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日米小売価格比較に関する富士フイルムの追加反論書(概要)
FUJIFILM'S REBUTTAL ON PRICE COMPARISONS
目 次
はじめに
A.コダックの価格データは、日本のフィルム市場の全体像を正しく反映していない
- コダックのデータ操作その1:
価格が相対的に高い写真専門店のみを対象としている - コダックのデータ操作その2:
リーディングブランド同士で比較を行っていない - コダックのデータ操作その3:
日本での税込価格と米国での税抜価格とを比較している - コダックのデータ操作その4:
感度ISO400フィルムとパック品を考慮していない
B.価格競争は日本全国で同じように行われている
- 日本リサーチセンターのデータは、東京や大阪だけでなく、日本全国の価格傾向を表している
- 東京・大阪以外の地域でも価格競争は活発に行われている
C.日米のフィルム価格はほぼ同じである
添付資料
はじめに
富士フイルムは、「日本の写真フィルム価格が米国の2倍でかつ長年にわたり不自然に安定している」というコダックの主張に反論するため、1995年10月24日にUSTRへ提出した文書の中で、特に以下の点を強調し、両市場の価格がほぼ同等であることを示した。
- コダックは、日本で最も価格の高い業態(写真専門店)と米国で最も価格の低い業態(ディスカウントストア)とを比較しているが、同一業態で価格比較を行うと日米の価格はほとんど同じであり、米国の価格が日本より高いケースも多くある。
- コダックは、ISO100の単品売りのみに焦点を当てているが、正しく比較を行うには、販売量も多く、価格競争の激しいISO400及びパック品を考慮に入れなければならない。
- 日本の市場価格の推移について、コダックは物価上昇率を考慮せず、名目価格の安定性だけを強調しているが、フィルムの実質的価格は1990年以降10%低下している。
これに対しコダックは、1995年11月6日の文書の中で、自らの価格比較は正当である、と従来の主張をなんら根拠を示さず意味なく繰り返すとともに、東京・大阪以外の地域には価格競争が存在しないと主張している。
富士フイルムは、コダックの分析・主張がいかに根拠のないものかをここに詳細に証明するものである。
特に、コダックによる価格比較の問題点が、データ自体の正確性より、むしろその恣意的な利用方法にあることを強調したい。適切な比較を行えば、当社が主張してきたように日米のフィルム価格はほとんど同じか、むしろしばしば日本の方が安く、そして東京・大阪以外の地域でも価格競争が激しく行われていることが明らかになるのである。
市場の実態を無視した、ワシントンの弁護士の手による操作されたデータでは適切な主張は行い得ないことを、コダックは肝に銘ずるべきである。
A.コダックの価格データは、日本のフィルム市場の全体像を正しく反映していない
コダックは、日本市場の一部分だけを選別して価格比較を行っている。どの国の市場も業態によってフィルム価格に大きな幅があるため、比較する価格を恣意的に選べば、何なりと自分の望む結果を引き出すことができる。
コダックは、日本市場で価格競争が激しく行われている部分、すなわち、ディスカウントストア、ISO400フィルム、パック品等の存在を全て無視した。データを都合よく選び出し、価格比較の結果を大きく歪曲したのである。
1.コダックのデータ操作その1:
価格が相対的に高い写真専門店のみを対象としている
コダックが依拠したのは、写真専門店の価格データである。確かに写真専門店はフィルム売上高の50%を占める最大の業態であるが、コダックは市場の半分を占める残りの業態を完全に無視している。
コダックが隠そうとしているのは、日本で写真専門店の占める割合が低下しつつあるという事実である。実際、図1が示すように、写真専門店の販売比率は1985年の60%から1994年には50%にまで減少している。一方で、ディスカウントストアとスーパーマーケットでの販売比率は同時期に19%から23%に伸長した。順調に売上げを伸ばし、かつ市場の4分の1を占めるほどに成長した業態をなぜ考慮に入れないのであろうか。
コダックにとって、こうした業態を無視した方が都合がよいのである。なぜなら、ディスカウントストアやスーパーマーケットは写真専門店より低価格で販売する業態であり、これらを含めれば全体の平均価格は確実に下落するからである。
一方、コダックが提示した米国価格は、量販店、大手スーパー、ドラッグストアといった、低価格でフィルムを販売する店の価格である。日本で最も高い価格と米国で最も低い価格とを比較すれば、価格差が生じるのは当然である。
言うまでもなく、業態が違えば、提供するサービスの内容も異なり、顧客のニーズも違ってくる。例えば、写真専門店は写真を楽しんでもらうための、ノウハウの提供によりサービス重視の客にアピールし、ディスカウント店は安い価格で価格重視の客にアピールする。異なった業態の価格を比較しても意味がない。それは価格が必然的に異なる商品を比較することだからである。富士フイルムが1995年10月24日付の文書で示したように、同一業態で比較すれば日米の価格はほとんど同じといえるのである。
【図1】
2.コダックのデータ操作その2:
リーディングブランド同士で比較を行っていない
二つの市場の価格を比べる場合、「互いに異なる商品」を比べても意味がない。コダックが行ったことはまさにそれである。すなわち、日本市場でリーディングブランドとして売られている富士フイルムブランドのフィルムと、米国市場で割引価格で販売されている富士フイルムのセカンドブランドフィルム(日本市場では販売されていない)とを比較したのである。コダックはこの点につき何の説明も行っていない。
3.コダックのデータ操作その3:
日本での税込価格と米国での税抜価格とを比較している
