである。
b.写商連
コダックは、写商連(写真製品の卸売業者の事業者団体)が競争の制限を支持する見解を公式に表明したことを報じる記事を引用している。しかし、コダックは、写商連が実際に競争を制限するような行動をとったことを示す証拠を何も示していない。それどころか、コダックは、日本の卸売業者が互いに激しく価格競争をしている現実を無視している。
c.フジカラー友の会
コダックは、「フジカラー友の会は、市場の混乱を防ぎ、値引競争を妨げるフォーラムとして存在する」と主張している。
しかし、コダックの引用記事は、友の会が業界の競争の制限を目的として作られたのではないこと、又そうした活動は独禁法違反になる恐れがあるため、あり得ないことを述べている。これが果たしてコダックのいう「友の会による価格協定」の証拠といえるであろうか。
富士フイルムは、これまでの反論書において、コダックの主張内容の本質的要素、その分析的基礎、及びそれらを裏付けているかのようにみせている事実と証拠を特定し、それら全てを体系的に悉く粉砕してきた。
我々は、「流通ボトルネック」は弁護士のおとぎ話であり、日本市場の実情と全く関係のないものであることを示した。我々は、「富士フイルムが流通をコントロールするために用いている」とコダックが言うメカニズムなるものが、単なる常識的な営業活動に過ぎないことを証明した。我々は日本のフィルム価格が米国と同等であること、そして我々の価格分析の結果は東京・大阪だけでなく、日本全国に共通するものであることを示した。そして最後に、本書によって、日本中で広範囲にわたって価格協定がなされているというコダックの主張は、詳細に分析すると矛盾だらけで、現実的にも根拠のないものであるということを明確に証明した。
富士フイルムとコダックの反論書をきちんと読み比ベれば、コダックの主張に関して根拠のあるものは皆無であることが明白となろう。
以上