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2021年3月、山形県内陸南部に位置する置賜地域の高度・救命医療を担う置賜広域病院企業団 公立置賜総合病院に富士フイルムヘルスケア株式会社製(旧:(株)日立製作所)のデジタルX線透視撮影システム「CUREVISTA Open」を導入いただきました。導入から約1年半が経過した時点での評価、施設の取り組みについて放射線部の竹田亜由美技師、中田裕子技師に伺いました。
置賜広域病院企業団 公立置賜総合病院
放射線部 竹田亜由美 技師
放射線部 中田裕子 技師
置賜広域病院企業団 公立置賜総合病院の概要
はじめに病院の理念について教えてください。
公立置賜総合病院は、「心かよう 信頼と安心の病院」を病院理念として掲げ、山形県と2市2町が運営管理にあたる置賜広域病院組合を創設の上、2000年11月1日に開院しました。当院の開院にあたり、放射線治療機器などの高度医療機器の導入、さらに地域としては初の救命救急センターを設置したほか、駐車場の一角にはヘリポートも設けることでさまざまなシチュエーションの救急搬送において迅速に対応できるようにしました。
地域の特性や医療機器配置の方針について教えてください。
地域の特性として、山形県は4疾病(がん、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病)による死亡率が全国平均より高いうえに、置賜地域の平均は県のそれよりも高くなっています。今後は高齢者の慢性疾患が増加することも予想されます。これらの状況を踏まえて、地域の医療体制の拠点になるために公立置賜総合病院では最新鋭で高度かつ幅広い患者の層(疾病・年齢)に対応できる医療機器を配備しています。
病院DATA
置賜広域病院企業団 公立置賜総合病院
サテライト医療施設2病院、2診療所との地域連携を実施している。山形大学医学部と協力し研修医の育成にも力を入れながら基幹病院として幅広く患者受け入れられている。
- 設立
2000年11月1日
- 病床数
496床(一般426、精神46、救急救命センター20、第二種感染症病床4)
- 診療科目
24科目
- 施設認定(一例)
救命救急センター、地域がん診療連携拠点病院、災害拠点病院
第二種感染症指定医療機関、へき地医療拠点病院、ほか- 学会等施設認定
マンモグラフィ健診施設画像認定施設、日本乳がん検診精度管理中央委員会
- 放射線部人員
25名(診療放射線技師23名、事務員2名)
- 保有装置
一般撮影装置3台、X線TV装置2台、乳房撮影装置1台、歯科用パノラマ1台、骨密度測定装置1台、CT撮影装置2台、MRI装置2台、血管撮影装置(心血管・頭腹部血管)2台、ポータブル撮影装置7台、核医学検査装置1台、放射線治療装置1台
X線TV装置更新の経緯
X線TV装置更新の経緯と選定時のポイントを教えてください。
当院は2000年11月に開院して以来、機器更新を計画的に行っています。TV室1番にオーバーチューブタイプ、TV室2番にはCアームタイプを配備して用途に応じて使い分けています。今回の更新対象は「TV室1番」でCUREVISTA*1 Openは開院以来3台目にあたります(直接変換FPDを搭載した他社製X線TV装置からの更新)。装置を更新するにあたって最も重要視したのは、「患者にとって負担が少なく安全性が確保された上で、高い性能(高画質と被ばく低減)を発揮できること」でした。診療放射線技師として、最新技術や快適な操作性は、当然気になります。ただ、それ以上に「被ばく線量の管理」の優先順位を上げました。その理由は、当院のX線TV装置は被ばく線量の管理や線量表示に対応していなかったためです。
CUREVISTA Openを候補として選ばれたポイントを教えてください。
ポイントは3つあります。
1つ目は、「安全性」です。以前から「CUREVISTAシリーズの天板は固定されている」ということを県内の他施設より聞いていました。透視下の処置が多いTV室1番では絶対的な安心感を得られると期待していました。また、手技用のスポットライトについても「今までなかった欲しい機能」で大変魅力を感じました。
2つ目は、「画質と低被ばくの両立」です。画質を妥協せずに被ばくを極限まで抑えるうえで、CUREVISTA Openの画像処理技術がとても進んでいることを知り、期待が膨らみました。
3つ目は、「線量管理のしやすさ」です。将来、線量管理システムを導入するにあたりDICOM RDSRの出力はもちろんのこと、線量情報を視覚化してDICOM画像で送信できることや汎用のパソコンでも使用可能な表計算ソフトで線量情報を確認・編集できる高い柔軟性を条件にしました。