コダックが使用した日本の価格データが消費税を含んでいるのに対し、米国のデータは含んでいない。ここでもコダックは、日本の価格を不当に高く、米国の価格を低く見せようとしているのである。
4.コダックのデータ操作その4:
感度ISO400フィルムとパック品を考慮していない
コダックは、「ISO100単品売り」のフィルムに限って価格比較を行った。その根拠は、ISO100が最大の売上げを誇るフィルムであり、しかも単品売りはパック品の売上げを大きく上回っているからだという。
しかし、コダックは、日本市場においてISO100フィルムの比率が年々減っている事実に触れていない。実際、1988年に84.8%あった比率が 1994年には47.5%にまで落ち込んでいるのである。一方、ISO400フィルムは、同時期に9.3%から47.5%に比率を飛躍させ、現在では日本で最も売れるフィルムとなっている。それなのにコダックはなぜ、これを除外したのか。
富士フイルムはISO400の発売以来、積極的に拡販を行ってきた。ISO400の価格はISO100より高いが、その価格差は米国ほど大きくない。つまり、ISO400は米国に比べ相対的に安い価格で売られている商品だといえる。コダックがISO400を無視した理由はそこにある。
次に、パック品の市場に占める割合が小さい、というのはもはや古い話である。図2が示すように、富士フイルムのパック品の比率はISO100で47%、ISO400では58%となっている。そして、重要なのはパック品の1本当りの価格が単品のそれよりかなり安いということである。
コダックは、日本の価格水準を不当に引き上げようと、価格比較からISO400フィルムとパック品を除いたのである。
【図2】
B.価格競争は日本全国で同じように行われている
コダックは、富士フイルムの価格データが東京・大阪に限られたものであることを非難し、それが日本市場全体を反映していないとか、さらには、東京・大阪以外の地域には価格競争が存在しないなどと、全く実態とかけ離れた主張をしている。
富士フイルムの用いたデータは、東京・大阪以外の地域でも価格競争が激しく行われていることを示している。これは市場の実態と合致する。
1.日本リサーチセンターのデータは、東京や大阪だけでなく、日本全国の価格傾向を表している
コダックは、富士フイルムの価格データが東京・大阪だけから集められた点を批判している。これら2都市で販売されるフィルムは全体の30%に過ぎず、また他地域には存在しないディスカウントストアを含んでいる点を指摘して、市場全体を反映したデータではない、というのである。
富士フイルムの価格データは、毎月日本リサーチセンターが実施している販売動向調査によるものである。調査対象となっている32店には多くのスーパーマーケット・大型写真店の全国的チェーン店が含まれている。キタムラ(写真専門店)、ダイエー、ジャスコ及び西友(スーパーマーケット)などがその例である。それらのチェーンの店舗網は日本のほとんどの地域をカバーしており、さらに添付資料1が示す通り、チェーン内のフィルム価格は全店でほぼ同一である。したがって、日本リサーチ調査の価格データは、東京・大阪だけでなく、全国的な価格傾向をも表していることになる。
また、日本リサーチ調査の価格データを検証するため、富士フイルムは1995年12月に、地方10都市において、最大手3店のフィルム小売価格を調査した(結果は添付資料2を参照)。これを1995年12月実施の日本リサーチ調査のデータ(添付資料3を参照)と比較すると、図3が示すようにほとんど違いがないことが分かる。すなわち、東京及び大阪以外のフィルム価格は、二大都市圏の価格とほぼ同じだということができる。
このように、実態をみれば富士フイルムのデータが全国の市場を代表するものではないというコダックの主張は、完全に間違っている。
【図3】
2.東京・大阪以外の地域でも価格競争は活発に行われている
東京・大阪圏と他地域のフィルム価格に差は見られない。その理由は、価格競争が全国で活発に行われているからにほかならない。消費者は、二大都市のみならず全国のいたるところで、安価なフィルムを購入できるのである。それは以下の事実からも明らかである。
(1)低価格のパック品は全国で広く販売されている
パック品の場合、本数が増えるにしたがってフィルム1本当たりの価格が下がっていく。また、単品とパック品1本当たりの価格差は、米国に比べ日本の方が大きい。そして、パック品は、添付資料2が示すように、コダックの「東京・大阪に限られている。」という主張とは反対に、全国で広く販売されている。
(2)プライベートブランドフィルムは全国で広く販売されている
メーカーのブランド名を出さずに割引価格で販売されるプライベートブランド(PB)のフィルムが登場したのは1994年であるが、その後急速に普及している。PBフィルムの先鞭をつけたアグファは、1993年にはゼロだったシェアをたった1年で5%にまで伸ばした。アグファは43都道府県に358店舗を有するダイエーを通じてPBフィルムを供給することにより、成功を収めたのである。添付資料4と5にあるように、PBフィルムは、その後登場したダブルブランドフィルム(販売業者名とメーカー名を併記した商品)とともに、非常に安い価格で全国広く販売されている。
C.日米のフィルム価格はほぼ同じである
これまでに述べてきたように、●同一業態同士で、●リーディングブランド同士で、●税調整をして、●ISO400フィルム及びパック品を考慮して、正しく日米のフィルム価格を比較すれば、図4が示すように、価格差がほとんど存在しないか、しばしば日本の方が安いことが明らかになる
そして、富士フイルムの価格比較が全国にチェーン店を有する店舗の価格を含むデータに基づいていること、また価格の安いパック品やPBフィルムが全国で広く販売されていることから、価格競争は東京・大阪に限らず、日本全国で活発に行われているといえるのである。
【図4】