このコンテンツは医療従事者向けの内容です。
よどきり医療と介護のまちづくり株式会社
よどきり訪問看護ステーション
訪問看護認定看護師 新関 こずえ 氏
訪問看護を利用されるのは、基礎疾患を抱えた高齢の方が中心で、その多くが排泄に悩みを抱えているという現状があります。その中で求められる“排泄ケア”において、従来は問診と視触診、聴診によって腹部症状や膀胱・直腸の状態、便の性状等を確認していましたが、経験豊富な看護師であっても問診・視触診・聴診だけでは判断に迷うケースがありました。そこで、当ステーションでは、排泄ケアでの使用を目的としてポータブルエコーを導入し、日々の訪問看護に活用しています。
ポータブルエコーの導入後は、おひとりおひとりの状態に合わせた、より適切で、無駄のないケアをよりすばやく提供することが可能になったと実感しています。また、コンパクトなワイヤレスエコーは、ケアを行う場所や利用者さまの状態がさまざまな訪問看護の現場において非常に有用であり、利用者さまとのコミュニケーションツールとしても大いに役立っています。
当社は、小児特化型訪問看護ステーションを含む4つの訪問看護ステーションを運営しており、約40名の看護師が勤務しています。そのうち、私が在籍するよどきり訪問看護ステーションは、約25名の看護師が在籍する大規模ステーションで、大阪市東淀川区・淀川区を訪問エリアとして、高齢の方々を中心に、おひとりおひとりの立場に立った看護を行い、予防的支援から看取りまでを支えています。
訪問看護においては、多くのケースで排便や排尿の援助を行う“排泄ケア”が必要になりますが、特に認知機能の低下した方については「いつ出たのか」が問診では分からない場合もあり、お腹を見てもはっきりした結論が出せないという悩みがありました。また、便秘症という診断がついていない方でも排便に悩みを抱えているケースが少なからずあります。さらに、他の看護師から利用者さんの排便や排尿に関する状況について相談を受けても、言葉での説明だけでは詳細が分からず、情報共有という点でも課題を感じていました。
そうした中、無侵襲で迅速に直腸や膀胱を可視化できるエコーに魅力を感じ、2019年に開催された大阪府看護協会の研修会に参加して排泄ケアに関するエコーの技術を学びました。2020年6月にコンベックスプローブのポータブルエコー1台を社内に導入してもらい、使用を開始しました。
そして現在は、私が常にポータブルエコーを携帯して、必要に応じて使用しており、1日平均5~6件の訪問先のうち1~3件で排泄に関するエコーを実施しています。
エコーを導入する前の排泄ケアでは、排便に関して問診・視触診で便秘を疑った場合は直腸指診を行い、便が降りてきているかを確認していました。そして、排尿については視触診で下腹部の膨満を確認し、尿量は医師の指示を得た場合にカテーテルで導尿していました。
これらのうち、尿については下腹部の膨満である程度分かるため、カテーテルを入れても尿が出なかったという経験はありませんが、便については直腸指診をしても便を確認できないということもありました。
ポータブルエコーの導入後は、直腸や膀胱を可視化して確認できるため、必要のない直腸指診や導尿を避けられるようになっただけでなく、おひとりおひとりの状態に合わせたケアが自信を持ってできるようになったと実感しています。
以下で、ポータブルエコーを活用した具体例をいくつか紹介します。
膀胱カテーテルが留置されていて、閉塞もしやすい利用者さまについて、ご家族から「尿の流出が減っていて、カテーテルが閉塞したようなので、交換してほしい」と連絡があり、緊急訪問しました。
そこで、エコーを当ててみたところ、尿自体が作られていなかったため、カテーテルは交換せずにしばらく様子を見て、無事に尿の流出を確認できました。
このケースでは、エコーを用いることで迅速にアセスメントできたと思います。もしエコーがなければ、やはりカテーテルを交換していたと思いますので、不必要かつ侵襲性の高い医療処置をせずに済ませることができました。また、心配されているご家族の方に対して、エコー画像を見せて説明することで、ケアの選択に対する納得感や安心感を高められたのではないかと感じています。
尿量が減って、血尿が出たという方について、私がポータブルエコーを持っていることをご存じのかかりつけ医療機関の医師からの依頼で訪問しました。そして、エコーで膀胱を見ると、カテーテルが膀胱内に入っておらず、抜けかけている状態でした。そこで、すぐに医師に連絡をして、その場でカテーテルの再挿入と抗生剤治療を開始できました。
