千葉県香取郡東庄町で養豚業を営み、主にブランド豚『東の匠SPF豚(ひがしのたくみSPFぶた)』を生産・出荷している愛東ファーム。
ポータブルの動物用超音波画像診断装置「iViz air V」を妊娠鑑定に使用した感想や画質の印象、使用感などについてお話をうかがった。
高安 恵子 氏
五島 可祥 氏
高安氏 当ファームは、繁殖から肥育まで一貫して行う一貫経営の養豚農場で、母豚数は約300頭です。農場の運営においては、健康なブタを育てることと、従業員全員が意見を出しやすく、働きやすい職場にすることを大切にしています。
五島氏 豚の発育が遅い、肉の品質が落ちてしまった、生まれる子豚の数が少ないなど、農場で日々発生するトラブルや悩みごとに対して獣医学的な観点からサポートをしたり、農場の方々と一緒に考えながら、農場の経営成績の向上を目指すというのが一般的な役割になります。
五島氏 愛東ファームの皆さんは、時代に合った豚肉の美味しさを追求しているだけでなく、豚への愛情がとても深いんですよね。養豚業の持続性を考えた時、アニマルウェルフェア*と生産性を両立させていくには、豚への愛が不可欠だと思っていますので、そうした観点からも愛東ファームは理想的な農場だと感じています。
五島氏 一般的には、母豚の妊娠鑑定に用いられています。
五島氏 豚の妊娠サイクルは、平均して21日に1回の発情のタイミングで種付けを行い、受胎すれば約114日後に分娩し、その後21~25日間の授乳期を経て、再び発情・種付けという流れになります。そのため、もし種付け後21日以内に不受胎が確定できなければ、さらに次の発情(最初の種付けから42日後)まで待つ必要があり、生産性が落ちるだけでなく、余計な経費もかかってしまいます。したがって、養豚農家にとっては早期に妊娠鑑定を行うことが非常に重要になります。
高安氏 当ファームでは、月に60~70頭に種付けをすると3~4頭は不受胎になります。授精後20日前後で不受胎だと分かれば、時間的にもコスト的にも大幅にロスが削減できるので、早期の妊娠鑑定はとても大切だと感じています。
高安氏 養豚業界では20年以上前から妊娠鑑定にエコーが使われていますが、画像が不鮮明なエコーでは、授精後21日目に行うエコーチェックで受胎、不受胎を確定するのは困難でした。また、エコーの大きさや重さなどの携帯性についても課題があり、エコーチェックの作業負担が大きいことに加え、取り回しの問題から母豚が入っているストール柵とエコーがぶつかってしまうこともよくありました。
五島氏 画像が鮮明で、多くの情報量が得られると感じました。そして、妊娠鑑定については、授精後19~20日で受胎、不受胎を確定できる確率が高まると思いますし、実際にiViz air Vを用いて鑑定した記録でも21日目の結果と28日目の結果はほぼ整合していました。
高安氏 iViz air Vの画質はとてもなめらかで、妊娠鑑定については21日目でほぼ確定できるという感触があります。
五島氏 エコーの高画質化は、妊娠鑑定以外にもさまざまなメリットがあります。例えば、鮮明な画像をもとにより正確な判断ができるので、業務を引き継ぐ際のトラブル防止につながります。また、エコーに慣れていない人でも解剖学的なイメージを持ちやすくなるという教育面でのメリットもあると思います。
高安氏 スマートフォンベースなので直感的に操作できると思いました。当ファームではフィリピンから来ている技能実習生がエコーを使うことが多いのですが、一度操作を教えたら、すぐに使えるようになっていましたね。
高安氏 まず、プローブと本体を簡単にビニール袋に入れられるので、防疫対策の手間が大幅に軽減しました。また、一人がプローブを操作して、もう一人が豚の頭側で台帳と画面を確認するという使い方もでき、状況に応じて作業負担を分散させられるところも良いと思いました。
高安氏 iViz air Vはとてもコンパクトなので、エコーが柵や柱とぶつかるようなことはなくなりましたし、豚が急に動いた時も避けやすく、作業がしやすいと感じています。また、本体が軽く、片手でも簡単に動かせるので、さまざまなシチュエーションに対応できます。
五島氏 日差しが当たりやすい場所だと、日光の反射でエコーの画面が見えづらいこともありますが、iViz air Vは簡単に画面の角度が調整できるので、日差しが強くても問題なく作業ができます。こういうところは、スマートフォンベースの装置ならではのメリットかもしれないですね。
高安氏 当ファームでは、週に1~2回、1回あたり長くて1時間程度、エコーを使用していますが、iViz air Vはバッテリーの持ちが良く、当ファームの規模なら、充電し忘れてから1週間後でもバッテリー残量が70%程度はありますし、3週間程度は使い続けられるので助かっています。
高安氏 簡単に静止画や動画が保存できるので、今後は画像を見ながらミーティングをしたり、教育用の画像集を作ったりして、有効活用していきたいですね。
また、緊急の際は五島先生に画像を送って、遠隔で画像を確認してもらうことも検討していきたいと思っています。
五島氏 遠隔で画像が確認できれば、どこにいても迅速にアドバイスができますし、防疫対策上のメリットも大きいと思います。
高安氏 富士フイルムさんが養豚業界でも役立つエコーを発売したことは、率直にうれしく思っています。今後も、養豚農家のニーズに合わせた高性能で使いやすい機器を開発して、養豚の生産性向上はもちろん、誰もが働きやすい環境づくりにも貢献していただければと期待しています。