以上の3点から当院ではCUREVISTA Openを有力な候補としました。
天板が一切動かないという安心感
一番大きな点は、「天板が動かないこと」です。視野を移動するためにX線管と映像系を左右に動かしても天板が一切スライドしないのは画期的です。例えば、PTCDなど穿刺を伴う検査でも天板が動いてしまう心配がなく、術者や医療スタッフが手技に専念できるようになりました。これは、天板の奥側に配置する生体モニターのケーブルや点滴チューブを挟み込む心配をなくしてくれました。そのため視野を横方向に移動させる際に感じていたストレスから解放されました。
そのほかには、従来のX線TV装置に比べて天板の幅とスキャンエリアが広いことが挙げられます。これによって体動のある不穏な患者でも安心して検査できます。尿管ステントを留置するシーンを例にしますと、透視装置向かって右側のテーブル端10cm未満まで透視撮影できるため、術者が無理のない体勢で検査を行えるようになりました。医師からは「以前より手技がしやすくなった」と高い評価をもらっています。
コリメーターに内蔵されたLEDライトは重宝しています。X線TV室で超音波装置を用いて穿刺を行うとき、照明を落とします。従来のカートタイプの診療灯は配置場所や照らす位置によって生じる影に苦慮していました。CUREVISTA Openの手技用スポットライト(SECURELIGHT)は、装置に内蔵されているので場所を取らず、複数の光源で術者の手元をしっかりと照らすことから、医師からの評価は高かったです。
コンソールの操作性に関しても満足しています。新しいGUIでは被検者氏名を簡単に修正できるようになりました。検査中の例としては、尿管ステントを交換する際に医師から過去画像の表示を求められることがありました。このとき参照ディスプレイ右帯のリストからすぐに表示できて、この10年での操作性の進化を体感しております。
さらに、DICOM SC(セカンダリーキャプチャー)にて画像としてDoseレポートが出力できるようになった点も助かっています。透視・撮影の積算線量と積算時間が数値と視覚的なグラフで表示されるのでわかりやすいです。これを機にX線TV装置についても線量管理実施へ舵を切ることができました。
DRLs2020診断透視との比較について
比較検討の経緯や苦労した点について教えてください。
当院のX線TV装置で線量情報を出力できるようになったのは、CUREVISTA Openが初めてでしたので、早速比較検討を開始しました。Doseレポートは線量を管理するうえで重宝しています。具体的には、PACSに送信されたDoseレポート画像から今回ターゲットとする検査の基準空気カーマ、面積空気カーマ積算値、透視時間を抽出し、標準体型のデータを表計算ソフトに集め、当院のDRL量を求めました。仮にX線TV装置で同じ検査部位で登録されていても、診療科によって手技内容が異なることや身長・体重の情報をPACSから一つ一つ確認する必要があったことが苦労した点でした。
比較検討の結果や気づきがありましたら教えてください。
当院のDRL量は、DRLs2020診断透視のDRL値と比較して、概ね低い値を示しました。これは、導入直後からの富士フイルムのサービスエンジニアやクリニカルアプリケーションの方々のアフターフォローによる透視撮影条件の最適化や画質調整はもちろんのこと、FPDや画像処理技術の潜在能力が大きいと感じています。特に、近年のソフトウェアの進化には目を見張るものがあります。
一方で一部の検査においては、DRLs2020よりも面積線量値が高値にあることも今回の比較検討で浮き彫りになりました。医師が単独で行う検査では透視時間が長くなる傾向がありました。これを受けて、透視を小まめに切ったり、絞りの入れ方を工夫したりするなどを行い、新しい線量低減の課題と解決方法を見出すことができました。
今後も症例数を増やしながら、医師と線量低減手法について相談し、放射線部が率先して当院全体の被ばく低減の意識を高めてきたいと思います。さらなる線量の最適化のために富士フイルムヘルスケア社と条件の見直しや画像処理について引き続き相談していきたいと思っています。
今後の展望
今回DRLs2020との比較検討を行うことで線量の最適化するにあたって、CUREVISTA Openが大変頼もしいシステムであることがわかり、非常に満足しています。今後、富士フイルムヘルスケア社には線量情報出力の機能・項目をさらに充実していただき、診断透視の線量管理という近い将来生じるであろう業務の負担が軽減されることを期待しています。
- 販売名
デジタルX線透視撮影システム CUREVISTA Open / CUREVISTA Apex
- 医療機器認証番号
302ABBZX00032000