カテーテルを挿入している方は緊急性を伴うことが多いのですが、ポータブルエコーを導入したことで迅速にトラブルが確認でき、主治医の先生にも正確な情報を伝えられるので、ケアや治療の精度が向上したと感じています。
肝硬変で糖尿病の利用者さまで、毎日、自分で血圧等を測ってセルフケアノートまできちんと書ける方のケースです。この方は「便は毎日すっきり出ている」とおっしゃっていて、下剤も飲まれていたので、排便に問題はないと思いながら、念のため腹部の触診もしていました。しかし、かなり体格が良い利用者さまでしたので、触診だけでは便の有無が分かりづらい状況でした。
ポータブルエコーを導入後、この方の腹部の状態を確認してみると、直腸に便が貯留していて便秘であることが分かりました。そこで、すぐにかかりつけ医療機関の外来看護師を通じて主治医との連携を図り、新たな下剤の処方などの治療の選択につなげることができました。
訪問看護では、入院時のように実際に便を確認することが難しいため、排便の確認は問診と腹部の視触診が基本になります。その中で、この方のようにしっかりと自己管理ができている方から「便は毎日すっきり出ている」と言われると、「きっと出ているのだろう」と思ってしまうケースが多いのではないでしょうか。私自身も、もしエコーがなければ、ご本人の言葉を信じ続けていたと思います。
特に、この方は一人でお住まいで、過去には便秘で肝性脳症を起こして入院歴もありましたので、下剤の調整によって排便のコントロールが適切に行えるようになったことはとても良かったと思います。
心不全の利用者さまで、もともと便秘だったため、「便が出ない」という連絡をいただいて緊急訪問をすることも少なからずあった方のケースです。
ポータブルエコーの導入後、エコーで腹部の状態を確認して、ご本人に画像を見せながら説明したところ、その方は大変満足されて「自分でも見られるなら、自分でエコーを買いたい」とおっしゃられるほどでした。その後、定期的にエコーを行いながら、下剤の飲み方や生活習慣の見直しを行ったことで、緊急訪問の回数が大幅に減りました。
また、その方は「便が出ないから食事量を減らす」というような極端な方向に進みがちだったのですが、エコーを使って便の状態を確認し、便を出すためにはどうすればいいかということを一緒になって考えたことで、生活習慣が改善し、セルフケア力も高まっていったと感じています。
私は日々、一人で5~6件の訪問先を回っているため、ポータブルエコーの軽量性やコンパクトさにはとても助かっています。また、バッテリーの持ちも良く、1日1~3件の使用で充電の頻度は1週間に1回程度です。
訪問看護の利用者さまは、体の状態はもちろん、ご自宅やベッド周りの状態もそれぞれ異なります。そうした中で、コンパクトなワイヤレスエコーは、どのような状況でも対応しやすく、取り回しの良さが大きなメリットになっていると実感しています。特に、利用者さんのベッドは、左右どちらかが壁に付けられていることが多いのですが、ワイヤレスであればどちらの方向からでも無理なくスキャンができるので助かっています。
さらに、エコー習熟にも、トイレ誘導等で利用者さまに画像を見せる際も画質が重要です。加えて、膀胱尿量自動計測機能は、スピーディーに尿量を計測できると感じています。
私は、2019年に大阪府看護協会の研修会に参加するまではエコーを使用した経験がなく、ゼロからのスタートでした。そして、研修を終えた後は、日々の現場でポータブルエコーの実践をしていきましたが、最初の数か月はエコーをすればするほど自信をなくしていき、とても落ち込んだ時期がありました。
その中でも、私がエコーを持って訪問することを楽しみにしている利用者さまがいましたし、私自身も「エコーを使いこなせるようになりたい」という思いを持ち続けていましたので、解剖の知識を学び直したり、難しい症例については研修で担当してくださったエコー指導者の先生にメールで質問したりしながら、とにかくエコーの実践を重ねていき、今では先生に質問をする頻度はかなり減ってきました。
これまでを振り返ると、困ったときにすぐに質問させていただけるエコー指導者がいたことと、とにかく症例を重ねられる環境だったこと、加えて、高画質なワイヤレスエコーを“一人一台”として使えたことで、習熟のスピードが速まったのではないかと感じています。
そして今後は、排泄ケアにおけるエコーのスキルを高めていくのはもちろん、さらに知識や技術を身につけて、経管栄養で胃にカテーテルが入っている方の先端確認などにもエコーを活用していければと考えています。
- 販売名
FWUシリーズ
- 認証番号
301ABBZX00003000