このコンテンツは獣医療従事者向けの内容です。
最近では、フィラリア予防の時期をはじめ、健康診断を実施している病院も多いかと思います。これまで、「健康診断の情報発信の手法あれこれ」、「フィラリア予防時期の健康診断のススメ」というコラムを配信してきましたが、今回は健康診断を実施した後の結果のフィードバックのポイントについてご紹介します。
1.タイムリーなフィードバックを
健康診断のフィードバック(結果報告)の仕方は、郵送、電話、来院してもらい直接説明する、など動物病院によって様々ですが、何より大切なのは異常の有無にかかわらず速やかにフィードバックをすることです。特にフィラリア予防時期は忙しく余裕がない時期ではありますが、飼主さまの健康への意識が高まっている時期でもありますので、その機を逃すことなくタイムリーにフィードバックをしたいところです。外注の検査を活用しているのであれば検査会社発行の検査結果をお返しするだけでも構いませんので、できるだけ速やかにフィードバックをするようにしましょう。
また動物病院業界ではまだ一般的とは言えませんが、電子カルテや顧客管理ソフトで検査結果を管理し、アプリを介して飼主さまにフィードバックするといったことも徐々に普及していくのではないかと考えています。
2.わかりやすいフィードバックを
次に重要なのが獣医療の専門家ではない飼主さまにとって、わかりやすいフィードバックを行うことです。外注の検査会社が発行する検査結果などは検査項目に関する解説がついていることが多いですが、院内検査の場合も飼主さまにとってわかりやすいフィードバックを心がけましょう。
各検査項目の数値の解説を記載するほか、下記の例のように獣医師からのコメントを選択肢形式で記載するのもわかりやすいフィードバックのための手法のひとつです。
また意外と重要なのは、「異常がなかった飼主さま」へのフィードバックです。
例えば、「異常があった方には電話をするが、異常がなければこちらからは連絡はせずに次に来院されたときに結果をお渡しする」という方法だと、異常がなかった飼主さまは健康診断を受けた価値をあまり実感することができません。異常がなかった飼主さまにも、例えば前年の数値と比較して数値の推移を一緒に見たり、「正常時の数値を蓄積することが、異常の早期発見に役立つ」という啓蒙を行うなどして、健康診断を「受けておいてよかった」「定期的に受けよう」と思っていただけるようなフィードバックを行いましょう。
3.次につながるフィードバックを
人間の我々も、健康診断や人間ドックの前後では、いつも以上に健康への意識が高まるものですよね。動物の飼主さまにとってもそれは同じで、健康診断を受けた後は動物の健康に対する意識や意欲がより高まり、獣医師のアドバイスにも耳を傾けやすくなります。だからこそ、健康診断後のフィードバックは、その後の健康につながるような啓発やお勧めをお伝えするチャンスでもあるのです。
例えば以下の例のように、健康診断の結果のフィードバックに合わせて、追加で受けていただきたいお勧めの検査のお知らせや割引価格での実施を案内するケースがあります。言わずもがなですが、いたずらに検査を勧めるのではなく、必要な検査、受けていただきたい検査をお勧めすることが大切です。
また検査会社と協力するなどして、以下のように自院の健康診断の結果を分析した資料を飼主さまにフィードバックするケースもあります。この情報は次回以降の健康診断の啓蒙に活用することもできます。
【2024年4月/文責:動物病院経営パートナーEn-Jin 代表取締役 古屋敷 純】