このコンテンツは医療従事者向けの内容です。
がん化学療法看護認定看護師
神納 美保 氏(左)
副院長・統括看護部長
眞野 惠子 氏(右)
国内最多の病床数(1376床)を有し、看護においても先進的な取り組みを数多く推進している藤田医科大学病院。外来薬物療法センターにおける末梢静脈カテーテル留置(PIVC)にエコーを導入した経緯や、ワイヤレス超音波画像診断装置「iViz air」の使用感、看護エコーの展望などについてお話をうかがった。
眞野氏 当院は日本最多の病床数を有する大学病院であるため、看護師数も非常に多く、約1,600名の看護師が在籍しています。そして、本院と3つの分院においては、共通の看護方針である「人に優しく、患者さん中心の看護を実践します」のもとで、常に相手を理解する、共感するといった人としての感性を大切にした看護を実践するとともに、各拠点の機能を向上するための人事交流を行っています。
眞野氏 当院の看護部では、2014年から脳外科病棟における残尿測定でエコーを使用し始めました。その後、診療看護師が嚥下や肺うっ血、脱水などの評価にエコーを使用するようになりましたが、一般のナースへの普及はなかなか進まない状況でした。
眞野氏 エコーをPIVCに活用する研究を行っていた本学社会実装看護創成研究センターの村山陵子先生からのアドバイスがきっかけです。その中で、これからの看護では、エコーを用いてより安心・安全な看護を実践していく必要があるという考えに共感し、第一段階として外来薬物療法センターへの導入を検討しました。そして、病院長や外来薬物療法センター長など、多くの方々のご理解・ご協力をいただき、外来薬物療法センターの看護師が使用する装置として3台のワイヤレスエコー(iViz air)を導入しました。
神納氏 当センターの病床数は60床で、現在は10名の看護師が在籍しています。2023年度の利用件数は22,077件でした。抗がん剤治療時の血管確保は2007年から看護師が実施しており、血管外漏出の発生率は0.1%未満を継続しています。
神納氏 私自身がエコーを使用した経験がなく、エコーは医師や臨床検査技師しか使えないもので、読影が難しいというイメージがありました。そのため、導入が決まった時は、研修を通してしっかりと技術を身につけなければいけないと思いました。
神納氏 当院のがん分野の認定看護師と外来薬物療法センターの看護師を中心とした15名でエコーの研修を受ける中で、お互いに質問し合ったり、成功や失敗を共有し合ったりと、皆でまとまって研修を受けられたことは本当に良かったと思います。その一方で、実際にエコーを使って血管確保を行う患者さんは、血管が細かったり、皮膚が乾燥していたりするので、スタッフ同士での練習だけでは足りないとも感じていました。
神納氏 振り返ると、導入当初の段階から、必ずエコーを用いて血管選択を行う運用にしたのは適切ではなかったように思っています。そうしたことで、2人がかりで血管確保を行う、もしくは、不慣れな中でも左手でエコーを当てながら穿刺を行うことが必要になりました。また、エコーに不慣れな状態でエコー下穿刺を行うと、ブラインドよりも時間がかかり、患者さんをお待たせしてしまうこともありました。こうしたことから、思うようにエコーの活用が進まない状況が生まれてしまいました。しかし、その後、抗がん剤に点滴交換を行う前のカテーテルの確認でエコーを使用する運用に変更し、そこで慣れてから血管選択にも使用するようにしたことでエコーの活用が広がっていきました。
神納氏 カテーテルの確認でエコーを使用すると、自分の行った血管確保が正しかったと確認できるので、安心できるだけでなく、モチベーションも向上します。また、患者さんと一緒にエコーの画面を見ることで、患者さんの治療に対する理解・共感や治療意欲の向上につながっていると感じています。
眞野氏 カテーテルの確認を行った際のエコー画像は、全例で保存しています。これは患者さんの安心・安全のためですが、同時に看護師を守るためでもあります。薬物療法時の血管外漏出は、カテーテル留置が原因になる場合もあります。そうした中で、適切にカテーテルを留置したという証拠が残せることは、看護師たちを守る責務を負う管理者として安心感があります。
神納氏 画質が良いので血管等が確認しやすく、操作もスムーズに行えると感じています。また、ワイヤレスであることも使いやすさにつながっていると思います。
神納氏 看護師がいつでもタイムリーにエコーを使用して、より安心・安全に血管確保が行える環境が理想です。現在は、3台のエコーを外来薬物療法センターの看護師10名で使用しているため、エコーがタイムリーに使用できない状況も生まれていますが、今後はエコー下穿刺を専門で担当する看護師を決めるなど、より柔軟な対応も検討していきたいと思っています。
眞野氏 エコーを使用することは看護師側にとっての安心感につながるだけでなく、患者さんと画像を共有することで患者さん自身の治療への納得感や治療意欲の向上につながっていると感じています。外来薬物療法センターの最大キャパシティである60床を稼働させると同時に、看護師が1人1台エコーを持つ環境の整備を目指していくことで、エコーがもたらす患者参画型の治療をさらに推進していきたいと考えています。
また、薬物治療時の血管確保について、全国では医師が行っている施設も少なくないと聞いています。そこで、外来薬物療法センターにおいて、看護師によるエコー下PIVCの安全性等に関するエビデンスを蓄積し、それを広くお伝えしていくことで、医師のタスクシフト・シェアの推進にも貢献できるのではないかと思っています。
眞野氏 今回の外来薬物療法センターでの取り組みを通じて、エコーの活用も含めて可視化できるものは可視化して看護を行う方が、患者さんにとっても看護師にとってもより安心・安全だと実感しました。そして、看護エコーの展望として、エコーは看護師の第六感になり得るものであり、エコーの普及が看護の未来を創ることにつながっていくと考えています。
- 販売名
FWUシリーズ
- 認証番号
301ABBZX00003000