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国際医療福祉大学成田病院 緩和医療科 部長
国際医療福祉大学医学部・大学院 准教授
結束 貴臣 先生
便秘症診断にワイヤレス超音波画像診断装置「iViz air」を活用し、精度の高い診療を行うとともに、エビデンスの集積にも注力している国際医療福祉大学成田病院の結束貴臣氏。緩和医療領域における便秘症診療の課題や便秘症診断にエコーを活用する意義、「iViz air」の使用感などについてお話をうかがった。
国際医療福祉大学成田病院 緩和医療科の特長は。
当科は、多職種(医師・看護師・薬剤師・理学療法士・作業療法士・栄養士・医療ソーシャルワーカー、事務スタッフ)からなる緩和ケアチーム、緩和ケア外来、緩和ケア病床、緊急緩和ケア病床という4つの機能を持つことを特長としています。
診療において大切にしていることは。
従来の緩和医療においてはエビデンスが少なかったこともあり、担当する医師の裁量が大きかった部分があります。しかし、“緩和ケアチーム”として適切かつ効率的な医療を提供していく上では、チームの全員が同じ思考を持つことが重要だという考えのもとで、エビデンスに準拠した戦略の立案や客観的なデータの共有などを重視しています。
診療・研究で注力しているテーマは。
患者さんが特にお困りであったり、ほかの医師があまり診たがらないような症状・疾患、具体的には便秘や難病の慢性偽性腸閉塞などの診療に力を入れています。便秘については、元々専門としていた消化器内科において一般的な便秘の診療を行っていましたが、緩和医療領域ではオピオイド誘発性便秘症などの特有の便秘があります。そこで、そうした便秘症の診療を積極的に行うとともに、消化器内科の専門医・指導医や超音波専門医の知見を活かしたエビデンス作りにも注力しています。
緩和医療領域における便秘症診断の重要性は。
便秘があると生存率が低下し、心疾患、腎疾患、静脈血栓症などにもつながるというデータがあります。また、便秘がある人は、医療費による経済的な負担が大きくなる、入院回数が多くなる、QOLが低下するという報告もあります。その中で、特に緩和医療領域においては、運動ができなかったり、食事量が少ない患者が多く、便秘になりやすい傾向があります。加えて、がん疼痛に用いられるオピオイド鎮痛薬は眠気、吐き気、便秘という三大副作用がありますが、眠気、吐き気は耐性ができるのに対して便秘には耐性ができず、緩和ケアを受けているがん患者の32~97%が便秘を合併するとされています。また、オピオイド鎮痛薬を使用している患者の3分の1が、便秘によってオピオイド鎮痛薬の使用を中止せざるを得なくなっています。したがって、緩和医療領域においては便秘症を適切に診断し、治療する重要性・必要性が特に高いと考えています。
緩和医療領域の便秘症診断でエコーを活用する意義は。
若い方の一般的な便秘症の診断であれば問診ができますが、緩和医療領域の患者さんは状態が悪い方が多く、意思疎通ができない方も少なからずいらっしゃいます。そのため、エコーを用いて客観的に便秘を診断する意義が大きいと考えています。また、それぞれの患者さんにとって最適な治療戦略を立てる上でもエコーが果たす役割は大きいと感じています。
エコーを用いた便秘症診断のポイントは。
便秘エコーの最大の利点は、直腸に便があるかないかが分かることです。便秘を訴えられている患者さんの直腸をエコーで見て、便があれば摘便や浣腸、座薬による“下からの治療”を行います。一方で、直腸に便がなければ緩下剤による“上からの治療”を行います。便秘症は緩下剤を5~6剤飲んでも効かない状態まで悪化して、手の施しようがなくなってしまうケースもあるので、できるだけ早い段階で便秘エコーを実施し、客観的なデータのもとで適切な治療を行うことが重要だと考えています。
直腸観察ガイドPlus
iViz airの使用用途は。
3年ほど前から使用を始めて、現在はiViz airのコンベックスとリニアの2台ですべての症例に対応しています。使用用途としては、コンベックスは便秘症の診断、腹水穿刺のガイドなどで、リニアは筋筋膜性疼痛の診断と注射のガイド、深部静脈血栓症の診断、緩和救急での橈骨動脈ライン確保のガイド、難治性疼痛に対する硬膜外麻酔のガイドなどです。なお、我々の緩和ケアチームでは、主に看護師がiViz airを用いて便秘エコーを行っています。
iViz airの使用感は。
画質が良く、本体とプローブの接続が早いので重宝しています。また、従来のポケットエコーは画像の表示にラグが生じることもありましたが、iViz airはリアルタイムの画像が表示されると感じています。さらに、コンパクトなので常に持ち歩くことができ、バッテリーの持ちやワイヤレスによる取り回しの良さと相まって、エコー検査の自由度が高まったと実感しています。
AI技術を活用して開発した「直腸観察ガイドPlus」については。
私自身は便秘エコーに慣れているので時折使用する程度ですが、便秘エコーに慣れていない医師や看護師などにはとても良いアシストになると思います。実際に、当院の緩和ケアチームの看護師は当初はあまり便秘エコーに積極的ではなかったのですが、「直腸観察ガイドPlus」を見て「私でもできそう」と取り組みを始めました。その後、約半年にわたって「直腸観察ガイドPlus」を活用して便秘エコーを行い、現在では自ら積極的にエコーから適切なケアへとつなげています。やはり看護師は患者さんにとって最も身近な存在として、心身の苦痛や悩みを解消したいという思いが非常に強いので、自らエコーを行って便秘の解消につなげられることに大きな達成感やモチベーションを感じているのだと思います。
緩和医療領域における便秘症診療の展望は。
エコーに限らず客観的なデータによって便秘を可視化し、どのような便秘かという分類をもとに治療戦略を立てるのが当たり前の時代になっていくと思います。そして、最終的にはすべての医療施設、医療従事者が便秘のリスクはもちろん、一定の治療戦略を共有し、着実に実践していくことが重要だと考えています。
今後、富士フイルムに期待することは。
富士フイルムといえば“画質”のイメージなので、エコーの画質を追求するとともに、AI技術を活用した支援機能についても最先端を進み続けていただければと期待しています。
- 販売名
FWUシリーズ
- 認証番号
301ABBZX00003000